“チームの勝利のために貢献したベストプレー”に贈られる「ジョージア魂」賞が今季で3年目を迎え、29日、新選考委員が発表された。新しくメンバーに加わるのは衣笠祥雄氏(元広島)、梨田昌孝氏(元近鉄)、工藤公康氏(元西武)の3氏。また山田久志氏(元阪急)、小林光男氏(週刊ベースボール編集長)に加え、当HP編集長の二宮清純が昨季に引き続き、選考委員を務める。都内ホテルで開かれた会見では、衣笠氏が「ファンの目線で選ぶ賞。ファンの方が失望しないようなプレーを探したい。プロの定義は1年間、コンスタントに力が発揮できるか。最大の目標である日本一に向かって、どこまでチームに貢献できるかという視点で選考したい」と抱負を語った。
(写真:左から工藤、衣笠、山田、梨田の各選考委員)
 この賞は缶コーヒーブランド「ジョージア」がプロ野球12球団と提携、さらにNPBパートナー契約を締結して2010年より創設された。今季もシーズン中、2週間に1度、計12回に渡って表彰される。選考委員によってノミネートされた6プレーのなかから、「ジョージア ベースボールパーク」のサイト内でファン投票を実施し、最も多くの票を集めた選手のプレーが賞に選ばれる。また全12回の受賞プレーから、シーズン終了後に、さらにファン投票を行い、年間大賞を決定。6名の選考委員によって選考委員特別賞も選出する。10年の「ジョージア魂」賞年間大賞には阪神・城島健司選手、11年の同賞には東北楽天・田中将大投手が輝いている。

 会見では各選考委員がノミネート基準を発表。今季から新たに選考委員となる梨田氏は「キャッチャーはピッチャーと比べて目立たず、割が合わないポジション。配球にもクローズアップしていきたい」とキャッチャー出身者らしい見方を披露した。昨季、現役を引退したばかりの工藤氏は「投手は投げるだけではない。守備やバックアップの部分もノミネート対象にしたい。ピッチャーは気迫を持ってバッターに向かっていないと抑えられない。気迫を前面に出した顔を見たい」と語った。さらに「僕もコーヒーが大好き。この賞を獲れなかったのは残念だった。プレーも大事だが、コーヒーをいつも飲んでいる選手はひいきしたい」と付け加え、会場の笑いを誘った。

 創設時より選考委員を務める山田氏は2年間の選考を踏まえ、「どうしても先発、抑えに目がいくが、現代野球で大事なのは中継ぎ。中継ぎをクローズアップするのが、目立たなくてもチームのために貢献したプレーを表彰する、この賞にふさわしい」と、今季のポイントを掲げた。これには衣笠氏も「勝っている試合ではなく、劣勢の展開で出てくる2番手、3番手の中継ぎが大事。優勝するには、先行逃げ切りだけでなく、劣勢で踏ん張って打線が終盤に逆転する試合も必要になる。そういうところにも注目したい」と応じた。

 開幕前日とあって、話題は今季の順位予想、注目選手にも及んだ。プロ野球OBの4名の選考委員の予想ではセ・リーグは山田氏を除き、3氏が巨人を1位予想。山田氏は「私も経験があるが連覇は難しい。戦力的には少し劣るが連覇すると自信がつく」と中日を1位に推した。評価が分かれたのはパ・リーグ。工藤氏、衣笠氏が埼玉西武を1位とした一方、山田氏はオリックスを支持。「他のチームが戦力ダウンするなか、オリックスは補強も抜群。(先日入団が決まった)井川(慶)は(球団の)OB会長として“獲らなくてもいい”と言ったほど。それくらい戦力が充実している」と理由を語った。

 梨田氏は「ソフトバンクと西武はシーズン終盤の戦いに選手が慣れている」と福岡ソフトバンク、西武を1位、2位に並べた。これに反論したのが工藤氏だ。「ソフトバンクは(FA移籍した)帆足(和幸)の調子が上がらないし、小久保(裕紀)、松中(信彦)、(アレックス・)カブレラの3人が同時には使えない。多村(仁志)も144試合全部出るのは難しいと思う。彼らは試合に出て調子を上げるタイプなので、実力を出し切れないのではないか。川崎(宗則)が抜けた1、2番もクエスチョン」と次々、不安材料を指摘。ソフトバンクはBクラスに転落すると予想した。

 また注目選手で多くの選考委員から名前が上がったのが、千葉ロッテのドラフト1位左腕・藤岡貴裕だ。「見た目より球に威力がある。大きな戦力になる」(山田氏)、「球に角度がある」(梨田氏)、「キャッチボールを見ていても、ボールが垂れない。ずっと見ていたいと思う素材」と高い評価を下した。今季の第1回「ジョージア魂」賞は4月22日にノミネート6プレーが発表され、同日からファン投票が開始される。