ヤマザキナビスコカップの王者が31日に決まります。埼玉スタジアムでの決勝へとコマを進めたのは、最多5度の優勝を誇る鹿島アントラーズと、昨年の覇者・ガンバ大阪です。ともに明治安田生命J1リーグのセカンドステージで上位につけている強豪同士の対決となりました。

 

 Jクラブ最多の16冠を誇る常勝・鹿島としては、年間ひとつは最低でもタイトルを獲りたいところです。特にこの2年は無冠に終わっています。優勝争いに残っているリーグ戦へ弾みをつけるためにも重要な一戦になるでしょう。

 

 連覇がかかるG大阪は、昨シーズンの3冠チームです。就任3年目の長谷川健太監督の下、チームコンセプトがしっかりしており、非常によくまとまっています。

 

 試合はロースコアで1点を争う展開になると予想します。チャンスを確実にモノにするストライカーの出来不出来はもちろん、1.5列目、2列目の選手がセカンドボールをいかに拾えるかも、カギを握るでしょう。

 

 また両チームともに優れたプレースキッカーを抱え、セットプレーからの得点も期待できます。ゴール前での空中戦にも注目したいと思います。

 

 頼れるベテランの存在

 

 J1リーグも残すところ、あと2節となりました。首位のサンフレッチェ広島が勝ち点34。それを追いかける2位の鹿島が31、3位の横浜F・マリノスと4位のG大阪が28という状況です。

 

 2年ぶりの優勝へとひた走る広島は、攻守のバランスが良いチームです。佐藤寿人、ドウグラスと得点ランク上位に名を連ねるストライカーを擁し、総得点はリーグトップ。抜群の攻撃力を持つ一方で、総失点はリーグ2位タイと守備の安定も光っています。

 

 キープレーヤーは、やはりエースの佐藤です。彼にチームは牽引されていると言っても過言ではないでしょう。彼の諦めない姿、献身的なプレーにチームは活性化されています。点取り屋としても優れており、絶対的な存在です。

 

 広島は11月7日の第16節でG大阪と対戦します。G大阪はここで負けると優勝の可能性が完全に消えるため、これがひとつのヤマ場となることは間違いありません。非常に楽しみな試合ですね。

 

 2位の鹿島は24日の第15節で湘南ベルマーレに1-2で痛い星を落としました。石井正忠監督就任後、上昇気流に乗っていたましたが、ここにきて天皇杯3回戦でもJ2の水戸ホーリーホックに敗れています。これはJの各クラブに研究されてきた証拠でしょう。しかし、僕は何も変えない方がいいと考えます。

 

 大きなテコ入れを図らなくても、選手自身が修正してくれるはずです。むしろメンバーをいじることでチームが崩れるリスクの方が大きい。石井監督には今のメンバーで戦い抜く覚悟があるか否かを問われることになるでしょう。

 

 鹿島のキープレーヤーもベテランを挙げます。小笠原満男です。彼のリーダーシップは、優勝まであとがない状況に来て、なおさら重要になってくる。負けが許されない中で、小笠原の冷静なプレーや安定性がチームに落ち着きをもたらします。鹿島にはニューヒーロー賞を獲得した赤崎秀平、先日デビューを果たしたばかりの鈴木優磨と若い力も出てきていますが、ここぞの場面では小笠原のような数々の修羅場を経験してきた男の存在が必要になってくるはずです。

 

 優勝争いに加え、残留争いも佳境を迎えています。既に清水エスパルスとモンテディオ山形のJ2落ちが決定しました。両クラブのこの結果は寂しいですが、来季に向けて歩みを進めなければいけません。今シーズンも残りわずか。どのクラブも悔いのないように戦い抜いてほしいですね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>

 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

 

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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