151126六人の写真

(写真:12月8日から始まるインカレは大学生活の集大成。有終の美を飾りたい)

 サッカーの名門・明治大学。杉山隆一(元日本代表)、木村和司(元日本代表)、佐々木則夫(なでしこジャパン監督)など錚々たるOBに加え、現役選手にも長友佑都(インテル)、山田大記(カールスルーエ)らを輩出している。今年度の明治大学体育会サッカー部は黄金世代と言われる4年生が中心だ。6月のアミノバイタルカップでは失点ゼロでトーナメントを勝ち抜き優勝を果たした。総理大臣杯、関東大学サッカーのリーグ戦はいずれも準優勝と常に高いパフォーマンスを披露している。その中心メンバー5名が、来季のJリーグ内定を決めた。この人数は関東では最多だ。19日に行われた記者会見でも多くの報道陣が詰めかけた。

 

 明治の黄金世代の旗頭と言えるのが、主将のMF和泉竜司(名古屋グランパスエイト内定)だ。和泉は「明治の3原則である球際、運動量、切り替えという部分はこの4年間で成長できた」と振り返った。来季からはプロの舞台が待っている。これからの目標を「来年のJリーグの開幕戦から出て、活躍できるように、日々成長する」と語った。和泉はドリブル、パス、シュートの全てのレベルが高い。同大の栗田大輔監督も「試合を決めることの出来る選手」と最大級の賛辞を送る。

 

151126和泉と高橋

(写真:大学生活を振り返る和泉<左>と高橋)

 名古屋にはFW川又堅碁や、FW永井謙佑ら身体能力に長けたプレーヤーがいる。今季、名古屋は豊富なタレントを擁しながら前線が今ひとつ噛み合わず、10位に甘んじた。川又、永井を繋げる1.5列目として和泉の活躍が期待される。本年のユニバーシアード代表で関東大学サッカーリーグのベストイレブンとベストヒーロー賞を獲得した明治のエースは、Jの舞台でも旋風を巻き起こしてくれるだろう。

 

 もう一人、名古屋へ内定を決めた選手がいる。左サイドバックの高橋諒だ。国見高校時代は中盤を担っていたが、大学2年生の時に左サイドバックへのコンバートをきっかけにユニバーシアード代表まで上り詰めた。指揮官からは「左利きであり、高いテクニックとスピードのあるオーバーラップ、1対1の強さが特徴」と評される。自身でも「自分の特徴は運動量やドリブル、攻撃参加」と胸を張った。高橋が左サイドからクロスを上げて川又や、今季終盤にFW起用もあった田中マルクス闘莉王が合わせる。そんな形が来季、名古屋で見られるか注目である。

 

 黄金世代の司令塔として、明治の攻撃を操っていたMF差波優人(ベガルタ仙台内定)は、「プロサッカー選手になってからは、小さな子の憧れとしてやっていけたら」と将来を見据える。持ち味は低い位置から長短のパスで攻撃をつくり、フィニッシュにまで関われるところだ。リーグ戦後期の終盤では、得点に繋がるスルーパスやミドルシュートでゴールを奪うなど、攻撃の核として機能していた。栗田監督も「視野の広いプレーでゲームを作ることができる」とゲームメーカーとして太鼓判を押す。また差波は明治ではセットプレーのキッカーを務めている。速く鋭く曲がるボールを蹴れることができる彼の存在はチームにとって最大のアドバンテージとなる。

 

 仙台には司令塔タイプに野沢拓也、梁勇基がいるが2人とも本職は2列目である。生粋のボランチでゲームを動かせる差波のような存在は仙台も欲していた人材だ。仙台の堅守速攻に彼がアクセントを加えられれば、チームとしてのバリエーションが増える。早期からの活躍に期待したい。

 

 守備の要であるDF山越康平(大宮アルディージャ内定)は明治にとって不可欠なプレーヤーだった。今年の4月に膝の手術を受け、リーグ戦前期を欠場し、ユニバーシアード代表も辞退。リーグ戦後期の3試合目から復帰を果たすと、そこから明治は9戦負けなしである。無くてはならない存在だと結果で証明した。自らの長所を聞かれ「ヘディングとビルドアップ時の持ち運び」と答えると、指揮官からも「ビルドアップが非常に得意」と紹介された。ショートパスばかりだと攻撃が停滞してしまうが、最終ラインの位置からサイドハーフや、相手のサイドバックの裏に正確なロングボールでアクセントをつけられる。

 

151126差波山越藤本

(写真:内定先のユニホームに袖を通す差波<左>、山越<中央>、藤本)

 さらに183センチと恵まれた体格を活かし、ゴール前の空中戦も制する。強さ、巧さと2つの武器を持つ日本待望のセンターバックだ。内定先の大宮は、ボールを保持するスタイルだ。チームの特徴と山越の長所が噛み合った実に最高の補強となった。来季、J1に返り咲く大宮の先発メンバーに名を連ねることができるか。もし、春のキャンプでポジションを手にできたら楽しみな存在だ。

 

 フィジカルモンスターの異名を持つFWが明治にいる。ファジアーノ岡山に内定が決まった藤本佳希だ。昨今のFWの中では珍しいタイプ。スピード、パワーを活かした縦への突破は見る者をワクワクさせてくれる。本人を含め、関係者の誰に長所を聞いても「スピード、パワー、推進力」という言葉が出てくる。雄々しくゴールを狙う姿は迫力満点だ。フィジカルだけに頼らず体の使い方や、DFラインとの駆け引きもうまい。高校時代には、元ブラジル代表のFWロナウドのプレーを研究していた。「止まっているのにいきなり100パーセントで走り出して抜け出てしまう。動きの緩急を参考にしている」と言う。その甲斐もあり、藤本は一瞬でラインの背後に抜け出し、シュートまで持っていく型をすでに持っている。

 

 内定先の岡山はカウンター中心の戦術がベースなだけに、藤本の速さ、強さ、推進力が活きる。1トップ2シャドーを採用しているが、3つのポジションのどこに入ってもフィットするだろう。プロへと送り出す栗田監督も「さらに恐ろしいストライカーになるのでは」と期待を寄せる逸材である。藤本の推進力がJ2岡山をJ1昇格へと導くはずだ。

 

 一つの学年から5名もプロに送り込んだ栗田監督はどのようなことに重きを置いて指導をしてきたのだろうか。指揮官は「常に高いレベルを意識させています。自分で判断して、自分で解決できる、自分で責任が取れる。そういったことをいつも言っています」と話す。試合では、明治の選手たちがベンチからの指示に頼らず、自分たちで状況を打開しようと身ぶり手ぶりで話し合っている姿を目にする。プレー中に「どうすべきか」と自分たちで考え、意見を出し合い、行動に移す選手たちの姿からは逞しさを感じる。栗田監督の教えを受けたこの5人が日の丸を背負い、同じピッチで戦っている光景を早く見てみたい。

 

(文・写真/大木雄貴)