野球賭博問題などで大揺れに揺れた巨人が開幕3連勝を飾った。これは1998年以来、18年ぶりのことだ。

 

 

 目についたのは開幕戦に先発し、苦手にしていた東京ヤクルトを7回まで無失点に封じ、今季初勝利をあげた菅野智之の変身である。

 

 昨季のトリプルスリー男・山田哲人をまっすぐで押しまくるなど、強気なピッチングが目立った。

 

 聞けば、今季のテーマは「圧倒」なのだそうだ。これまでが「柔よく剛を制す」なら、今季は「剛よく柔を封じる」というわけだ。

 

 この試合を見ていた巨人の元投手総合コーチ川口和久は「昨季までは、どちらかといえば“かわしながら抑える投球”だったが、“攻めながらかわす投球”へと変貌していたね」と舌を巻いていた。

 

 川口によれば、菅野は「完璧主義者」。ボール一個の出し入れにこだわるタイプなのだという。「コントロールがいいからできるんだろうけど、(ストライクゾーンの)四隅を突きすぎるきらいがあった。それで逆にカウントを悪くしていて痛い目に遭っていた」

 

 マウンドでは弱みを見せることもあった。

「1回、甲子園でドーンと打球が彼の腹を直撃したことがあった。あまりにも痛がるのでマウンドに行って“代わるか? でもオジさん(原辰徳前監督)が見てるぞ。オマエのこんな姿見たら、オジさん何というかな?”と聞いたら、“いえ、代わりません。投げます”だって。このくらいのことで代わっていたら巨人のエースは務まりません。今季からは原さんもいなくなって自立が求められる。開幕ゲームは“さすがエース!”と呼べるようなピッチングでしたね」

 

 かつて江夏豊は、変化球一球で打ち取れるバッターに対し、わざと3球続けて快速球を投じ、三球三振に切ってとったことがあった。ピリッとしない味方を奮起させるための全力投球だったと語ったものだ。

 

 チームを背負ってこそ真のエースである。

 

<この原稿は『週刊大衆』2016年4月18日号に掲載されたものです>

 


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