29日、SMBC日本シリーズ第5戦が行われ、福岡ソフトバンクが5-0で東京ヤクルトに完封勝ちを収め、球団史上初となる2年連続日本一を達成した。ソフトバンクは、4回表に4番の李大浩が2ランホームランを放ち先制すると、5回表には明石健志の適時打などで、さらに2点を追加した。守っては、先発のジェイソン・スタンリッジが6回4安打無失点と好投する。リードを中継ぎ陣が守り抜くと、最終回はデニス・サファテが三者凡退に抑えてゲームを締めた。

 

◇第5戦

 李、日本シリーズMVP(福岡ソフトバンク4勝1敗、神宮)

福岡ソフトバンク   5 = 000220001

東京ヤクルト     0 = 000000000

勝利投手 スタンリッジ(1勝0敗)

敗戦投手 石川(0勝2敗)

本塁打  (ソ)李2号2ラン

 

 ソフトバンクが日本一に王手をかけて臨んだ第5戦。大事な先発マウンドを任されたのは、2年連続2ケタ勝利を達成したスタンリッジだ。クライマックスシリーズ(CS)では出番がなかったため、約3週間ぶりの先発にもかかわらず、立ち上がりから145キロ以上のストレートでヤクルト打線を力でねじ伏せる。3回裏の2死一、二塁の場面では、山田哲人をスライダーで空振り三振、畠山和洋を遊ゴロに打ち取った。ヤクルトのクリーンアップを封じ、先制点を与えなかった。

 

 ピンチを切り抜けた直後の攻撃で、4番・李の一発が飛び出した。先頭の明石健志が二塁打で出塁すると、1死三塁で打席には第4戦で3安打4打点と打ちまくった李が立つ。外野フライでも1点という場面で、李はヤクルト先発・石川雅規が投じた4球目をすくい上げた。打球は高く舞い上がり、レフトポール上を通過してスタンドに入った。審判は本塁打の判定をしたが、ヤクルト真中満監督が審判にビデオ判定を求めて試合が止まる。ビデオ判定の末、本塁打の判定は覆らなかった。スコアボードに灯った「2」はそのまま認められた。

 

 主砲の一発で流れを引き寄せたソフトバンクは、5回表に再び石川に襲い掛かる。1死二塁からスタンリッジが四球を選ぶと、続く川島慶三がサード川端慎吾のエラーで出塁。塁を埋めると、明石がレフトへヒットを放ち1点を追加した。次の柳田悠岐が打ち取られる間に、三塁走者が生還して追加点をあげる。

 

 4点のリードを受けたスタンリッジは、5、6回を三者凡退に仕留めると、リリーフ陣にバトンを託した。7回は森唯斗、8回はエディソン・バリオスがそれぞれ無失点に抑えて役割を果たす。最終回は守護神・サファテが11球でゲームを締めた。

 

 投打で圧倒的な差をみせつけたソフトバンクは、敵地で2年連続7回目の日本一を決めた。就任1年目でチームを頂点に導いた工藤監督は、レギュラーシーズンとCS同様に胴上げで9回宙に舞った。現役時代に11回の日本一を経験した工藤だが、監督としてはもちろん、今回が初めてである。「本当に幸せ。最高でした」と喜びを口にした。

 

 CSでMVPを獲得したキャプテンで4番の内川聖一が日本シリーズを欠場することとなり、その穴が心配されたが、李をはじめ他の選手たちが一丸となってカバーした。日本一が決まった瞬間、ベンチにはユニホームを着た内川の姿があった。目頭を赤くしながら、仲間が導いてくれた歓喜の瞬間を共に味わった。工藤監督は「内川がいない状況のなか、選手たちが一致団結して1つになってくれた」と選手たちの活躍を称えた。

 

 ソフトバンクは相手のミスは逃さず、チャンスを確実にモノにした。5試合全てで、ヤクルトの先発投手を5回までにマウンドから引きずり下ろしている。一方で5試合に先発したローテーション投手たちは、ほぼ試合をつくった。リリーフ陣は大崩れすることなく、クローザーのサファテも無失点だった。現役時代に優勝請負人の異名をもった工藤監督のもと、ソフトバンクの新たな黄金時代は始まった。

 

(文/安部晴奈)