2015明治安田生命J1リーグセカンドステージが終了し、サンフレッチェ広島が優勝しました。年間総合1位も獲得した広島は、森保一監督体制となって4年目です。昨年と同じコンセプトで戦えたことが強みでしょう。DFラインからボランチの守備面にあまり大きな変化がなく、さらに熟成されていきました。そこにアクセントとしてFW陣の頑張りが加わった完成度の高いチームです。

 

 優勝を決めた最終節ではFWの佐藤寿人がJ1最多得点記録に並ぶ157点目を決めました。佐藤はゴールに対する意識を常に持ち続けていて、絶えずこぼれ球も狙っています。ボールが来ない時には引いて受けたくもなりますが、裏を取ろうとする動き出しをやり通している。ゴール前での勝負強さや嗅覚も素晴らしいです。やはり“得点を多く取れる選手”だなと思います。

 

 リーグ戦の日程が終了して、今季から11年ぶりに復活するチャンピオンシップの出場チームは広島、浦和レッズ、ガンバ大阪に決まりました。初戦となる準決勝は28日の浦和vs.ガンバ(埼玉スタジアム2002)カードです。この試合の勝者が広島とのホーム&アウェー方式の決勝戦を行ないます。

 

 準決勝は、試合開始とともに攻勢をかける浦和に対し、カウンターを繰り出すガンバといった展開になるでしょう。僕の予想ではガンバのカウンターが決まり、前半は1-0。後半に浦和が巻き返してくるのではないかと見ています。接戦になるでしょうから、スコアは浦和の2-1といったところでしょうか。

 

 勝者を迎え撃つ広島ですが、決勝では分があると思います。唯一の懸念材料と言えば、選手のケガでしょう。それほど今の広島の安定感は揺るがないでしょう。ラフプレーが少ない広島に退場者が出るとは考えにくい。そうなると、ケガによるアクシデントさえなければ、広島が優位な気がします。

 

 僕も経験したことがありますが、チャンピオンシップの雰囲気は独特ですね。リーグ戦とは違った“負けられない”という空気はもちろんですが、大事なのはチームの入り方でしょう。先取点を取った方は楽になりますし、もう一方は当然、リスクを負ってでも点を取りに行かないといけない。それが焦りに変わり出すと、絶好のシュートチャンスも、外してしまうことも多々ありますからね。

 

探すべき引いた相手を崩す方法

 

 11月は日本代表の試合もありました。ロシアW杯2次予選のシンガポール戦は3-0で勝利を収め、カンボジア戦では後半に2点をもぎ取って勝ちました。

 

 2戦とも相手を分析して要所を抑えていたものの、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の中で、まだチームが固まっていない感じがしますね。久々に司令塔タイプのMF柏木陽介をダブルボランチの一角で起用するなど、ゲームメイクを誰にやらせるのかを試しています。監督はチームのスタイルを決めかねているように見えます。

 

 戦術としていかに、チームの中で崩す方法を共有できるかが重要ではないでしょうか。そこは個の部分もあると思います。ドリブルで相手守備陣を切り裂くような“ドリブル小僧”や裏をいつも狙っているアタッカーがいても面白いんじゃないかと思うんです。

 

 また2試合を通じて、日本代表の課題である「引いて守ってくる相手にはどうするか」という部分も解決できていないなと感じました。相手が引いてくる時こそ、合図となる縦パスが入った時に2人目、3人目の動きが大切です。縦パスが入った瞬間に、1人が下がってサポートをして、もう1人は斜めに走り出す。少人数でのグループ戦術をパターン化していく必要がありますね。

 

 三角形で構成される配置がサッカーでは不可欠だと僕は考えています。例えばFW、トップ下、サイドハーフの近いポジションで作る小さい三角形があれば、右サイドバック、FW、左サイドハーフで構成する大きな三角形もあります。このトライアングルがいくつもできれば、攻撃のオプションが増える。小さな三角形を素早く作り、ワンタッチプレーを増やせばプレーがスピーディーになります。その中でボールを回しつつ、ワイドに視野を確保して大きな三角形も頭に描けているか。こういった少人数でのグループ戦術が今の日本代表に欠けている部分だと思います。選手間で工夫し、引いて守る相手に対するプレーの幅を広げて欲しいですね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>

 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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