13日までリーグ選抜を率いてみやざきフェニックス・リーグに参戦してきました。僕が監督を務めた試合は3勝4敗1分。相手はNPBでも2軍クラスとはいえ、体力、スピード、パワーの違いを感じました。

 

 こういった機会は選手たちにとって現状を知り、進歩するための貴重な機会です。いくら、こういう場があっても、試合に臨む意識が低ければ伸びません。せっかくのチャンスを得たことを自覚し、貪欲に技術を吸収してほしいと願っています。

 

 対戦したNPBのチームを見ていると、ファームがしっかりしているところは1軍も強いことを感じます。2軍はスキルアップのみならず、プロとしての態度、姿勢を学ぶところ。そうした育成ができているチームは、やはりいい選手が出てくるのでしょう。我々も見習って、指導にあたらなくてはいけないと改めて思いました。

 

 今回のリーグ選抜には、22日のNPBドラフト会議で指名可能性のあるメンバーも含まれていました。その中で香川の大木貴将、徳島の増田大輝鷲谷綾平は、いいアピールをしたのではないでしょうか。今季の盗塁王・大木は盗塁を決め、自慢の俊足をみせました。四国ではバッテリーのレベルが低く、やすやすと盗塁できても、NPBでは完璧なアウトになることを知ったのも今後につながるでしょう。さらに走塁技術を磨いてほしいものです。

 

 増田は得意の守備でセカンドだけでなく、ショートも守れることを示せました。鷲谷は外野の守備範囲の広さをみてもらえたでしょう。守備だけなら、このリーグではナンバーワン。25歳という年齢を考えれば、今回がラストチャンスです。育成指名であっても、何とかNPBへ挑戦させたいと思います。

 

 ピッチャーでは1年目の右腕・吉田嵩の指名に期待しています。彼は長崎海星高で甲子園に出場し、ドラフト候補にもあげられながら、声がかからず、アイランドリーグにやってきました。成績は主に先発で投げて5勝4敗、防御率2.16。決して特筆すべき数字ではありませんが、高卒ルーキーで大きなケガもなく、1年を投げ切ったことは評価できます。米国遠征にも参加し、彼には大きな財産になったはずです。

 

 彼が1年で指名を受ければ、高卒で独立リーグに挑戦し、NPBを目指そうとする選手も増えるでしょう。それはリーグの価値を高めることになります。ぜひ吉田には良いモデルケースになってほしいものです。

 

 ドラフトの結果にもよりますが、今季も多くの選手が入れ替わることが予想されます。トライアウトなどを通じて、たくさん選手を確保しなくてはなりません。必要なのは全ポジション。内野手、外野手は2名ずつ、投手も3、4人は獲得を目指すことになりそうです。

 

 来季2年目となるメンバーが中心のチーム編成が予想される中、楽しみなのがショートの平間隼人です。内野守備は、まだ粗さがあるものの、バッティングは、この1年で成長しました。左対左を苦にしないため、来季はレギュラーとして使える段階まできています。

 

 18歳で今が一番、伸びる時期。フェニックス・リーグに参戦して感じることも多いでしょう。鉄は熱いうちに打て、ではありませんが、もう1年、しっかりやれば、地元出身のショートとして注目される存在になれるかもしれません。

 

 今季、チームとしては前期3位、後期2位とリーグ3連覇を逃すかたちとなりました。優勝に貢献した主力が抜け、代わりの若手が安定した成績を残せなかったことが敗因です。プロは今日は良くても明日がダメといった波が大きいと活躍できません。コンスタントに数字が出せるよう、この秋から心技体を鍛えなくてはいけないと考えています。

 

 まだ来季はどんなチームになるかわかりませんが、若手を育て、前進していくつもりです。今季の応援、本当にありがとうございました。これからも温かい声援をよろしくお願いします。

 

中島輝士(なかしま・てるし)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1962年7月27日、佐賀県出身。柳川高時代はエースとして3年春の甲子園に出場。プリンスホテルに進んで野手に転向する。87年のソウル五輪予選で日本代表に選ばれて活躍。本大会でも好成績を残し、チームの銀メダル獲得に貢献する。89年に日本ハムにドラフト1位で入団。1年目に史上2人目となるルーキーの開幕戦サヨナラ本塁打を放つ。92年はオールスターに出場し、打率.290、13本塁打をマークした。96年に近鉄に移籍後、98年限りで引退。その後は近鉄や日本ハムで打撃コーチ、スカウトを歴任。11年には台湾の統一セブンイレブンでコーチとなり、12年途中からは監督に昇格する。14年は徳島のコーチを務め、15年から監督に就任。


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