30日、セ・パ両リーグ同時開幕でプロ野球の2012シーズンがいよいよスタートする。ダルビッシュ有、和田毅、岩隈久志、青木宣親、川崎宗則と各チームの主力が海外に渡り、セ・リーグに関しては6球団中3球団で指揮官がかわり、予告先発が導入された。今季、果たしてペナントレースを制するのはどのチームか。各球団の戦力を分析しながら、順位予想をした。
 真の力を試されるエース候補の摂津

<パ・リーグ>
1位 埼玉西武
2位 福岡ソフトバンク
3位 千葉ロッテ
4位 オリックス
5位 北海道日本ハム
6位 東北楽天


 昨季は福岡ソフトバンクが2位・北海道日本ハムに17.5ゲームもの差をつけてリーグ優勝を達成したパ・リーグだが、今季は混戦必至という予想が大半を占めている。その最大の理由はソフトバンクの投手事情への懸念だ。周知の通り、メジャー入りした和田、巨人に移籍した杉内俊哉とホールトンが挙げた昨シーズンの勝利数は、88勝のうち実に43勝にものぼる。この大きな穴を、どう埋めるのかが今季のソフトバンクのカギを握っていることは間違いない。エースとしての第一候補は昨季、中継ぎから先発に転向し、14勝を挙げた摂津正だが、他球団が彼を研究し、対策をたててくることは容易に想像できる。さらにエースとしての重責ものしかかる今季、精神的負担は昨季までとは雲泥の差である。だが、その半面、摂津にとっては不動のエースとしての道を切り拓くチャンスでもある。さまざまなプレッシャーがふりかかる中、どんなピッチングを見せてくれるのか、注目したい。中継ぎには森福允彦、抑えにはファルケンボーグが健在。打線は川崎宗則が抜けたものの、コマの充実ぶりは群を抜いている。それだけにやはり先発投手次第と言える。摂津のほか、4年ぶりに開幕ローテーション入りした新垣渚の復活、貴重な左の山田大樹やオープン戦で防御率0.00を誇った岩崎翔ら若手の飛躍が望まれる。

 そのソフトバンク以上に、優勝に近い存在として挙げたいのが埼玉西武だ。投手陣は先発に涌井秀章、岸孝之に加えて、昨季クローザーとして22セーブを挙げ、新人王に輝いた牧田和久、さらに西口文也、石井一久もおり、若手、中堅、ベテランと先発陣はバランスの良さが光る。ここに開幕一軍入りは果たせなかった新人の十亀剣が合流すれば、強固なローテが組めるはずだ。中継ぎは揃っているだけに、あとは抑えの新外国人ゴンザレスが機能するかにかかっている。打線は片岡易之が開幕に間に合わないものの、中島裕之、中村剛也と強打者は健在。若手の浅村栄斗の台頭もあり、広島から移籍の嶋重宣がうまくはまれば、得点シーンの増加が見込まれる。いずれにせよ、投打のバランスが最もいいチームに仕上がっている。

 3位には昨季最下位に沈んだ千葉ロッテを推したい。その理由は先発投手陣の充実ぶりだ。昨季2ケタを挙げた成瀬善久と唐川侑己のほか、新人の藤岡貴裕にもローテーションの柱として期待が寄せられる。また、日本プロ野球で実績のあるグライシンガーも加入し、層の厚さが増した。後ろには守護神・薮田安彦が控えており、中継ぎが安定すれば、盤石な投手リレーが可能だ。打線は岡田幸文、伊志嶺翔大、荻野貴司と俊足揃い。井口資仁、里崎智也、今江敏晃、清田育宏ら長打力のある打者が上位から下位まで並び、どこからでも得点することができる。故障者さえ出なければ、得点能力の高さは他球団にひけをとらない。

 3年連続Bクラスのオリックスだが、今季はAクラスの可能性は十分にある。打線には韓国プロ野球で2度も三冠王に輝いた李大浩が加わり、T−岡田との主砲争いはチームの底上げとなる。巨人から移籍した高橋信二も加わり、パワフルな打線が実現した。昨季最多安打の坂口智隆がいかにチャンスをつくれるかがポイントとなりそうだ。投手陣も新外国人ミンチェ、平野佳寿、岸田護の新勝利の方程式「MHK」を築き、盤石な体制だ。だが、先発の層の薄さには不安が拭いきれない。エース金子千尋は開幕に間に合わず、中山慎也もオープン戦では不安定さを露呈している。寺原隼人への期待が寄せられるが、やはりエースの早期復活、それに続く選手の台頭が望まれる。28日には井川慶の入団が発表されたが、その働きは未知数だと言わざるを得ない。逆に言えば、先発への不安が解消されれば、上位浮上の可能性は十分にある。

 ともに先発の主力が抜けた北海道日本ハムと東北楽天は、難しい戦いを強いられそうだ。日本ハムは開幕投手に斎藤佑樹を指名したが、現在の斎藤にエースとしての期待を寄せるのはあまりにも酷だ。今回の開幕投手への抜擢は新指揮官の栗山英樹監督が将来を見据えてのものであることは想像に難くない。いずれも2ケタ勝利をマークした武田勝、ケッペル、ウルフがローテーションの3本柱として、どこまで勝ち星を挙げることができるかがカギを握る。また、稲葉篤紀を2番に起用した打線がどう機能するかにも注目だ。一方、楽天は田中将大がエースの座を確立し、今季の活躍も期待できる。だが、昨季まで岩隈と二分した負担が一気に田中一人にのしかかる状態が続けば、シーズン後半でブレーキがかかる恐れもある。阪神から移籍した下柳剛や2年目の塩見貴洋など、いかに田中の負担を減らすことのできる投手が出てくるか。

 広島、15年ぶりのAクラス入りなるか!?

<セ・リーグ>
1位 巨人
2位 中日
3位 広島
4位 東京ヤクルト
5位 阪神
6位 横浜DeNA


 一方、セ・リーグの優勝候補筆頭には、やはり大型補強をした巨人を挙げたい。特に最多勝の内海哲也、同新人王の沢村拓一に、杉内、ホールトンが加わった先発ローテーションの充実ぶりには目を見張る。中継ぎには安定感抜群の山口鉄也が健在。打線も横浜から村田修一が加わり、長野久義、阿部慎之助と組むクリーンアップはパワフルだ。また、新外国人ボウカーにも期待したい。変化球への対応力が高く、長打力もあるボウカーが2番に座る打線は、脅威だ。下位には小笠原道大、高橋由伸と実勢のあるベテランがおり、まさに切れ目のない打線だ。抑えの久保裕也が昨季並みの活躍ができれば、3年ぶりのリーグ優勝へ向けて独走する可能性もある。

 中日のAクラス入りもほぼ間違いないだろう。チェンが抜けたとはいえ、投打ともに戦力は昨季とほとんど変わっていない。古巣復帰の川上憲伸、山崎武司や、昨季は一度も一軍登板のなかった山本昌といったベテラン勢が活躍すれば、逆にチーム力はアップする。最も気になるのは、指揮官が代わったことによる選手のモチベーションだ。主力の大半を占める中堅・ベテランが若手をしっかりと牽引したい。

 今季、最もチームの躍進が期待されるのが、広島だ。前田健太、福井優也、バリントン、カムバックした大竹寛に加え、新人の野村祐輔が加わった先発陣は魅力的だ。とはいえ、打線は大量得点を見込むことはできない。機動力をいかし、チャンスを確実にモノにするという戦い方は変わらない。それだけにロースコアでの接戦となることが予想される。先発投手が最少失点に抑えることはもちろん、欠かせないのは僅差を死守する抑えだ。昨季、リーグ2位の35セーブを挙げたサファテだが、シーズン途中でヘルニアのために帰国している。果たして今季は1年間、投げられるのか。

 昨季、終盤で故障者が相次ぎ、優勝を逃した東京ヤクルトは、石川雅規、館山昌平、由規、村中恭平と先発陣のコマは揃っている。故障さえなければ、安定したローテを組むことができる。だが、不動の守護神・林昌勇がオープン戦での不振を理由に2軍で開幕を迎えることになり、その穴をどう埋めるかが注目だ。バーネット、松岡健一が有力候補と見られているが、いずれにせよ守護神の早期復活が待たれる。

 ともに指揮官がかわった阪神と横浜DeNAは、メンバーの顔触れは変わっておらず、新監督がチームにどんな影響をもたらすのかが楽しみだ。阪神は城島健司とブラゼルのファースト併用が注目だ。長いシーズン、少なからず調子の良し悪しはある。両者ともにパワーは群を抜いており、調子のいい方を先発で起用し、先発に入らない方がチャンス時の代打で起用されることも十分に考えられる。併用がうまくはまれば、打線は活気づく。一方、横浜は打線の中心として期待された筒香嘉智やラミレスの故障が痛いが、若手に最もチャンスのあるチームと言っていい。中畑清新監督の勢いがチームに浸透し、“負け癖”を払拭できれば、台風の目となる可能性もある。