PRIDEの区切りイベントという位置づけの「やれんのか! 大晦日! 2007」が31日、さいたまスーパーアリーナで開催され、注目を集めたPRIDEウェルター級GP2006王者の三崎和雄(GRABAKA)×HERO′S2006ライへビー級トーナメントを制した秋山成勲(フリー)は、三崎が1R8分12秒、KO勝利をあげた。
 メーンではPRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)が218センチ、160キロの巨漢・チェ・ホンマン(韓国)に1R1分54秒、腕ひしぎ十字固めで一本勝ちをおさめた。
(写真:カウントダウンイベントで盛り上がるさいたまスーパーアリーナ)
 異様な盛り上がりの中での王者対決となった。昨年大晦日の桜庭戦で全身にクリームを塗布する反則を犯してから1年。前日の公開会見でもファンからブーイングが飛んだ秋山だが、この日は開会式の選手紹介、また試合前の入場でも場内は大ブーイング。一方の三崎には大歓声と拍手が送られた。

 緊張感に包まれる中、序盤からスタンドの展開となった。ゴング前から気合十分の表情を見せていた三崎は、動きに硬さが見られる。1R中盤、秋山の右ストレートで三崎がダウン。「一瞬、完全に意識が飛んだが、(意識が)戻ったらケンカ魂にエンジンがかかった」(三崎)。本来の動きを取り戻し、激しい打撃戦が繰り広げられる。8分過ぎ、三崎の左フックに秋山がダウン。三崎は秋山の顔面にすぐさま右のキックを打ち込むと、レフェリーストップ。ファンの声援に応え、三崎が1R8分12秒、逆転のKO勝利をあげた。
 
 鼻骨骨折の疑いがかかる秋山はノーコメントで病院に直行した。
 試合後、三崎は「重圧の中で練習をしてきた。誰にも弱音を吐けず、すべて自分の中に背負ってリングに上がろうと決めていた。リングに上がってもなかなか重圧が抜けなかった」と胸の内を明かし、試合後の秋山へのマイクパフォーマンスについて、「今まで彼に対して我慢してきた思いを、目を見て言いたかった。向かい合ったことで、彼が持っている奥の深い部分が伝わってきて、この男はリングの上でみんなの信頼を取り戻さないといけないと感じた」と語った。
 また、リング上で「柔道、最高!」と秋山が勝利後によく口にする言葉を発したことについては「僕も柔道出身ですし、子どもたちに武道の精神を伝えたいという思いが出た」と話した。
 今後は「格闘家として本物を伝えていきたい。自分のスタイルを崩さず、日本・海外関係なく、自分が行きたいと思うところに行きたい」と三崎。節目のリングでファンの思いに応えたPRIDE王者は、次なる戦場でさらなる高みを目指す。

 テレビ放映のため、メーンの予定だったヒョードル×ホンマンは第6試合に変更された。
 ホンマン218センチ、160キロ、ヒョードルが182センチ、105.5キロ。体格差がある中、ヒョードルは開始早々、打撃で距離を詰めて組み付きテイクダウンを狙うが、逆にホンマンに押し倒される。
 下になったヒョードルが腕十字に入るが、ホンマンはこれをしのぐ。一度スタンドに戻るものの、再びホンマンがテイクダウンを奪う。ここからヒョードルはすばやく腕十字を決めると、ホンマンはたまらずタップ。1分54秒、ヒョードルが貫録の一本勝ちを収めた。
 試合後のインタビューでヒョードルは「力が強く大きな相手だったが、いつも(対戦)相手は強い選手だと思っているので、驚くことはなかった。始まってすぐに自分の方が素早いと感じた」と涼しい表情で振り返り、「とにかく日本に帰ってこられて嬉しい。こんなに温たく迎えてくれる国はほかにない。その期待に応えられるような試合がしたかった」と日本のファンへの感謝の思いを口にした。

 一方、敗れたホンマンは「準備期間が足りなかった。もっとしっかり準備して臨みたかった」と語り「総合格闘技は思ったより面白かった。次は練習を積んで、またヒョードルとやりたい」とリマッチへの意欲を見せた。

 このほか、川尻達也(T−BLOOD)はルイス・アゼレード(ブラジル)、瀧本誠(吉田道場)はムリーロ・ブスタマンチ(ブラジル)、石田光洋(T−BLOOD) はギルバート・メレンデス(米国)とそれぞれ実力者相手に判定勝利を収め、桜井“マッハ”速人(マッハ道場)もDEEP王者長谷川秀彦(SKアブソリュート)に判定勝ちした。
 急きょ、メーンでの出場となった青木真也(パラエストラ東京)は、プロ初参戦のシドニー五輪柔道銀メダリストチョン・ブギョン(韓国)に苦戦。判定3−0で勝利したものの、腕十字を決められかけあわや一本負けかというヒヤリとする場面もあった。試合後には「久しぶりの試合で調子に乗ってやられかけちゃいました。まだまだ自分が“ミスター・やれんのか”だと思っている。来年もオレはやります!」と力強くマイクアピールした。

 エンディングではカウントダウンのため、出場選手ほか、吉田秀彦(吉田道場)、郷野聡寛(GRABAKA)、菊田早苗(同)ら他の選手もリングに上がり、一人ずつ挨拶。 高田統括本部長の「今年も」の呼びかけに、ファンが「やれんのか!」と応じイベントは幕を閉じた。
 2008年の幕開けと同時に割られたくす玉からは「桜の咲くころ、夢の続きを」「今年もやれんのか!」と、次回の開催を連想させる言葉が書かれた垂れ幕が下がった。
 今後、M-1グローバルが日本で大会を開催するという話もあり、ヒョードルはインタビューで「春または夏、その大会が開かれるなら、私は必ず日本に来ます」と語っていた。M-1グローバルを含めた、今後の展開にも注目が集まる。

※試合結果
<第8試合>
○青木真也(パラエストラ東京)
2R判定 3−0
×チョン・ブギョン(韓国/シドニー五輪柔道銀メダリスト)

<第7試合>
○桜井“マッハ”速人(マッハ道場)
2R判定 3−0
×長谷川秀彦(SKアブソリュート)

<第6試合>
○エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア/レッドデビル)
1R1分54秒腕ひしぎ逆十字固め
×チェ・ホンマン(韓国/フリー)

<第5試合>
○三崎和雄(GRABAKA)
1R8分12秒KO
×秋山成勲(フリー)

<第4試合>
○石田光洋(T−BLOOD)
2R判定 3−0
×ギルバート・メレンデス(米国/ジェイク・シールズ・ファイティング・チーム)

<第3試合>
○瀧本誠(吉田道場)
2R判定 2−1
×ムリーロ・ブスタマンチ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム)

<第2試合>
○川尻達也(T−BLOOD)
2R 判定3−0
×ルイス・アゼレード(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー)

<第1試合>
○マイク・ルソー(米国)
1R 2分58秒 前方裸絞め
×ローマン・ゼンツォフ(ロシア/レッドデビル)