NPBもアイランドリーグも各球団が新チームが始動して1カ月が経ち、開幕に向けた実戦も増えてきた。今シーズン、リーグからは過去最多の7名が新たにNPBの門をくぐり、計23選手が1軍の檜舞台で活躍するべくキャンプで汗を流している。リーグの行方ともに、彼らの動向も気になるところだ。NPB入りというひとつの夢を叶えた選手たちは、新たなシーズンにどのように臨もうとしているのか? その今を追いかけた。
 ハマのツルオカをアピール――岡賢二郎

 それまでテレビで観ていた投手がマスク越しにマウンドに立っている。同じユニホームを着ていながら、岡賢二郎はまだその現実が半分信じられないでいた。ルーキーイヤーの昨季は2軍の公式戦に捕手で35試合に出場。清水直行、三浦大輔、大家友和ら2軍で調整する一線級の投手をリードする機会にも恵まれた。

「最初は完全に舞い上がってしまって、配球のサインも野手への指示もロクに出せなかったんです。受けるだけで精一杯の状況でした」
 それでもベテランの投手たちは、未熟な捕手のサイン通り投げてくれた。結果は散々だった。
「なんで、あの場面であの球を要求したんだ?」
 ベンチに戻るとすぐに反省会が始まった。1軍で結果を残している投手の観察眼や洞察力には驚かされることばかりだった。

 捕手が出すサインひとつでチームの勝敗は左右される。責任重大なポジションで失敗を重ねるうちに、秋にはようやくリードで結果を残せるようになった。
「サイン通りに投げてくれて、完封勝ちができたり、先発投手を6、7回まで引っ張れるようになりました。シーズン終盤にはだいぶ自信を持ってマスクをかぶれましたね」

 秋にはクライマックスシリーズや日本シリーズをテレビ観戦して、中日・谷繁元信らの配球を勉強した。その谷繁は捕手の条件として「どんな状況でも対応できる引き出しの多さ」をあげる。昨季、2軍で指導してくれた山下和彦バッテリーコーチからも同様の指摘を繰り返し受けた。
「シゲ(谷繁)が素晴らしいのは引き出しがたくさんあるからだ。オマエはまだ引き出しが足りない」
 そのためには経験はもちろん、投手とのコミュニケーション能力も求められる。「何をピッチャーが投げたいのか。それがこちらの意図と一致するようにしていく」のが理想だ。今後は1軍の投手の特徴や性格を把握することも大事になる。

 4年連続最下位に沈むベイスターズの大きな課題のひとつが正捕手づくりである。「名捕手あるところに覇権あり」との言葉もあるように、扇の要がしっかりしない限り、チーム再建は厳しい。岡にもチャンスはある。入団時からの売りは自ら「ハマのバズーカ」と名づけた強肩。だが、肩の強さでは昨季終盤に1軍で起用され続けた黒羽根利規にも定評がある。
「スローイングではこれまで誰にも負けたことがなかったのに、初めてライバルと呼べる存在と出会いました。同い年(24歳)ということもあって、かなり意識しています」
 
 その黒羽根も昨季の打率は.175。もっとも多くマスクをかぶった細山田武史も打率.208と芳しくない。打てる捕手が主流となっている現代野球では打撃向上も1軍に割って入る条件だ。1月には巨人にFA移籍した村田修一や若き主砲の筒香嘉智らと奄美大島で自主トレを行った。
「村田さんや筒香はアウトコースのボールも流すのではなく、しっかり叩いている。僕はそれまで右方向に流そうとしてスライスがかかって切れていた。打撃の感覚は去年と違うものが身についたんじゃないかなと思います」

 巨人から苗字が同じ読みの鶴岡一成も移籍した。まずは横浜の「ツルオカ」といえば、鶴岡ではなく、岡だと存在感を示さなくてはならない。
「1軍に上がって、こんなキャッチャーも横浜にいたんだとファンの方に覚えていただきたいですね」 
 キャンプは初の1軍でスタートしたが、残念ながら第1クールで2軍降格となった。まだ戦いはこれから。次なる機会を待って、まずは横須賀のホームベースを守り続ける。

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(石田洋之)