10月のNPBドラフト会議では、徳島から増田大輝が巨人育成1位、吉田嵩が中日育成2位で指名を受けました。ただ、他にもスカウトから声がかかっていた選手がいただけに、達成感は70%といったところでしょうか。
 
 増田は内野守備の巧さと足の速さが評価されました。巨人は来季から3軍制を敷き、今回、育成選手を大量指名しました。その中で生き残るためには、プラスアルファが必要です。単に守備がいい、俊足というだけでなく、その長所を一層、極めることが求められるでしょう。たとえば鈴木尚広のような代走のスペシャリストを目指すのもひとつの方法です。巨人に入ったことで満足せず、プロとして生きる道を1日も早く見つけてほしいものです。
 
 吉田は高卒1年目ながら、計画を立ててトレーニングに取り組める選手で、それをシーズン通じて続ける精神面の強さがありました。ピッチャーはマウンドで孤独な存在。ひとりでもブレない心が大切です。プロとしての心構えは充分、持っています。
 
 NPBでの課題は低めへのコントロール。変化球の習得もしなくてはならないでしょう。まだ19歳。恵まれた環境で体をつくって力強さが増せば、楽しみな原石です。将来性を買って指名されたのでしょうから、着実にピッチャーとして一本立ちして、まずは支配下登録を目指してほしいものです。
 
 今回、ドラフトで指名された2選手に、松嶋亮太、鷲谷綾平らが退団し、来季はチームを、ほぼ1からつくり直すことになるでしょう。トライアウトなどを通じて、新人は7選手を指名しました。ドラフト1位の牧口良秀(日本航空高-BBCスカイホークス)は18歳の内野手。ヤクルトの山田哲人のように走攻守がどれも秀れており、サードのポジションを任せてみたいと考えています。
 
 2位のアブドラ・バラ(八潮高-06ブルズ)はパキスタン出身の左腕。投球フォームは元オリックスの星野伸之のような変則スタイルです。球速はありませんが、バッターはタイミングがとりにくく、化ける可能性を秘めています。3位の渡辺紳二(島根・浜田高-広島大)は強肩が武器の外野手です。頭が良く、性格も明るいため、キャッチャーに挑戦させてもおもしろいとみています。上を狙うべく、持ち味を発揮できる方法を模索していきたいです。
 
 4位の原一弦(牛久栄進高-東京学芸大-兵庫ブルーサンダーズ)はサイドスローで制球力があり、計算が立ちそうです。トライアウトリーグを通じて合格を出した佐藤和帆(酒田東高)は両投げ両打ちという珍しいタイプの外野手。本人は右打ちの方が得意なようですが、左で打たせたところ癖のない、いいスイングをしています。192センチ、88キロと体格も立派で、伸びしろに期待をかけました。
 
 11月の初めにはカリフォルニア、フロリダでの海外トライアウトも視察に行ってきました。外国人の良さはパワーとスピード。総合力より、多少、粗削りでも一芸に秀でている選手を獲得したいと思っています。向こうの選手はハングリーで、日本でもプレーしたいという気持ちを強く持っています。いい素材は多かっただけに、球団と相談して何人か補強できればという構想を持っています。
 
 とはいえ、新戦力は実際に入団してみないと、どこまでできるか未知数です。既存のメンバーが成長することが一番の戦力アップにつながります。ピッチャーではドラフト指名漏れした福永春吾、野手では3年目となる小林義弘がリーダーとなってチームを引っ張ってほしいものです。特にセンターラインの強化は急務でしょう。19歳で地元出身の平間隼人が二遊間でレギュラーを獲るくらいの存在になってくれるとありがたいですね。
 
 正直、来季はどんなチームになるのか見当がつきません。それでも限られた選手層で何とかするのが、独立リーグの指導者の醍醐味だととらえています。チーム内で切磋琢磨させ、引き続き、NPB入りできる選手を育てられるよう努力していきます。
 
中島輝士(なかしま・てるし)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1962年7月27日、佐賀県出身。柳川高時代はエースとして3年春の甲子園に出場。プリンスホテルに進んで野手に転向する。87年のソウル五輪予選で日本代表に選ばれて活躍。本大会でも好成績を残し、チームの銀メダル獲得に貢献する。89年に日本ハムにドラフト1位で入団。1年目に史上2人目となるルーキーの開幕戦サヨナラ本塁打を放つ。92年はオールスターに出場し、打率.290、13本塁打をマークした。96年に近鉄に移籍後、98年限りで引退。その後は近鉄や日本ハムで打撃コーチ、スカウトを歴任。11年には台湾の統一セブンイレブンでコーチとなり、12年途中からは監督に昇格する。14年は徳島のコーチを務め、15年から監督に就任。

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