伊予銀行女子ソフトボール部は、1部リーグでの今季の戦いを5勝17敗で終えた。1部残留を決めたとはいえ、順位は昨季と変わらない10位だ。

 

 

「最低でも順位をひとつは上げたかった」

 今季より指揮を執った秋元理紗監督は唇を噛みしめる。

 

 勝負弱さ……大きく負け越した最大の要因を指揮官はそう分析する。

「勝った経験が少ないので、大事な場面で硬くなり、判断が冷静にできなかったですね。ここで抑えてほしいという場面でバッテリーが踏ん張れなかったり、エラーが出たり、チャンスで一本が出なかったり……。それらも含めて、一言で言えば“力不足”でした」

 

 敗戦の中には、上位チームを追い詰めた試合もあった。たとえば、10月11日の3位・豊田自動織機戦。伊予銀行は4回に矢野輝美と加藤文恵のタイムリー、5回に北野まいのソロアーチで3-0とリードを奪う。

 

 しかし、勝利を目前にして、ひとつのミスから流れが変わる。

「レフトへのファールフライを落球してしまったんです。リードしていて冷静にアウトカウントを増やさないといけない場面での痛いエラーでした」

 

 秋元監督が悔やんだ通り、ここから一気に2ランなどで3点を返され、試合を振り出しに戻される。そして、最終回、サヨナラホームランを浴びて無念のサヨナラ負けを喫した。

 

「守備でミスがあると攻撃に力を注げない」

 指揮官は、このオフ、最大の強化ポイントに守りの徹底を挙げる。失策を減らし、最少失点で限られたチャンスを確実にモノにする。それが目指すべきスタイルだ。

 

 そのためには投手力の底上げも重要になる。秋元監督が奮起を促すのは、2年目の右腕・庄司奈々だ。

「エースの木村久美と並ぶ主戦になってほしいと思っています。東京五輪でソフトボールが復活すれば、その頃は一番いい年齢。人間的にも技術的にも成長して、調子の波をなくしてもらいたい」

 コントロール良く、コーナーを突いた粘り強いピッチング。ピッチャー出身の監督は高い次元を要求している。

 

 シーズン中から取り組んできた意識改革も引き続き、実践する。求めているのは「スピード感」だ。

「試合中は瞬時の判断が大切です。テンポが遅いと準備の遅れ、構え遅れにつながってしまう。日頃から素早く行動することを意識させたいと考えています」

 

 1年の戦いを通じて手応えをつかんだ場面もあった。惜敗した豊田自動織機戦では、苦手としていた外国人投手を攻略し、3点を先行した。

「外国人ピッチャー相手だと、気持ちの部分から負けていたところがありました。この試合では三振しても積極的に臨めていたのではないでしょうか。来季につながる戦いはできました」

 

 リーグ戦終了前に開かれた「2015紀の国わかやま国体」では、前年の成績を上回る3位入賞。準決勝では1部リーグ上位の日立で構成された神奈川県代表相手に加藤の3ランで先制する。2点を追う最終回には、主将の山崎あずさの一発で追いつく粘りをみせた。最後はタイブレークの末、力尽きたものの、チーム力が向上していることを示せた。

 

「来年は野手が5名入団予定です。特に外野は熾烈な競争になるでしょう」

 指揮官は来季へのレベルアップを誓う。1年目の對馬弥子と北野まいと新戦力も実戦で経験を積んだ。リーグ戦での上位進出、2年後の「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」での優勝へ前進あるのみだ。

 

 目指すはリーグ戦での2ケタ勝利と1ケタ順位。

私自身も監督として今年得たものを来年に生かさないといけません。成績を残したいと思っています」

 秋元監督の視線は既に2016年へ向いている。

 


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