27日、2016明治安田生命J1リーグ開幕戦が各地で行われた。昨季王者のサンフレッチェ広島は、4年連続得点王のかかるFW大久保嘉人を擁する川崎フロンターレとホームで対戦した。後半39分に川崎Fは左サイドからのMF中野嘉大のパスをFW小林悠が左足で合わせてゴールを決めた。川崎Fは1-0で開幕戦を白星スタート。一方、敗れた広島はアジアチャンピオンズリーグに続き、公式戦連敗となった。

 

 3年ぶりのJ1復帰を果たしたジュビロ磐田は、小倉隆史新監督率いる名古屋グランパスに0-1で敗れた。名古屋は前半29分、DF矢野貴章の右からのクロスに199センチの新助っ人FWシモビッチが頭で合わせて先制。このリードを名古屋は最後まで守り切り、小倉監督の初陣を飾った。

 

 その他の昇格組はアビスパ福岡がサガン鳥栖に1-2で敗れ、大宮アルディージャはFC東京に1―0で勝利した。

 

 8日はJ1の残り1試合(ガンバ大阪―鹿島アントラーズ)が行われ、J2も開幕する。

 

<赤い悪魔、開幕白星>

 

新9番・武藤、公式戦2試合連続ゴール

浦和レッズ 2-1 柏レイソル(日立台)

【得点】 

[浦和] 武藤雄樹(52分)、ズラタン(84分)

[柏] 大谷秀和(64分)

 

 今季からU‐23日本代表キャプテンのDF遠藤航を獲得するなどオフの主役となった浦和は、アウェーで柏と対戦した。試合開始からボランチが低い位置までおちてボールを回す“ミシャシステム”は健在だ。ボランチの柏木陽介がDFラインのボール回しに参加した時、新加入の遠藤に身振り手振りでポジションを指示していたのが印象的だった。

 

 柏木は「オレが下がった時に前に出てくれっていうところだけで、遠藤は良いプレーをしていたと思う」と評価した。ミシャシステムはストッパーも積極的に攻撃参加をする。厚みのある攻めをできる一方で、裏を狙われるリスクもある。ミハイロ・ペトロヴィッチのもとで広島時代と合わせて約9年プレーしている柏木は「そこのバランスはしっかり考えないといけない。でも上がって行ってチャンスになることもあるから、使い分けをしっかりできればいい」と語る。

 

 開始3分、遠藤を起点に浦和がいきなり好機を作る。MF大津祐樹からボールを奪った遠藤は、ゴール左に位置していたFW武藤雄樹へスルーパスを送る。武藤のシュートは何とか柏DFが阻止して左CKへ逃れた。柏木のCKをDF槙野智章がファーで合わせるも、惜しくも枠を外れた。

 

 31分、浦和に最大のチャンスが訪れた。右サイドを突破したMF関根貴大がクロスを上げると、ファーサイドで武藤が胸で押し込む。ボールはゴールラインを割ったかに見えたが、ぎりぎりのところでGK中村航輔がボールを右手でかき出した。今季、アビスパ福岡での武者修行から帰ってきた中村が成長した姿を日立台でアピールした。

 

 2分後、柏が反撃に出る。カウンターからDF伊東純也が右サイドからカットインして左足でインスイングのシュートを放つ。ボールはわずかゴール左へ逸れたものの、22歳の若手サイドバックがチームを盛り上げようとする姿勢が見えた。

 

 スコアレスで折り返し、迎えた後半7分。今季から浦和の9番を背負う武藤が輝く。柏のDF陣がクリアーしたボールをMF阿部勇樹がヘディングで再度ゴール前に送る。それをペナルティーエリア内でFW李忠成がボールを収め、振り向きざまに左足でシュートを放った。これは中村が弾くが、こぼれ球に誰よりも早く反応していた武藤がゴールに押し込んだ。武藤は「李がシュートを打つ瞬間にこぼれて来るだろうと思って走り出していた。僕の特徴が出たゴールだった」と振り返った。

 

 柏も負けじと食らいつく。19分、FWディエゴ・オリベイラが2人を相手に強引に仕掛けてペナルティーエリア内右からシュートを打った。これは浦和DFが防ぐが、こぼれ球を狙っていたMF大谷秀和が左足でゴールにつめる。柏が試合を振り出しに戻した。

 

 このままドローかと思われた39分、途中出場のFWズラタンが、武藤の蹴った右CKに頭で合わせて左サイドネットを揺らす。両チームにとって喉から手が出るほどほしかった2点目を浦和が決めた。その後も柏のカウンターをリベロ・槙野を中心とした守備陣が跳ね返し、試合は終了した。

 

 新加入の遠藤は試合後、「守備で自分の良さをしっかり出すことを意識した。いつもやっている3バックの右だったので違和感なくやれた。ビルドアップのところは課題かなと思いますけど」と自身の出来を評価した。複数のポジションが出来る遠藤は、どこで起用されるかにも注目が集まる。本人は「基本は3バックになると思う。後ろでやりながら徐々に浦和のサッカーに慣れれば、ボランチで使う可能性もあるという話はされている」とコメントした。

 

 一方、今季から槙野はリベロに挑戦している。「昨年までの反省は活かせていると思います。ラインがずるずる下がってしまうとか、60分以降のバランスが崩れるとか、失点した後に落ち着きがなくなる。そういう部分は自分が去年、ストッパーをやっていて感じたことをリベロに入ってオーガナイズすること、バランスを保たせることが僕の仕事だと思います」と語った。

 

 槙野、遠藤、右ストッパーから左ストッパーになったDF森脇良太と生まれ変わった3バックが、チームを盛り上げる。開幕戦を好発進した浦和が、2006年以来のリーグ優勝を奪いにいく。

 

(文/大木雄貴)