28日、明治安田生命2015Jリーグチャンピオンシップ準決勝が埼玉スタジアム2002で行われ、ガンバ大阪(年間3位)が浦和レッズ(同2位、1stステージ優勝)を3-1で下した。前半はお互い手堅く入りスコアレスでハーフタイムへ。後半から積極的に出たG大阪がMF今野泰幸のゴールで先制するも、浦和は途中出場のFWズラタンのヘディングで追いついた。延長までもつれた熱戦は、後半13分にDF藤春廣輝が、16分にはFWパトリックが決めたG大阪が制した。決勝へと駒を進めたG大阪は、サンフレッチェ広島(同1位、2ndステージ優勝)と対戦。決勝第1戦は2日にホームで行われる。

 

 守護神・東口、再三の好セーブ(埼玉)

浦和レッズ 1- ガンバ大阪
【得点】
[浦和] ズラタン(72分)
[G大阪] 今野泰幸(47分)、藤春廣輝(118分)、パトリック(120+1分)

 

 主導権を握られながらも勝利を掴んだのはG大阪だった。「良いサッカーはできていた。東口が当たっていた」と浦和のMF柏木陽介が唇を噛んだ。マン・オブ・ザ・マッチに輝いたG大阪の守護神・東口順昭も「押し込まれていて、ほぼ劣勢」と浦和にイニシアチブを取られていたことを認めたように立ち上がりから攻勢をかけていたのは浦和だった。G大阪は耐える展開が続いた。

 

 10分、柏木をMF遠藤保仁が倒して、ペナルティーアーク付近の位置でFKを与えてしまう。左利きには絶好の位置だったが、柏木が蹴ったボールはG大阪の作った壁に阻まれる。

 

 18分にはG大阪がカウンターを仕掛ける。自陣でボールを奪うと素早くFWパトリックへ。パトリックが右サイドを駆け上がるMF大森晃太郎へパスを送る。大森はアウトサイドにかけたミドルシュートを放つも、ゴール左を狙ったボールはポストに嫌われた。

 

 その後は浦和が終始、試合の主導権を握る。FW李忠成にボールが入った時の周囲の選手のサポートが素早く、簡単にゴール前までボールを運んだ。あとはフィニッシュまで持っていけるかの問題だったが、ネットを揺らすことはできなかった。一方、押し込まれる時間が長いG大阪は、カウンターからしか活路を見出せない状態のまま前半を終えた。

 

 守勢に回っていたものの、浦和の攻撃をゼロに抑えたG大阪。ハーフタイムに入り、「後半も焦れずに続けていこう」と長谷川健太監督は我慢強く守り続けることを選手たちに伝えて、ピッチに送り出した。

 

 するとG大阪は後半に入り、前からのチェイシングに力を入れ始める。実を結んだのは2分。自陣でつなごうと試みた浦和だったが、G大阪・大森が高い位置からプレスをかけてボールを奪う。ペナルティエリアにポジションをとっていた今野へラストパス。どフリーだった今野は落ち着いて、右隅を狙いすまして先制ゴールを決めた。

 

 先制した後のG大阪は、手堅く引いて守備を固める。なかなか試合の流れが動かないと見るとミハイロ・ペトロヴィッチ監督が大胆に動く。18分、FWズラタン、MF青木拓矢の2枚同時投入で変化をつける。

 

 すると9分後、采配がズバリ的中する。柏木の右CKにDF森脇良太がヘッドで合わせた。シュートはクロスバーを叩くも、こぼれ球をズラタンが頭で押し込んだ。186センチの長身ストライカーが、監督の起用に応え、浦和が追いついた。

 

 勢いづいた浦和は42分、44分と柏木が高い位置まで上がり、シュートを放った。しかし、いずれも東口の好セーブに阻まれ、90分終了の笛が鳴る。白熱の試合は延長戦へと突入した。

 

 延長戦開始とともに、G大阪はボランチにMF井手口陽介を投入し、遠藤をトップ下において、起点を前に作ろうと試みるが、両チームとも目立った決定機を作れないまま15分が過ぎた。

 

 時計の針も進み、PK戦も頭によぎり始めた13分、G大阪が“ピンチはチャンス”を証明する。自陣でプレスをかけられたDF丹羽大輝がGKに浮き球のバックパスを試みるも、ボールは東口の頭を越え、自軍のゴールに向かっていく。あわやオウンゴールかと思われたが、幸運にもポストに助けられた。

 

 その跳ね返りを東口が拾い味方へつなげる。4本の素早いパスで一気に浦和のゴール前までいくと、右サイドに開いた途中出場のMF米倉恒貴がファーへセンタリングを上げた。これをレフティーの藤春が右足ボレーで合わせて、ゴール右に突き刺した。勝ち越し点を決めた藤春は、この日、27歳になったばかり。自らの誕生日に花を添えたゴールは、チームにとって貴重なゴール。「良いボールをくれたのでシュートを打つだけだった」と、アシストの米倉に感謝した。

 

 あわやオウンゴールの丹羽は「神様がいました」と胸を撫で下ろした。守護神の東口は「思わんところからシュートが飛んできたが、あれが得点につながった。サッカーってわからんなぁ」と決勝点の場面を振り返った。G大阪はその3分後にも、浦和の隙をついた遠藤のリスタートから、パトリックが合わせて勝負を決めた。終始劣勢の展開ながら我慢をし続けたG大阪が勝利した。

 

 決勝へ駒を進めたG大阪。長谷川監督は「広島は非常にバランスの取れたチーム。広島に先制されると辛くなる。広島が前に出てくるようにしたい」と語り「頑張って撃ち合う」と意気込んだ。11年ぶりのチャンピオンシップを制するのは年間1位で2ndステージ覇者のサンフレッチェ広島か、今日の勢いのままG大阪が下剋上を果たすのか。熱き戦いに注目だ。

 

(文/大木雄貴)