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(写真:層が厚くなり、黄金期の到来を予感させたパナソニック)

 31日、第53回日本ラグビーフットボール選手権が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、トップリーグ覇者のパナソニックワイルドナイツが、大学選手権王者の帝京大学を49-15で下した。パナソニックは2季ぶり5度目の優勝。パナソニックは開始早々に2トライを奪うなど、出足からリードを広げる。前半を21-3で終えると、後半の立ち上がりにも得点を重ねた。一方の帝京大も2トライを返したが、反撃は及ばなかった。

 

 19年ぶりの一発勝負となった日本選手権。トップリーグ3連覇を達成したパナソニックが、学生王者・帝京大の挑戦を退けた。

 

 先に仕掛けたのはパナソニックだった。「元々、出足が良くないので、意識した」とHO堀江翔太キャプテン。それに加えて「帝京は挑戦者でメンタルを上げやすい。受けたら持っていかれる」との理由から一気に攻めた。

 

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(写真:久々にスタメン復帰したバーンズ。キック成功率は100%)

 開始わずか1分、中央でSOベリック・バーンズが右へ展開すると、CTB林泰基、WTB山田章仁が素早く繋いだ。最後は大外でFB北川智規がインゴールへと飛び込んだ。ノーホイッスルトライでパナソニックがリード奪う。コンバージョンキックもバーンズが決めて、7-0となった。

 

 いきなりの先制パンチから4分後、今度はWTB児玉健太郎が敵陣深くで中央のスペースを突く。ゴールポスト左を通過し、そこから内側に回り込んでトライを決めた。ヘッドコーチ(HC)のロビー・ディーンズがシーズン前に高く評価していた2年目の若手ウイングが期待に応えた。正面のコンバージョンはバーンズが難なく入れて、14-0とリードをさらに広げた。

 

 理想通りの展開となったパナソニックだったが、事がうまくいき過ぎたせいか、リズムを崩す。司令塔のバーンズが「自分らしいプレーを失っていた」と、チームは体をぶつけて前へ進むことよりも外にボールを振り過ぎた。山田は「前にいきたい気持ちが強過ぎてパスが雑になっていた」と語れば、ベテランの北川も「気負い過ぎた。トップリーグを代表しているので点差を開けたかった」と反省。守備でも一発で仕留めようとするタックルが目立ったという。

 

 トップリーグ王者が見せたスキを帝京大は見逃さない。激しいチャージで2本のキックを弾き、低いタックルで相手を襲う。18分には敵陣でインテンショナルノックオン(守備側のノックオン)でペナルティーを獲得。ここでショット(キックでゴールを狙う)を選択し、SO松田力也がきっちり決めた。

 

 詰め寄られたパナソニックも日本代表のトライゲッター山田が躍動する。33分、右サイドでボールを持つと、中央へとラインを切り裂くようにゲイン。倒れ込みながら、投げたパスはこぼれたが、FL西原忠佑が拾った。西原がインゴール目前へと迫り、パスを送る。それを受け取った山田が飛び込んでトライ。バーンズのキックも決まり、リードを18点に広げて、前半を終わらせた。

 

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(写真:後半早々に中央を抜け出しトライを奪う内田)

 パナソニックは後半開始早々にも一撃。スタメン起用されたSH内田啓介がチームをリードする。1分に中央のスキを突いて、トライを獲得する。7分には速い球出しから林のトライをアシスト。いずれのコンバージョンも安定感抜群のバーンズが決めて、32点差とした。

 

 18分に帝京大にトライを喫したパナソニック。23分にPR稲垣啓太、30分に西原とFWがトライを重ねた。終了間際にトライを奪われたものの、終わってみれば49-15と危なげなく勝利し、シーズン2冠で締めくくった。ディーンズHCは開幕前にチームの底上げに自信を窺わせていたように児玉、内田、FL布巻峻介など若手も育ってきた。来季はFB藤田慶和(早稲田大)、WTB福岡堅樹(筑波大)ら期待のルーキーも入ってくる。5度目の日本一を成し遂げた野武士軍団の戦力は更なる厚みを増す。

 

(文/杉浦泰介)