31日、2015Jリーグヤマザキナビスコカップ決勝が埼玉スタジアム2002で行われた。鹿島アントラーズがガンバ大阪を3-0で下し、6度目の制覇を果たした。序盤から試合を押し気味に進めていた鹿島は、後半15分と39分にMF小笠原満男のCKから2得点を奪う。終了間際には前掛かりになったG大阪守備陣の裏を突いて、MFカイオがダメ押し点を叩き込んだ。MVPには全得点に絡んだ鹿島の小笠原が選出された。

 

鹿島、攻守でG大阪を圧倒(埼玉)

鹿島アントラーズ 3-0 ガンバ大阪

【得点者】

[鹿島] ファン・ソッコ(60分)、金崎夢生(84分)、カイオ(87分)

 

 試合前からスタジアムの熱気は凄まじかった。ナビスコカップ決勝では11年ぶりとなる5万人を超える観衆が詰めかけた。「勝つのはオレたちだ」と言わんばかりに両チームのサポーターが応援歌を歌い、その声がぶつかり合う。決勝に相応しい雰囲気の中、キックオフの時を迎えた。

 

 序盤から多くの決定機を作り出したのは鹿島だった。口火を切ったのはFW金崎夢生だ。開始早々に金崎はDF西大伍のパスをペナルティーエリア右で受け、MF今野泰幸をかわして左足でシュートを放つ。惜しくもゴール右に外れたが、準決勝第2戦で2ゴールを挙げたアタッカーは好調さを窺わせた。

  

 金崎のシュートで勢いに乗る鹿島は、サイドハーフの遠藤康、中村充孝の効果的な動き出しでチャンスを作る。5分、右サイドに開いていた遠藤康がゴール方向へ斜めに走り出した。G大阪のDF藤春廣輝を振り切ると、中央でボールを持ったMF柴崎岳が鋭いスルーパスを送る。これはカバーをしたDF丹羽大輝に阻まれるが、ゴール目前まで迫った。11分には中村がG大阪ゴールを脅かす。中央の柴崎から左サイドの中村へパス。中村は相手を抜ききらずに右足でファーサイドにシュートを放つもゴール右に外れる。いずれも得点にはならなかったが、鹿島の両サイドハーフが立て続けにチャンスに絡んだ。

 

 鹿島は終始、攻め続けながらも最後の最後でG大阪のDF陣に阻まれてしまい、スコアレスでハーフタイムに入る。石井正忠監督は「前半は全員がやるべきことをしっかりやった。相手ペナルティーエリア内へと積極的に仕掛けよう」とイレブンをピッチに送り出す。一方、G大阪・長谷川健太監督は「戦わないと勝てない。頭の中をクリアにして、自分たちのやるべきことを後半はじめからしよう」と選手たちの背中を押した。

 

 後半に入っても、良い形を作りながら決めきれない。鹿島はセットプレーから活路を見出す。15分、小笠原のCKにDFファン・ソッコがヘッドで合わせて待望の先制点を奪う。FW赤崎秀平、DF山本脩斗の2枚がニアで潰れ、遅れてゴール前に走りこんだファン・ソッコがフリーで合わせた。ゴールネットを揺らし、ついに均衡は破れた。

 

 続く39分も小笠原のCKからだった。プロ17年目、円熟味を増したボランチは、今度はファーサイドにボールを送る。途中出場の長身FW鈴木優磨へ合わせた。鈴木は中へ折り返すと、金崎が頭で押し込んだ。再びセットプレーから得点を奪い、リードを広げた。

 

 こうなると攻めるしかないG大阪。試合巧者の鹿島はそのスキを突く。41分、MF柴崎岳のスルーパスに抜け出したMFカイオがとどめを刺す3点目を蹴りこみ、試合を決めた。

 

 試合終了の笛と共に、選手、サポーター、スタッフが3年ぶりのタイトル獲得に喜びを爆発させた。ナビスコ杯を制した数と同じ6回、石井監督は宙を舞った。

 

 内容、結果両面で鹿島の完勝だった。主将の小笠原は「非常に良い入り方だった。それを最初だけでなく90分やり通せたことが勝因」と試合を総括した。敵将の長谷川監督は試合後に「完敗です」と振り返った。

 

 就任3カ月で不調だった鹿島を好転させた指揮官は「本当に嬉しかったっていうのが正直な気持ち。今日は選手が90分間、足を止めずに戦う姿勢を見せてくれた」と選手を称えた。リーグ戦は2試合を残し、首位・サンフレッチェ広島と勝ち点差は3。17個目のタイトルを手にした常勝軍団は、今季2冠へ突き進む。

 

(文/大木雄貴)