第82回 マシンとの一体感でライバルに勝つ ~モータースポーツ~
人車一体――。
日本人F1ドライバーの先駆者・中嶋悟はクルマを壊さないドライバーとして有名だった。自分の体のようにクルマを大切に扱った。
「自動車はすべて自分の気持ちで動いているんだよ。自分は何のためにアクセルを踏もうとしているのか。それは先へ行くためだよね。実際にアクセルを踏むと僕の気持ちがクルマに伝わってガソリンが流れ、タイヤが前にクルッと回る。僕はクルマとドライバーの関係はそのようなものだと思っている。
たとえば、デコボコ道を走るでしょう。ああ、自動車が痛がるだろうな、自動車に悪いな、とすぐに僕は思う。ブレーキをかけながらいくと重みをゴツンと受けるから、サスペンションをどこかで緩めてやらないといけない。それはいつも思っていた。心の中で、どれだけ自動車に感謝できるか。一番大事なのは、そこなんじゃないかな」
マシンに人一倍の愛情を持って接し、そして感謝の気持ちを抱きながらコースを駆ける。中嶋の“人車一体”となった粘り強い「納豆走法」は日本列島にF1ブームを巻き起こす原動力となった。
沸騰したF1ブームを経て、モータースポーツを観る文化は日本にも定着してきている。
今年もシーズンインの春を迎える。
F1は3月20日のオーストラリアGPで開幕し、11月27日のアブダビGPまで全21戦。鈴鹿サーキットでの日本GPは10月9日に開催される。
ディフェンディングチャンピオンで我が世の春を謳歌するメルセデスAMGが主役であることに変わりはない。自身3度目の年間王者となったルイス・ハミルトン、そしてドライバーズポイント2位のニコ・ロズベルグを擁し、昨年はコンストラクターズポイントで2位フェラーリに275ポイント差もつけている。
盤石のハミルトン&ロズベルグのライバル筆頭は言うまでもなくそのフェラーリ。今年もコンビを組むのはセバスチャン・ベッテル(ドライバーズポイント3位)、キミ・ライコネン(同4位)だ。今年から稼働するハミルトンのエンジニアを務めていたジョック・クリアを獲得した効果がどう出てくるかが見ものである。
“元F1組”佐藤に期待
日本人ドライバーは今年F1の舞台に名を連ねていないが、“元F1組”の佐藤琢磨は今年もA.J.フォイト・レーシングからインディカーに参戦する。相棒も変わらず、ジャック・ホークスワーク。インディカーは13日にグランプリ・オブ・セントピーターズバーグで開幕する。
佐藤はインディカー参戦7年目、A.J.フォイトでは4年目を迎える。昨年は5月31日のデトロイトで2位に入るなど、手応えを得たシーズンでもあった。今年こそ、キャリア2勝目の思いは強いはずである。
2010年にインディカーへ活躍の場を移した際に彼は、F1とインディカーの違いについてこう語っている。
「これはもう全く違うカテゴリーだと思います。確かに姿形はオープンホイールのいわゆるフォーミュラカーですが、クルマのコンセプトそのものが全く異なるんです。
走らせる環境も違う。インディカーにはロードコースと言われる一般のサーキットと、ストリートと言われる市街地コース。それともう一つ、楕円形のオーバルがあります。F1と似ているロードとストリートに関しても、道路の状態がF1では考えられないほどデコボコしているんです」
とはいえ“人車一体”はF1だろうが、インディカーだろうが変わらない。
佐藤は「レースは科学」と言い切った後、すぐに言葉をつなげた。
「本来のクルマのパフォーマンス以上は絶対に出せない。でもいわゆるオーバードライブ、自分の気持ちばかりが先に行ってしまって、空回りして余計に遅くなってしまうような時には、パフォーマンスを引き出すために少し自分をリラックスさせてクルマからいろいろと聞いてやることを意識します。そういう判断は経験から来るものとナチュラルに持っているものと複合的なものだと思います。レースをしながらタイヤも含めて刻々と状況が変化することを考えて、クルマのポテンシャルを引き出す。そういう作業を常にしてあげないといけない」
マシンの性能をいかに引き出していけるか。これこそがモータースポーツで何より大事な要素なのである。
これはドライビング(4輪レース)ばかりでなく、ライディング(2輪レース)の世界でも同じだ。
今年37歳になった“天才”バレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ・MotoGP)は今なおMotoGPでトップを張り続けている。過去9度、年間王者となり、昨シーズンは2位。最終的にはチームメイトでありライバルであるホルヘ・ロレンソに逆転されて年間王者を譲っただけに、今シーズンは王座奪回を狙っている。MotoGPは20日のカタールGPで開幕を迎える。
そんなロッシはレース前のルーティンが有名だ。バイクの横でしゃがみこみ、右手でステップを掴んで祈る――。きっとマシンと一体化するための儀式なのだろう。
“人車一体”となった者だけが得るもの。
誰よりも速く、誰よりも先に。
音速の競演が、今年も始まる――。
2016 F1グランプリ(フジテレビNEXT ライブ・プレミアム)はフリー走行から公式予選、決勝まで全セッションを完全生中継でお届け!
インディカー・シリーズ2016(GAORA SPORTS)は全レースを放送!
2016 MotoGP(日テレジータス)は全戦全クラス徹底中継!
【放送予定】
◆F1◆
開幕戦 オーストラリアGP(放送はすべてフジテレビNEXT ライブ・プレミアム)
予選 3月19日(土) 14:50~
決勝 3月20日(日) 13:30~
◆インディカー・シリーズ◆
開幕戦 セントピーターズバーグ・グランプリ(開幕戦はBSスカパー!で生中継)
3月13日(日) 1:30~
◆MotoGP◆
開幕戦 カタールGP(放送はすべて日テレジータス)
予選 3月19日(土) 0:00~
決勝 3月20日(日) 23:45~
※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。