11日(日本時間)、フランスでEURO2016の決勝が行われ、ポルトガル(FIFAランキング8位)がフランスを(同17位)1-0で下した。試合はホスト国フランスがボールを保持し続け、ポルトガルが耐える展開。90分を終えてもスコアレスのまま、延長戦に突入した。延長後半4分にポルトガルのFWエデル(リール)が先制点を決める。ポルトガルは最後までリードを守り切り、悲願のEURO初優勝を果たした。

 

 ロナウドが負傷交代も粘り勝ち(サンドニ)

フランス 0-1 ポルトガル

【得点】

[ポ]エデル(109分)

 

 2004年以来の決勝進出となったポルトガルが勝てば初優勝、フランスが勝てば2000年大会以来16年ぶりの優勝となる。最後に微笑んだのは苦しい展開が続いたポルトガルだった。

 

 まずはポルトガルがいきなりフランスゴールを脅かす。4分、フランスDF陣の裏を取ったFWナニ(フェネルバフチェ)にロングボールが渡った。ナニは胸でトラップすると、ペナルティーエリア付近から右足を振り抜く。惜しくも枠を捉えることはできなかったが、ポルトガルはスピードを武器に序盤からシュートを打っていった。

 

 一方のフランスも黙ってはいない。6分、こぼれ球をペナルティーアーク付近で拾ったMFムサ・シソッコ(ニューカッスル)が右足ボレーで合わせた。7分にはペナルティーエリア左サイドでボール受けたFWアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)が左足でシュートを放った。いずれも枠に飛ばなかったものの、開催国が徐々にペースを掴んでいく。

 

 10分、FWディミトリ・パイエ(ウェストハム)が左サイドからアーリークロスを入れると、ニアでグリーズマンがヘッドで合わせる。シュートはGKルイ・パトリシオ(スポルティング)が、ぎりぎりのところで弾いた。目下大会得点王の抜け目のない動きにポルトガルは冷や汗をかいた。

 

 さらに22分にはハーフウェーライン付近でボールを受けたシソッコが重戦車のような力強いドリブルでボールをゴール前へと運ぶ。そのまま自らが強烈な左足ミドルを放った。これはGKパトリシオが防ぎ、得点にはならなかった。

 

 押し込まれていたポルトガルは25分、悲劇に見舞われる。8分にパイエと激突し、左ひざを痛めていたFWクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)。2度の治療を行い、その度にピッチに戻ったが、プレー続行は不可能だった。FWリカルド・クアレスマ(ベジクタシュ)と無念の負傷交代を余儀なくされた。キャプテンでありエースでもあるロナウドは仲間に想いを託し、涙を流しながらピッチを後にする。

 

 ボールを回しながら攻撃を仕掛けるフランスだったが、引き気味に陣形を整えて耐えるポルトガルを崩し切ることはできない。後半13分、フランスのディディエ・デシャン監督が動く。パイエに代えて、FWキングスレー・コマン(バイエルン・ミュンヘン)を投入した。早速コマンが左サイドでボールを持つと、アーリークロスを送る。グリーズマンがヘッドで合わせるも、ボールはわずかに枠の上を通過した。30分にも左サイドからドリブルで切れ込んだコマンが、ペナルティーエリア内にいるFWオリビエ・ジルー(アーセナル)にラストパスを供給する。パスを受けたジルーは左足で強烈なシュートを打つが、GKに阻まれた。20歳の若きアタッカーがスピードを生かして、チャンスを作るがゴールは遠い。

 

 すると、今度はポルトガルが好機を得る。35分、右サイドからあげたナニのクロスがそのままゴールに向かう。フランスの守護神ユーゴ・ロリス(トッテナム)は意表を突かれながらも、何とかボールを掻き出した。こぼれ球をクアレスマがバイシクルシュートを放つが、すぐに体勢を立て直したロリスの正面だった。その後、ポルトガルはフランスにゴールを脅かされつつも、ポストに助けられる場面もあった。スコアレスのまま後半は終了し、ポルトガルにとって大会3度目の延長戦へと突入する。

 

 延長に入ると、好機を作ったのはそれまで我慢の時間帯が多かったポルトガルだった。5分にはセットプレーからDFペペ(レアル・マドリード)が頭で合わせるも、惜しくもオフサイド。14分にはDFラファエウ・ゲレイロ(ロリアン)がFKから直接ゴールを狙ったが、ボールはバーを直撃した。

 

 そして延長後半4分、ついに均衡は破れた。エデルがMFジョアン・モウチーニョ(モナコ)から縦パスを受ける。エデルは前を向き、マークを振り切ると、ミドルレンジから右足を一閃。一瞬の隙をついたシュートがゴール左に突き刺さった。ポルトガルが先制に成功する。

 

 残りの11分とアディショナルタイムもゴール前に壁を作り、守り切ったポルトガル。ついにEURO初制覇を決めた。今大会グループリーグでは3引き分けの3位で上がり、90分での勝利も準決勝のウェールズ戦のみ。決勝ではよもやのエースの負傷交代というアクシデントも乗り越えた。最後まで粘りに粘ったポルトガルが栄冠を手にした。

 

(文/大木雄貴)