日本ラグビー新時代――。

“史上最強の敗者”と称えられたワールドカップ(W杯)の興奮冷めやらないなか開催されたトップリーグは、パナソニック・ワイルドナイツの3連覇で幕を閉じた。だが“シーズン”はこれからだ。日本の選抜チーム「ヒト・コミュニケーションズ・サンウルブズ」が、スーパーラグビーに参戦するためである。これまでも一部の選手が期間限定のプロチームに入って出場してきたが、日本のチームとして世界の舞台に挑むことになる。

 

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 スーパーラグビーを簡単に説明しておこう。

 ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカという南半球のラグビーを代表する3カ国で組織する「SANZAR」が運営する国際リーグは、1996年にスタートして以降人気を博してきた。「スーパー12」「スーパー14」と名称を変え、2011年から「スーパーラグビー」となった。設立から丸20年を迎えた節目のシーズンに、日本のサンウルブズとアルゼンチンの選抜チーム「ジャガーズ」が参戦することになったのだ。2月27日に開幕し、8月6日までの約5カ月間、激闘が繰り広げられることになる。

 

 チームは「オーストラリア・ニュージーランドグループ」「南アフリカグループ」の2つに分けられている。そして1つのグループは2つのカンファレンスで構成される。ちなみに日本のサンウルブズは「南アフリカグループ」の「アフリカカンファレンス1」に所属することになる(他にブルズ、チーターズ、ストーマーズの3チーム、いずれも南アフリカ勢)。

 

 レギュラーシーズンは同じカンファレスのチームとホーム&アウェーで戦い、もう1つのカンファレンスとは1試合ずつ。そして別グループの5チーム(10チーム中)と1試合ずつ対戦するという流れ。各カンファレンスの1位4チームと、ワイルドカード4チームがファイナルシリーズに進むことになる。

 

 サンウルブズは2月27日、秩父宮でライオンズ(南アフリカグループ・カンファレンス2)と開幕戦を行ない、7月15日のシャークス戦(同・カンファレンス1)まで15試合。FB五郎丸歩(ヤマハ発動機)が所属するレッズとは別グループとなるが、5月21日にアウェーでの対戦が決まっている。

 

 サンウルブズは世界を相手にどこまでやれるのか。

 ヘッドコーチには現役時代、W杯に2度出場した元ニュージーランド代表HOのマーク・ハメット氏が就任した。指導者としては、長年プレーしたクルセイダーズでアシスタントコーチとして、3度の優勝を支えている。このときのヘッドコーチがパナソニックで3連覇を達成した名将ロビー・ディーンズ氏である。2011年からはハリケーンズではヘッドコーチを務めたが、好成績を残せてはいない。今年2月まではウェールズのクラブに携わってきたという。

 

 サンウルブズのメンバーは主将のHO堀江翔太、PR稲垣啓太、WTB山田章仁(いずれもパナソニック)、LO大野均(東芝)らジャパンのW杯組10人を含む35人がそろった。堀江、稲垣、山田らは既にスーパーラグビーでプレーしており、チームに「経験」を伝えることのできる存在だと言っていい。

 

 堀江が初代キャプテンに就任したのも、頼もしい限りである。W杯で日本と対戦したサモア代表SOトゥシ・ピシ(サントリー)や15人制の代表歴がないFB笹倉康誉(パナソニック)らバラエティーに富んだメンバー構成となっている。

 

 チームは3日にメディカルチェックを受け、8日から本格始動。13日には豊田スタジアムでトップリーグ選抜と対戦し、52-24で勝利。ライオンズとの開幕戦に向けて、弾みをつけた形となった。

 

 世界で戦うジャパン戦士

 

 注目はサンウルブズだけではない。

 まずエディー・ジャパンの主将を務めたFL/No.8リーチ・マイケル(東芝)。昨季、ニュージーランド代表の選手も多く在籍するチーフスでレギュラーの座を勝ち取り、チームの最優秀新人賞を獲得している。チームの欠かせない存在だと言っていい。今年は神戸製鋼からPR山下裕史もチームメイトになる。

 

 昨季覇者のハイランダーズでプレーするSH田中史朗(パナソニック)は、4年目のシーズンを迎える。昨季はスーパーサブとしての出番が多かっただけに、2連覇を狙うチームで先発の機会を増やしたいところだ。

 

 そして一番の注目株は言うまでもない、スーパーラグビー初挑戦の五郎丸である。レッズはブリスベンに本拠地を置き、エディー・ジャパンのFLツイ・ヘンドリック(サントリー)も在籍している。

 オーストラリアに出発する前に記者会見に臨み、彼は目標についてこう語っている。

「まずはあまり先を見ず、目の前のことをしっかりとこなし、試合に出ること、ジャージーを着ることを考えて必死に練習したい」

 試合に出られるという保証はない。だがレベルの高い環境に身を置き、努力を続けることで「試合に出ること」をつかみ取る覚悟も、自信もある。

 

 ほかにもスーパーラグビー経験者であるCTB/WTB松島幸太朗(サントリー)がレベルズでプレーすることが決まるなど、日本人選手に対する評価は高い。それもこれも南アフリカを撃破したインパクトを含め、イングランドでの輝きがあったからこそ、だ。

 

 2019年の自国開催まであと3年。スーパーラグビーは、ジャパンラグビー発展のためには欠かせない舞台となることは間違いない。しかし参加するだけでは意味がない。3年後の大舞台で結果を残すためには、やはり世界最高峰と称されるこのリーグで活躍することが求められる。

 

 サンウルブズは、そして日本のサムライたちは、世界を驚かせることができるのか――。

 

 なお、スーパーラグビーは、J SPORTSで生中継を中心に毎節4試合以上放送する。注目のサンウルブズ戦と五郎丸出場のレッズ戦は全戦試合放送。

 

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開幕節放送予定】※時間は放送開始時刻

 

第1節

2月26日(金)

15:25~ ブルーズvs.ハイランダーズ(J SPORTS1)

2月27日(土)

12:15~ サンウルブズvs.ライオンズ(J SPORTS1)

15:25~ クルセイダーズvs.チーフス(J SPORTS2)

17:30~ ワラターズvs.レッズ(J SPORTS1)

 

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