10日、クラブワールドカップが横浜・日産スタジアムで開幕した。J1王者のサンフレッチェ広島(開催国枠)がオセアニア代表のオークランド・シティーFC(ニュージーランド)を2-0で破った。広島は前半9分、FW皆川佑介が決め、先制に成功した。後半20分までに、交代枠全てを負傷交代で使い切る苦しい展開となった。それでも25分に、DF塩谷司が追加点を奪い、勝負を決定づけた。準々決勝に駒を進めた広島は13日にアフリカ代表のTPマゼンベ(コンゴ)と対戦する。

 

 3年ぶりのクラブW杯、白星発進(横浜)

サンフレッチェ広島 2-0 オークランド・シティーFC

【得点】

[広島] 皆川佑介(9分)、塩谷司(70分)

 

 2012年大会以来のクラブW杯出場で開幕戦を白星で飾った広島だが、この日の空模様と同じ暗雲立ち込める内容となった。

 

 森保一監督は5日前のチャンピオンシップ第2戦からスターティングメンバー6人を入れ替える大胆な策に出た。その中で、天皇杯4回戦以来の1カ月ぶりに先発出場のチャンスを得た皆川が前半9分にいきなり期待に応える。MF野津田岳人が左CKでショートコーナーを選択し、再びボールを受けた。野津田はペナルティエリア外からミドルシュートを放つ。雨の影響でGKがボールをこぼしたところを皆川が押し込んで難なく先制点を奪う。リーグ戦で出番に恵まれていなかったストライカーが結果を出した。

 だが、喜びもつかの間だった。14分、先制ゴールのきっかけを作った野津田が右膝を負傷する。一度はピッチに戻るもプレー続行が不可能となりMF柴崎晃誠と交代する。久々に先発のチャンスを掴んだ野津田の悔しそうな表情が印象的だった。

 1点をリードした広島は無理にボールを追うことなく、しっかりと守備を固める。対するオークランド・シティーはボールの出しどころがなく、DFラインでボールを回すだけで、攻めあぐねた。

 広島は受け身に回るだけでなく、相手をおびき出して素早くカウンターを仕掛ける。25、27、31分と自陣でボールをカットした広島はワントップの皆川へスルーパスを送った。皆川はDFラインをすり抜けて裏を取るも、いずれも惜しくもゴールネットを揺らすことはできなかった。広島が試合巧者ぶりを見せつけて前半が終了する。

 後半が始まるとパスを繋ぎ、攻勢に出始めた広島だったが、4分に2度目のアクシデントが降りかかる。前半途中から出場していた柴崎が膝を痛めてしまったのだ。一度、ピッチ外で治療を施すが、選手交代を余儀なくされる。MFドウグラスが代わって入り、森保監督が切れるカードは残り1枚となってしまった。

 

 その4分後、ドウグラスがいきなり見せ場を作る。FW浅野拓磨とのワンツーで前を向くと、さらに皆川ともワンツーを成功させてペナルティエリア内へ侵入し、シュートを放つ。惜しくもGKに阻まれたが、ダイレクトプレーが増えて広島のテンポが徐々に上がってくる。

 

 しかし、またしても森保監督の頭を悩ませる出来事が起こる。20分、自陣ゴール前で相手と交錯したMF清水航平が足首を痛め、×サインを送る。たまらず広島ベンチサイドは、DF佐々木翔を送り込む。戦略的な交代がひとつもできないまま3人のカードを切り終える痛い形となった。

 

 25分、この重苦しい雰囲気を一蹴したのは塩谷だ。右サイドでタメを作ったドウグラスが2人を引きつけて、オーバーラップした塩谷へパス。クロスを狙った塩谷のボールは相手DFに当たって角度が変わり、左サイドネットへ吸い込まれる。交代枠を使い切り、打つ手がないチームを楽にする大きな2点目だった。

 

 リードを2点に広げた広島は、前半同様に前から無駄追いせず、きっちりと自陣のスペースを埋める。ボールを奪えばDFライン、GKでゆっくりと回し、時計の針を進めた。そのままのスコアでタイムアップ。再び試合巧者な面を見せつけて勝利を手にした。

 

 準々決勝に進んだ広島は、中2日でアフリカ代表のTPマゼンベと対戦する。J1リーグ、チャンピオンシップと続くハードな日程をこなしている。初出場した12年大会は準々決勝で敗れて5位決定戦に回った広島。ぜひとも今回はここを突破したいところだが、負傷者が3人も出てしまったことは不安材料だ。

 

(文/大木雄貴)