クリスティアーノ・ロナウドはやはり“持っている男”だ。

 

 佳境に入ってきたEURO2016。6日には準決勝の1試合が行われ、ポルトガルがウェールズを2-0で下して決勝に進んでいる。ポルトガルのエース・ロナウドは後半、ショートコーナーからのボールをヘディングで合わせて先制し、EURO通算9得点。元フランス代表のミシェル・プラティニの持つ最多得点記録に並んだ。その後はナニの追加点をアシストするおまけつきで、ポルトガルの3大会ぶりのファイナル進出に大きく貢献したのである。

 

 それにしてもタフである。

 今シーズン、欧州チャンピオンズリーグ決勝まで目いっぱい働いたうえで、EUROに出場。PKを外したオーストラリア戦など低調なパフォーマンスでスタートしたものの、チームとともに尻上がりで調子を上げてきた。

 

 準決勝までの6試合、すべてフルタイムで出場している。グループリーグ最終戦のハンガリー戦から中2日で臨んだ決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦、そして準々決勝のポーランド戦はいずれも延長戦に突入して120分間プレーしているのに、疲れを感じさせないのだからすごい。

 

 そして彼にはサッカーに対する根っからの情熱を感じる。

 ポーランドとのPK戦では味方がゴールを決めるたびに吠えたり、ガッツポーズを繰り返す彼の表情をテレビカメラが捉えていた。ギラギラ感全開のその姿が、仲間を奮い立たせていたのは間違いなかった。

 

 タフで、情熱的で。

 

 2年前、“クリロナ通”でもある元日本代表ストライカーの播戸竜二(大宮アルディージャ)に彼の魅力を語ってもらったことがある。

「僕は“天性”という言葉で片づけたくはないですね。もちろんロナウドにも、ジダンやメッシのように人が真似できないものはあると思いますよ。でもそれよりも、体を鍛えまくって、バランスを良くして、筋力を増やして……その結果として常識を超えるプレーが生み出されているように感じています。一切、手を抜かへんと思うし、一切の甘さを排除してしんどいことを継続してやり続けている。決して自分に満足しない人やから、やれるんでしょうけど。

 すべてはサッカーに懸ける情熱なんでしょうね。モチベーションを高く、それも長くいつまでも持続できる。これも簡単なことじゃないですよ。ターンオーバーで他のメンバーが休んでいても彼だけは試合に出て、それもメチャクチャ張り切ってやっている(笑)。欧州CLのシャルケ戦(2014年2月)もファーストレグで6-1というスコアなのに、セカンドレグにも先発してアイツは2点取っていますからね」

 

 常識を超えるための努力。

スーパースターになっても満足することなく、妥協なくサッカーにすべてを注いできたからこそ今の彼があると言っていい。サッカーに対するロナウドの姿勢は、日本の将来を担う若い選手たちにも学ぶべき点がたくさんあるように思う。

 

 ロナウドは12年ぶりとなる決勝に臨む。

 母国開催だったEURO2004は決勝でギリシャに敗れ、19歳だった彼は悔し涙を流した。努力を重ね、情熱を注いだ12年。円熟を迎えたスーパースターは最高の舞台でどんなプレーを見せてくれるのだろうか。


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