現地時間10月31日、ラグビーW杯イングランド大会最終日が行われた。決勝はニュージーランド代表(世界ランキング1位)がオーストラリア代表(同2位)を34-17で下し、史上初の2連覇を達成した。試合はニュージーランドがSOダン・カーター(クルセーダーズ)が前半8分にPGを決め、先制に成功。一度は同点に追いつかれたものの、カーターが2本のPGを決めて突き放した。ニュージーランドは終了間際にWTBネヘ・ミルナースカッダー(ハリケーンズ)のトライが生まれるなど16-3で前半を終え、後半開始早々にも1トライを加える。オーストラリアの反撃に遭い2トライ2ゴールで4点差まで詰め寄られたが、終盤にリードを広げる。終わってみればダブルスコアの圧勝だった。

 

 何にも染まらない強さ。黒のジャージが、圧倒的な力を誇示した。オールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)が単独最多の3度目の戴冠。地元開催の前回大会に続き、覇権を守り抜いた。

 

 序盤は史上最多得点を誇るカーターの左足から得点を量産する。8分、27分、36分と決して易しい位置ではなかったが、事もなげにPGを決めてみせた。39分には流れるようなパスワークからFLリッチー・マコウ(クルセイダーズ)のボールを受けたミルナーズカッダーがトライ。カーターは右サイド角度のないところからのコンバージョンも難なく決めた。

 

 後半に入ってもオールブラックスがワラビーズ(オーストラリア代表の愛称)に襲い掛かる。2分、CTBマア・ノヌー(ハリケーンズ)が途中出場のCTBソニー・ビル・ウィリアムズ(チーフス)のパスを受けると、ラインを切り裂く。ウィリアムズが作った相手守備陣のギャップを“ドレッドヘアのブルドーザー”は見逃さず、一気に抜け出した。最後は左に流れてインゴールに飛び込んだ。日本のトップリーグでプレー経験のある2人のコンビネーションでリードを21-3と18点のリードを奪った。

 

 2度の優勝を誇るワラビーズも意地を見せる。敵陣で攻める時間が続くと、12分にオールブラックスFBベン・スミス(ハイランダーズ)がたまらず反則を犯す。足を持ち上げる危険なディフェンスで、レフェリーはイエローカードを提示。シンビン(10分間の一時退場)により、最終ラインの砦を失ったオールブラックスは2トライを奪われるなど、21-17と4点差と迫られた。

 

 ここで崩れないのがオールブラックスがオールブラックスたる所以かもしれない。世界最高の司令塔の呼び声高い背番号10は冷静に状況を見極めていた。30分、中央約40メートルの位置からカーターはすかさずドロップゴールを狙う。左足から放たれた楕円球は導かれるように一直線でゴールへと向かっていった。24-17と1トライ1ゴール差に広げると、PGも加えて突き放した。カーターの正確無比のキックでリードを奪ったオールブラックスは、終盤にもトライを獲ってダメ押した。

 

 1カ月に及ぶラグビー最強を決める大会は幕を閉じた。終わってみれば、長らく世界ランキング1位に君臨するオールブラックスが前回に引き続き頂点に立った。日本は決勝トナーナメントには進めなかったものの、過去最多の3勝を挙げ、確かな足跡をラグビーの母国に残した。4年後は日本開催。貫いたジャパンウェイに磨きをかけて、世界の強豪を迎え撃つ。

 

(文/杉浦泰介)