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(写真:勝利の美酒に酔いしれるのは、どちらのチームか)

 30日、Jリーグはヤマザキナビスコ杯決勝の前日会見を埼玉スタジアム2002で行った。セカンドステージ好調の鹿島アントラーズは3年ぶり9度目、ガンバ大阪は2大会連続4回目のファイナルの舞台に立つ。会見には鹿島の石井正忠監督、MF柴崎岳、G大阪からは長谷川健太監督とMF遠藤保仁が登壇し、意気込みを語った。試合は同スタジアムで31日の13時にキックオフする。

 

 ついにファイナルまで前日と迫ったヤマザキナビスコ杯。勝利を手繰り寄せる鍵は両チームとも司令塔が握っている。

 

 鹿島は柴崎がキーマンだ。ボランチの柴崎はパスと自らのポジショニングでチームの流れをコントロールする。普段はバランスを取って後方に位置しているが、機を見てバイタルエリアへと駆け上がる。シュートやパスなどボールに直接絡むだけでなく、前線をサポートする動きで鹿島の攻撃を活性化させる。

 

 柴崎は「この1週間良い準備ができた。最高のパフォーマンスを出せる」と自身のコンディションに手応えを感じている。勝敗のポイントに「各所のマッチアップ」を挙げ、中でも「ガンバは中盤の構成力が強い。同じポジションで負けたくない」と自らの持ち場に睨みを利かせる構えだ。

 

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(写真:「優勝を経験していない若手に自信をつけさせるためにも、絶対にタイトルが欲しい」と語る柴崎)

 鹿島は石井監督就任後、ファーストステージの不調から一気に盛り返した。セカンドステージでは1位サンフレッチェ広島に勝ち点3差の2位につけている。好調の要因は柴崎からパスを受ける二列目の選手だ。MF遠藤康、MF中村充孝、MFカイオといったアタッカーの仕事ぶりにも目が離せない。現在の鹿島は、左サイドから組み立てて、右サイドハーフが仕留める。その逆もあり得るといった攻撃の型が出来あがりつつあるのだ。ゴールを期待される遠藤康は「まだ、明日なので試合は。リラックスしてやります」と、タイトルを目前にしても過剰な力みはない。

 

 G大阪のマエストロは遠藤保仁だ。彼の長短を織り交ぜた緩急自在のパス捌きからチームは呼吸を始める。苦しい時はシンプルにパワーのあるFWパトリックにボールを預け、自らがフリーになれば、FW宇佐美貴史、MF倉田秋らアタッカー陣を巧みに操り、攻撃を組み立てる。

 

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(写真:「鹿島には経験豊富な選手な選手がたくさんいる。決勝でどう戦うべきか理解しているはず」と警戒する遠藤)

 遠藤保仁は「キーパーの手の届かない所にシュートを打った方が勝つ」とピリッとしていた会見会場の空気を和ませつつ、表情を引き締め「鹿島は経験豊富な選手がたくさんいる。100パーセント以上出さないと勝てない相手」と語った。マエストロはコメントにも緩急をつけ、ピッチ外の空気も巧みに操った。ベテランならではの老獪なテクニックと経験でピッチ内の選手、空間、時間をコントロールし、G大阪に勝利をもたらせる。

 

 Jクラブ最多5度の優勝を誇る鹿島の石井監督は「歴史ある大会の決勝に臨めることが嬉しい。G大阪は素晴らしいチームなので、決勝で対戦できることを楽しみに思っている」と、決勝の舞台を楽しもうという余裕も感じさせた。一方、昨年の王者・G大阪を率いる長谷川監督は「この舞台に帰って来られたことを幸せに思っている。鹿島は伝統のあるチーム。お互いの力を存分に出し合いながら、最後は連覇できるように頑張る」と意気込みを示した。

 

 鹿島が最多優勝回数を6に延ばすのか。それともG大阪の連覇か。ハイレベルな司令塔がいるチーム同士の決勝戦。今季屈指の好ゲームになる事は間違いない。

 

(文・写真/大木雄貴)