6日、大阪・ヤンマースタジアム長居でJ1昇格プレーオフ決勝が行われた。アビスパ福岡(J2の3位)とセレッソ大阪(同4位)の戦いは、90分では決着がつかず、1-1のドローに終わった。年間順位のアドバンテージで福岡が来季のJ1昇格の切符を手にした。福岡は後半15分にFW玉田圭司に先制を許すが、42分にMF中村北斗が値千金の同点ゴールを決めた。そのまま試合は終了し、福岡は2011年以来のJ1の舞台に返り咲き、C大阪は降格から1年での復帰はならなかった。また同日開催のJ2・J3入れ替え戦第2戦は町田ゼルビア(J3の2位)が大分トリニータ(J2の21位)に1-0で完封勝ち。第1戦を制した町田がトータルスコア3-1でJ2昇格を決め、大分はJ3に降格する。

 

 中村北斗、J1昇格導く劇的同点弾!(長居)

アビスパ福岡 1―1 セレッソ大阪

【得点】

[福岡] 中村北斗(87分)

[C大阪] 玉田圭司(60分)

 

 両チームが中央の守備を強固にした前半だった。福岡は今季から井原正巳監督が指揮を執り、守備の固いチームを作ってきた。対するC大阪は、FW田代有三、玉田、MF関口訓充ら攻撃陣に多数のタレントを抱えるが攻撃に比重は置かず、福岡FWウェリントンを警戒してかなり中央の守りを固めてきた。

 

 流れの中での決定機は38分に訪れる。C大阪MF山口蛍の鋭い縦パスをMFパブロが受けるとそのままドリブルで敵をかわし、ゴール右にいる田代へラストパスを送った。田代はニアサイドを狙うが、GK中村航輔に阻まれる。

 

 互いに決定機が少ないまま、試合をスコアレスで折り返す。引き分けの場合は年間順位が上位の福岡にアドバンテージがある。

 

 同点のままでは1年でのJ1復帰が夢に消えるC大阪は、後半開始とともに攻勢を仕掛ける。前半は鳴りを潜めていたパスワークを駆使し、ペナルティエリアへの侵入を試みた。7分には山口がミドルパスで左サイドバックの丸橋祐介へ。丸橋がダイレクトでDFラインとGKの間にボールを供給するが、惜しくも味方には合わなかった。チャンスを作られた福岡はズルズルとラインが下がってしまう。

 

 15分、鮮やかなパス回しからC大阪がゴールを決める。玉田が関口とのワンツーで抜け出すと、ペナルティエリア内でGK中村航輔と1対1になった。玉田はスライディングでGKより先にボールに触れる。ボールは中村航輔の股間をすり抜け、ネットを揺らす。ベテランFWが貴重な先制ゴールを決めた。

 

 試合に変化をつけたい井原監督は28分にボランチの中原秀人に代えて、俊足のFW坂田大輔を投入し、前線の活性化を図る。

 

 すると42分、福岡に念願の同点ゴールが生まれる。素早い展開からFW金森健志がペナルティエリア左でキープし、左サイドを駆け上がってきたMF亀川諒史にパスを出す。亀川がグラウンダーでクロスを送ると、ファーサイドにポジションを取っていた中村北斗が左サイドネットへ豪快に突き刺した。

 

 再び1点を追いかける展開となったC大阪・大熊清監督はDF中澤聡太を前線に上げ、FWエジミウソンとのパワープレーを試みた。だが、福岡の守備陣を崩すことはできず、1-1でタイムアップした。この瞬間、福岡が5年ぶりにJ1復帰を果たした。

 

 大一番でゴールを決めた中村北斗は「1点とるしかなかったので、思い切り振り抜きました。今日は喜んでまた来年頑張りたい」と喜びを爆発させた。主将の城後寿は「引き分けでしたが、アドバンテージを活かすことができました。これからずっとJ1にずっと定着することが大事」と、浮かれることなく冷静に来季以降を見据えた。

 

 昨年J2で16位だったチームを1年でJ1に導いた井原監督は「1年間頑張ってきた思いが今日の試合で出しきってくれて、こういう結果が得られて本当に良かった。福岡から多くのサポーターも詰めかけてくれました。向こう(福岡)でも応援してくれているサポーターも大勢いるので、昇格の喜びを味わえるのはよかった」と声を震わせながらインタビューに答えた。

 

 2012年からスタートしてJ1昇格プレーオフ。過去3年は最上位(3位)チームの敗退が続いていたが、福岡がその呪縛を解いたかたちとなった。しかし、プレーオフを勝ち上がった3チームはいずれも昇格1年で降格の憂き目に遭っている。まずは来季、福岡がこのジンクスを破れるのか。そして大宮アルディージャ、ジュビロ磐田とともに、J1を面白くしてくれることを期待したい。

 

(文/大木雄貴)