このオフはトライアウトなどで多くの選手を獲得しました。20歳前後の若手も多く、将来が楽しみです。ドラフト1位で指名した佐藤宏樹(千葉・成東高-順天堂大)は、まだトライアウトで見ただけですが、本格派右腕でNPBを狙える素材とみています。

 

 投手陣では長年、チームを引っ張ってきた小林憲幸が退団(オリックス打撃投手に就任)しますが、元横浜DeNAの左腕・古村徹と元オリックスの柴田健斗が入団予定です。古村は故障もあり、NPBで活躍できなかったものの、まだ22歳で再起の可能性があります。柴田も武器の速球を磨き直せば十分、通用するでしょう。

 

 加えて実績のある正田樹が残留し、クローザーでドラフト候補の阿部直晃も2年目を迎えます。他にも東風平光一、伴和馬と昨季、結果を残した選手がいますから、連覇に向けて投手力は整いました。

 

 期待したいのは2年目の19歳・四戸洋明です。185センチと上背があり、腕の振りのしなやかさは伸びしろを感じさせます。1年目の経験を踏まえ、このオフはしっかりトレーニングしているはずです。球速は、もっと伸びるのではないでしょうか。彼が一本立ちすれば層に厚みが増します。

 

 トライアウトリーグでは、お笑い芸人の杉浦双亮に合格を出したことがニュースとなりました。しかし、僕たちは彼を単なる話題性だけで獲得したのではありません。トライアウトリーグでは、誰よりも熱心に野球に取り組み、入団後も選手としての活動をメインにすると聞いています。投手担当の加藤博人コーチとも相談して、その心意気を買いました。今年で40歳となりますが、どこまで戦力になれるか、ぜひ注目してほしいと思っています。

 

 一方、トップバッターの高田泰輔、キャッチャーの宏誓、主砲のザック・コルビーが抜けた野手陣は未知数です。特に現状ではクリーンアップを打てる存在がいません。主砲に名乗り出るとすれば、2年目の高井悠生でしょうか。彼は遠くへ飛ばす力は持っています。確実性を増して、うまく化けられればスカウトの目にも留まることは間違いありません。また、新人では左打ちの小田健太(山口・宇部商高-MSH医療専門学校)もパンチ力のある選手です。

 

 外国人のラファエル・ポロも打力が増せば、クリーンアップを任せてよいでしょう。守備と足はNPBでも通用しますから、バットでアピールできればシーズン途中での復帰も見えてくるはずです。

 

 宏誓の抜けた扇の要は、独立リーグ・グランドチャンピオンシップでも活躍した鶴田都貴の責任が重大になります。また内野は5年目となる四ツ谷良輔が締めてほしいものです。二遊間は、この四ツ谷と2年目の吉田圭志が軸となるでしょう。また徳島から移籍する井生広大にはサードでの起用を考えています。

 

 今季は全体でのトレーニング開始が2月22日と始動が例年より遅いスケジュールとなっています。ただ、3月に入れば実戦を入れていきますから、そこが開幕に向けて最初の勝負になることは全員、わかっているはずです。各自が考えて動き、チームとして集まった段階では体を仕上げてきてくれることでしょう。

 

 昨季は独立リーグ日本一という大きな目標を達成したものの、ドラフト指名では結果を残すことができませんでした。今年は両方で成果を挙げられるよう、選手を育てながら勝っていきたいと考えています。僕自身も選手の長所を見極め、どんどんスカウトに売り込んでいくつもりです。今年も1年間、よろしくお願いします。

 

弓岡敬二郎(ゆみおか・けいじろう)プロフィール>:愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1958年6月28日、兵庫県出身。東洋大姫路高、新日鐵広畑を経て、81年にドラフト3位で阪急(現オリックス)に入団。1年目からショートのレギュラーとなり、全試合出場を果たすと、84年には初の打率3割を記録してリーグ優勝に貢献。ベストナインとダイヤモンドグラブ賞を獲得する。87年にもゴールデングラブ賞に輝き、91年限りで引退。その後もオリックス一筋で内野守備走塁コーチ、2軍監督、2軍チーフコーチ、スカウトなどを歴任。13年をもって33年間在籍したチームを退団し、愛媛の監督に就任した。現役時代の通算成績は1152試合、807安打、打率.257、37本塁打、273打点、132盗塁、240犠打。

 

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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