皆様、こんにちは! セ・リーグファンの方々には申し訳ありませんが、今年もパ・リーグが圧勝の交流戦でした。昨年の日本シリーズの初戦を見たときに、あまりの力の差に「セ・リーグはパ・リーグに勝てない」と周囲に断言しましたが、そのときと状況は変わっていないようです。これから何年もこの状態が続かないよう、セ・リーグのチーム編成の方々には頑張ってもらって「育つ」選手を取って欲しいものですね。


 さて今回はこれまでのセカンドキャリアの話は一休みして、審判について書かせて頂きます。


 最近、スポーツ新聞やニュースを見るとやたらと審判批判が目につきます。
「審判の資格制度を作れ!」「ヘタすぎる」「こっちは人生がかかってるんだからしっかりしろ」などなど、痛烈な批判が多くとても読むに堪えません。
 そもそもどうして審判批判をするのでしょうか。審判の批判をして楽しいのかなと思ってしまうし、何を言っても結果は変わらないと理解しているならそれが無駄なことはわかると思うのですが……。

 

 今季から採用されたコリジョンルールひとつとっても、常にルールが適用され不利になったチームの監督やコーチがルール批判を痛烈に行っています。反対に有利になったチームの方はだんまりです。
 例えば、ある試合の幕切れ(現実にあった試合の話ですが個人を攻撃するつもりはないのでチーム名は出しません)は、コリジョンルールが適用され、サヨナラゲームとなりました。ニュースや翌日の新聞では、負けた側からのルール、そして審判への批判ばかりが目につきました。しかし、勝った方のコメントはほとんどありません。
 有利になったから言わない、不利になったから言う。これではルールへの論点が変わってきてしまい、ただの感情論にしかならない気がします。

 

 コリジョンルールの運用が不透明でもっと検証を重ねるべき必要があったとしても、それはもう決まり事としてルールになっているのだから、自分のチームに有利になる場合もあるし、不利になることもある。そう受け入れる必要があるのではないのでしょうか。有利な判定だと黙って、不利な判定になったら騒ぐ。そんな風に一喜一憂するのは人の上に立つ人間としてどうなのかなと、とても疑問に思ってしまいます。

 

 そしてもうひとつ気になることがあります。審判批判の内容を見ていると、現場の人たちは審判の方々を下の人間だと見下しているのではないかと思えてしまいます。だからこそ痛烈な批判が当たり前のようにできて、批判をした自分は全く悪くないという顔ができるのではないでしょうか。
 確かにミスジャッジはあると思いますが、そこは人間です。誰だってミスをします。その回数が多い審判もいるでしょう。だからと言って名指しで批判をしていいとは思えません。審判も与えられた職務を一生懸命に遂行しています。その中でのミスジャッジですし、彼らも当然査定があって、ダメなら審判を辞めないといけないリスクを背負ってやっています。

 

 そんなこともお構いなく、自分が面白くないから平気で批判をする。八つ当たりとしか思えないような言動もあります。指導者は選手たちに感情をコントロールすることを教えるべきなのに、自分が感情をコントロールできない。そんな指導者に誰が信頼して付いていくのでしょうか。審判の資格制度を作る前に、プロ野球の指導者資格制度を作る。これの方が先決でしょう。それもかなり勉強しないと取れない資格制度を作って欲しいものです。
 皆さんはご存知ないと思いますが、試合中、監督を筆頭にして審判に暴言を吐きまくり、そのせいでストライク、ボールなどの判定をするのが怖くなり、何人もの審判が鬱になってその職を諦めているという現状があります。そんな話を聞いたとしても現場の人間たちは「あいつはヘタだから仕方ない」と知らん顔で、鬱にまで追い込んでしまって申し訳ないという気持ちなど微塵も持ち合わせていません。

 

 審判も同じ人間です。敬う気持ちを忘れず接して欲しいと切に願います。
 丁度この記事を書いている時に「コリジョンルールの見直し」というニュースを耳にしました。とても残念なニュースで仕方ありません。現場が文句を言うから、シーズン中に変更するではなく、シーズンを通してやってみて、終了後にすべてのプレーの検証をして、ルールを明確にし、そして来季キャンプでルール説明をし理解させる。
 選手だけでなく最後に審判の方々にも一言言わせてもらいます。威厳を持って、そして自信を持ってジャッジしてくださいね!

 

1600314taguchi田口竜二(たぐち・りゅうじ)
1967年1月8日、広島県廿日市市出身。
1984年に都城高校(宮崎)のエースとして春夏甲子園出場。春はベスト4、夏はベスト16。ドラフト会議で南海ホークスから1位指名され、1985年に入団し、2005年退団。現在、株式会社白寿生科学研究所人材開拓グループ長としてセカンドキャリア支援を行なっている。

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