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(写真:試合前の練習でノックをする秋元監督<中央>)

 日本女子ソフトボールリーグが16日、千葉・QVCマリンフィールドで開幕した。1部復帰3年目、秋元理紗監督体制で2年目となる伊予銀行ヴェールズは、若手選手の活躍でシオノギ製薬ポポンギャルズに3-2の劇的な逆転勝ち。2016シーズン、白星スタートを切った。

 

 

 試合当日の直前練習、秋元監督は選手たちに笑顔で接する姿が目立った。気負わずリラックスするように声掛けしているように映った。指揮官はこう説明する。

「去年は何とか1部に残ったチーム。選手がよく頑張って1部でまた試合ができるということなので、開幕くらいはのびのびと思い切ってやってほしいと思いました」

 

 予定時刻よりも40分近く遅れてスタートした2016シーズンのオープニングゲーム。開幕投手を任されたのは、大卒3年目の内海花菜だ。秋元監督は昨季1勝のサウスポーに大役を託した。「チームで絶対的信頼を得ているので、私の中では内海さんで行こうと。ほとんどブレなかったですね」。数か月前に決意してから、迷いはなかったという。

 

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(写真:2番キャッチャーでスタメン起用された二宮)

 一方、3年目にして初の開幕投手を務める内海は「緊張はしましたが、任されるとわかった時点で、自分がやるべきことをしっかりやるだけだと思っていました」と振り返る。バッテリーを組むのは大卒ルーキーの二宮はな。秋元監督が「キャッチャーとしてすごく攻撃的な選手」と評価する強気なリードが持ち味だ。内海も「熱いものを感じる。すごく“勝ちたい”って気持ちが強いキャッチャーです。自分よりも、年下ですが結構頼らせてもらっています」と信頼を寄せる。

 

 初回、若きバッテリーは指揮官の起用に応える。ストレート中心の配球でシオノギ製薬打線を攻めた。先頭バッターをレフトフライに打ち取り、まず1アウト。続く2、3番を連続三振に切って取り、三者凡退でベンチに戻った。2、3回はいずれもヒットを許したが、後続を断ちスコアボードにゼロを並べた。

 

 しかし、伊予銀行打線はシオノギ製薬の岩田みゆきの前にノーヒットと沈黙した。すると4回、内海が2死三塁の場面で5番の上田恵にタイムリーヒットを浴びた。内海は「左バッターはしっかり抑えて行きたいという組み立ての中で、打たれて失点してしまったのが、自分の中で心残り」と悔やんだ。内海はなんとか後続は打ち取り、最初失点で抑えた。

 

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(写真:5回2失点とゲームをつくった先発の内海)

 内海は5回には2死から一、二塁のピンチを招く。2番の横野聖奈にレフト前に弾き返され、追加点を許した。2点目を許した内海は続くバッターを歩かせ、塁を埋めた。これ以上の失点は致命傷になりかねない。それでもベンチの秋元監督は動かなかった。

「打たれているのも、単打が多かったので大崩れするとは思っていませんでした。ボールも悪くなかったですし、大きく乱れているという感じもしなかった。1試合完投ペースでいこうと思ってはいたので、いけるところまでいこうと」

 

 マウンドに駆け寄ることはあったものの、指揮官の信頼は厚かった。内海も意気に感じつつも「あまり燃え過ぎちゃってもダメですし、そこは冷静に目の前のキャッチャーミットに投げることに集中しました」とピッチングで応えた。4番の數原顕子をレフトフライに抑えた。昨季2部で5本塁打のスラッガーを封じて、打線の援護を待った。

 

 シオノギ製薬の岩田に無安打に抑えられ、2点を先行される重苦しい展開。この嫌なムードを振り払ったのは、前川綾菜だ。昨季は打率1割8分2厘と振るわなかったが、秋元監督が「意外性のある長打が魅力」と7番に据えた。身長147センチと小柄だが、パンチ力のあるバッターだ。2球目だった。センターオーバーのツーベース。チーム初ヒットで勢いを付ける。

 

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(写真:「夢に見ていた舞台だった」と日本リーグデビューを果たした樋口)

 続く打者がキャッチャーへのファウルフライに倒れると「追いつくにはここしかない」と秋元監督が動く。9番の金澤美優に代えて、ルーキーの樋口菜美を代打に送った。スタメンマスクの二宮と同期で、同じ園田学園女子大出身。秋元監督も「切り札中の切り札」というとっておきのカードだった。樋口は「代打で行くことは、前日と今日も告げられていました。それでアイコンタクトを取って、“次いくぞ”と。それでしっかりと準備していました」と振り返った。

 

 とはいえ日本リーグの初打席である。並みの新人であれば萎縮しかねない。樋口はモノが違った。「将来の4番候補」と期待を寄せられている右のスラッガーである。「任された仕事をしっかりやろうと思って。ボールに集中していました」とバッターボックスに入った。そして樋口は2ボール1ストライクから4球目、インコースの真っすぐを振り抜いた。高く舞い上がった打球を見つめながら、樋口はダイヤモンドを駆ける。そのままレフトスタンドに飛び込む起死回生の同点弾となった。

 

 采配がズバリ当たった秋元監督は「少し相手のバッターの目が慣れてきているのかなと感じた」と、ここでマウンドに木村久美を送る。二宮の代打で出場した池田千沙にもそのままマスクを被らせた。昨季チーム最多勝の木村は6、7回の2イニングをノーヒットに抑える好投を見せた。

 

 完全に流れを引き戻した伊予銀行。試合を締めくくったのは、1番に起用されていた對馬弥子だ。7回裏、2アウトとなり延長戦突入もチラつき始めていた。「最終回だったので、2アウトになった時点で一発行けたらいいなと。ストライクに入ってきたら、振り抜こうと思いました」と對馬。カウント2-2からバットを一閃した。打球はレフトスタンドへ一直線。2年目の對馬にとって日本リーグ初ホームランが、サヨナラ弾となった。

 

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(写真:ヒロインインタビューに答える對馬)

 新たにトレーニングコーチとして四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスの殖栗正登トレーナーを招聘した効果が早速表れたかたちだ。冬場、体力づくりに励んでおり、對馬も「チームとしてすごく練習をやってきたので、筋力や技術的な面も上がりました」と手応えを口にしている。

 

 劇的な逆転勝利で開幕戦をスタートした伊予銀行。1部に上がって3年連続での開幕戦白星だ。「序盤から点を取って、自分たちのペースで試合をするのが、理想でした。ただそうならなかった時にでも、こうやって勝てたのが大きいなと思います」と秋元監督。理想的な試合展開ではなかったが、チームが波に乗るには十分だろう。内海、二宮のバッテリー。初ヒットを放った前川に、同点弾の樋口、サヨナラ打の對馬は、秋元監督が開幕前に期待する選手に挙げていた。

 

 次戦の第1節は5月7、8日の2日間、愛媛・坊っちゃんスタジアムで2試合行う。日立サンディーバ、NECプラットフォームズRed Falconsを地元で迎え撃つ。

 

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