2015~2016年の欧州主要リーグも、残り1試合を残すのみとなった。

 今シーズン最大の衝撃は何といっても、イングランド・プレミアリーグ史上最大のジャイアントキリングと呼ばれるレスター・シティ奇跡の優勝だろう。

 

 

「残留」を現実的な目標に掲げてスタートしながら、あれよあれよの快進撃。クラウディオ・ラニエリ監督のもと「堅守速攻」のスタイルを完成させ、ハードワークを土台にした「最後をやらせない守備」「最後をやり切る攻撃」によって快挙を達成した。英ブックメーカーのウィリアムヒルによる開幕前の優勝オッズは5001倍だったとか。チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティという“金満クラブ”を蹴散らしての優勝に、イングランドのみならず世界が熱狂した。

 

 優勝の立役者にはプレミア記録の11試合連続ゴールを打ち立てた29歳の遅咲きのエース、ジェイミー・ヴァーディや日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督がアルジェリア代表監督時代に育て上げたリヤド・マフレズなどが挙げられる。しかし、岡崎慎司の活躍を抜きには語れない。「堅守速攻」のキーマンであり、相棒ヴァーディを補佐する働きは辛口で鳴る英メディアもうならせた。3月14日のニューカッスル戦で決めた見事なオーバーヘッドキックは、チームの勢いを象徴したものだった。英国のデービッド・キャメロン首相まで「オカザキの活躍は素晴らしい」とコメントしている。

 

 既に優勝を決めているレスターの最終節(15日)の相手はチェルシー(アウェー)。実はこの試合、岡崎にある記録が懸かっているという。それはプレミアリーグの途中交代記録。5月7日のエバートン戦、後半17分に交代してこれで25試合目となり、プレミア記録にあと「1」まで迫った。一見、地味な記録のように思えるが、自分の力を余すことなく表現しようとしてきた「全力」の証とも言える。一番見たいのはゴールであるものの、ここまで来たらプレミア記録にぜひ並んでもらいたい。

 

 日本人の奮闘が目立つブンデス

 

 ドイツのブンデスリーガはバイエルン・ミュンヘンがリーグ史上初の4連覇を達成した。ジョゼップ・グアルディオラ監督は今季で退任することになるが、ユップ・ハインケス監督からバトンタッチを受けて3シーズン、圧倒的な強さを見せた。残り1試合(14日)は既に降格が決まったハノーファーとの一戦。ペップバイエルンがどう最後を締めくくるのか、注目したい。

 

 日本人選手にスポットライトを当てると、運命を分ける最終戦となるのがフランクフルトの長谷部誠だ。7日、香川真司が所属する2位のドルトムントに1-0で勝利して15位に浮上。長谷部は決勝点をアシストする活躍だった。チームは3連勝をマークしてついに降格圏を脱し、最終戦では勝ち点1差で16位にいるブレーメンと直接対決する。引き分け以上で「自力残留」が成立するだけに、好調を維持する長谷部の奮闘が命運を握ると言っても過言ではあるまい。

 

 またヘルタ・ベルリンの原口元気にも注目したい。一時はUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を狙える位置にいたものの、リーグ終盤に失速して6位まで転落。勝ち点49でマインツ(5位)、ヘルタ、シャルケ(7位)が並んでおり、UEFAヨーロッパリーグ(EL)にストレートインするためには5位を確保しなければならない(今シーズンは6位がプレーオフ、7位が予選3回戦に回る)。その最終節の相手が5位のマインツ。武藤嘉紀がケガでチームを離脱しているため日本人対決は実現しないが、日本代表に定着するなど今季飛躍した原口には、有終の美を飾ってもらいたいものだ。

 

 リーガ・エスパニョーラ、白熱の優勝争い

 

 イタリアのセリエAも、ユベントスがリーグ5連覇を決めている。アンドレア・ピルロ、カルロス・テベス、アルトゥール・ビダルというチームの軸が移籍したことで10節を終えて12位と低迷。「ユベントス時代」に陰りが生まれるかと思いきや、調子が上がらなかったのは序盤戦のみだった。守護神のジャンルイジ・ブッフォンを中心にした安定のディフェンス陣が支え、シーズン途中に15連勝をマークした。ブッフォンは974分間無失点をマークしてセリエA記録(93-94シーズンにACミランのセバスティアーノ・ロッシの929分間)を塗り替えている。14日の最終節は、ホームでサンプドリアとの一戦。絶対王者ユーベの強さを目に焼きつけておきたい。

 

 そして主要リーグで唯一、優勝が最終節までもつれこんでいるのがスペインのリーガ・エスパニョーラである。ラスト1試合を残して1位バルセロナが勝ち点88、2位レアル・マドリードが同87、3位アトレティコ・マドリードが同85。事実上、バルサとレアルのマッチレースとなった。

 

 両チームとも好調だ。バルセロナは8日、エスパニョールとの“バルセロナダービー”で5発快勝。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの「MSN」がいずれもゴールを挙げ、チームのムードも最高潮だ。

 

 対するレアルも負けてはいない。バレンシア戦でエースのクリスティアーノ・ロナウドが2ゴールを挙げて3-2で勝利。これでリーグ戦11連勝となり、レバンテに敗れたアトレティコと入れ替わって2位に浮上した。15日の最終戦、バルサはアウェーでグラナダと対戦。レアルはアウェーでデポルティーボ・ラコルーニャと戦う。勝てば自動的に優勝となるバルサが有利ではあるものの、重圧がないのはむしろレアルのほうだろう。目の離せない最終戦となる。

 

 マニアックなカードが目白押し

 

 今季はシーズンが終わってからも戦いが続くことになる。

 欧州で4年に1度のUEFAユーロ2016が開催される一方で、南米も2年連続でコパアメリカが6月4日に開幕を迎える。コパアメリカが超異例とも言える2年連続の実施となったのは、今年が大会100周年のメモリアルイヤーとなるためだ。初の米国開催で北中米カリブ海からは米国、メキシコなど6カ国が参加し、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、ウルグアイら南米勢と合わせて計16カ国が出場する。

 

 グループ分けは以下のとおり。

グループA……米国、コロンビア、コスタリカ、パラグアイ

グループB……ブラジル、エクアドル、ハイチ、ペルー

グループC……メキシコ、ウルグアイ、ジャマイカ、ベネズエラ

グループD……アルゼンチン、チリ、パナマ、ボリビア

 

「死の組」と言えるが、グループAだろう。どこが上がってきてもおかしくないだけに熾烈な戦いが予想される。

 

 記念すべき100周年大会で栄光をつかむのは果たしてどのチームか。

 

 なおスカパー! では5月29日よりコパアメリカチャンネル開局!

コパアメリカ センテナリオUSA2016 全32試合を生中継する。

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※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。


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