2日、明治安田生命2015Jリーグチャンピオンシップ(CS)決勝第1戦が万博記念競技場で行われ、サンフレッチェ広島(年間1位、2ndステージ優勝)がガンバ大阪(同3位)を3-2で下した。ホーム&アウェー方式の2戦で勝敗を決めるため、前半はお互い慎重に試合を進め、スコアレスで終える。後半15分、広島はミスからFW長沢駿にゴールを奪われ、先制を許した。35分にFWドウグラスが決めて同点にするが、その1分後には、MF今野泰幸に2戦連続のゴールで、1-2とビハインドを負った。劣勢の広島はアディショナルタイムに入ると、DF佐々木翔とMF柏好文が立て続けにゴールを奪い土壇場で大逆転に成功した。CS第1戦は広島に軍配が上がり、第2戦は5日に広島のホームで行われる。

 

 途中出場・柏、2得点に絡む活躍

ガンバ大阪 2-3 サンフレッチェ広島(万博)

【得点】

[G大阪] 長沢駿(60分)、今野泰幸(81分)

[広島] ドウグラス(80分)、佐々木翔(90+1分)、柏好文(90+6分)

 

「我々が勝ったが、どちらが勝ってもおかしくなかった」

 勝利監督の森保一は疲れ切った表情でCS第1戦を振り返った。終わってみれば年間1位の広島が意地を見せた。

 

 立ち上がりは両軍とも様子を見合う展開だった。お互いDFラインで慎重にパスをつなぎ、前線から激しくプレッシャーをかけにいかなかった。

 

 前半17分に広島がチャンスを作る。MFミキッチが右サイドをえぐり、クロスを供給しFW佐藤寿人が頭で合わせるも、ゴール左に外れる。前半の広島のチャンスらしいチャンスはこの1つくらい。24分、広島は自陣ゴール前でMF遠藤保仁、MF大森晃太郎と小気味良く繋がれ、最後はMF宇佐美貴史に強烈なシュートを打たれた。ここは守護神・林卓人がセーブした。

 

 これ以降、両チームとも必要以上にリスクは犯さず、スコアレスで前半は終了。後半開始からG大阪の遠藤が積極的に高い位置を取り、ペナルティエリア内まで侵入する場面が目立つようになる。G大阪がペースを握り始め、流れが悪いと見るや森保監督は12分、早めに動く。エースFW佐藤寿人を代え、FW浅野拓磨をピッチへ送った。短期決戦でのベンチワークも見どころの1つだ。

 

 スコアは15分に動く。自陣でボールを回す広島は、DF佐々木翔のバックパスをMF森崎和幸とDF千葉和彦が譲り合ってしまう。するとこのパスをFW長沢駿にカットされ、そのまま左足でゴールに流し込まれる。今年7月に清水エスパルスから加入した192センチの長身FWは移籍後初先発起用に結果で応えた。

 

 先制された広島はG大阪に引かれてしまい、攻めあぐねていると24分に森保監督は2枚目の交代カードを切る。運動量の落ちたMFミキッチに代えて柏を入れて右サイドの活性化を図る。一方、守ってカウンターの形に持っていきたいG大阪は、32分に長沢をベンチに下げ、推進力のあるFWパトリックを投入する。すると34分に遠藤のゴールから遠い位置でのFKにパトリックが頭で合わせるが、惜しくもクロスバーの上へ。CS準決勝のゴールを思い出させるシーンだった。

 

 その1分後、今度は広島の助っ人が黙っていない。浅野が自慢の快速を飛ばしDFラインの裏を取り、GK東口順昭をかわし、角度のない位置からシュートを放った。しかし、ボールは左ポストを直撃。そのはね返りを柏がダイレクトでシュートを打った。ボールはゴール左へ、枠を逸れていたが、ゴール前にポジションを取っていたドウグラスがヘッドで軌道を修正しネットを揺らす。ドウグラスは06年にプロ生活をスタートさせるも、2桁ゴールを記録したのは13年の12点のみ。今季リーグ戦21得点と覚醒したストライカーが試合を振り出しに戻した。

 

 同点に追いついた広島だったが35分、自陣で与えたFKのこぼれ球を今野に決められてしまう。“守備の人”今野がCS2戦連続弾を決め、勝負強さを見せた。再びリードを奪い、このまま何事もなく試合を終わらせたかったG大阪だったが、41分にDFオ・ジェソクが柏を突き飛ばしレッドカードを掲示される。長谷川監督が「退場が響いた」と言うように、年間1位のチームはこの隙を見逃すはずもなかった。

 

 試合時間は90分を経過、アディショナルタイムは5分と掲示された。まず1分、右サイド深い位置で広島がFKを獲得する。キッカーのMF柴崎晃誠は、直接ゴール前にボールを放り込むことも可能だったが、近くにポジションを取るMF青山敏弘へショートパスを送った。青山はクロスを上げると佐々木がヘッドで合わせて再び同点とする。佐々木は1失点目のパスミスの汚名返上となるゴールを決めた。

 

 広島の勢いは止まらない。アディショナルタイム6分、左からのクロスにドウグラスが合わせるもシュートミス。このこぼれ球を浅野がシュートを放つと、DF丹羽大輝が体を張って防いだ。すると柏の目の前にボールが転がる。柏は勢い良く蹴りこみ、ゴール真ん中に突き刺した。直後に試合終了のホイッスルが鳴る劇的な決勝ゴールだった。

 

 終了後、マン・オブ・ザ・マッチに選出された柏は「次も勝ちます! 絶対勝ちます!」と力強くインタビューに答えた。浅野、柏と途中から出場させた選手が得点に絡み、采配を的中させた森保監督は「先制されたし、2度リードされた中、選手たちは反発力をもってやってくれた」と選手の労をねぎらったが、「半分終わっただけなので」と頭は次の戦いへと切り替えていた。

 

 第2戦は5日にエディオンスタジアム広島で行われる。第1戦を制した広島は引き分けでも栄冠を手にできる。ホームで痛い敗戦を喫したG大阪はアウェーゴールのルールの関係で、次戦は2得点以下の場合は下克上を果たせない。選手の白熱したプレーはもちろん、両監督の采配にも注目したい。

 

(文/大木雄貴)