1511kaga二宮: もうすぐリオデジャネイロオリンピックが開幕しますが、4年後には東京オリンピック・パラリンピックが控えています。政府が2020年の訪日外国人観光客の目標を4000万人に定めるなど、世界中の人々の来日が予想されています。

塚本: 実際に今も外国人観光客がすごい勢いで増えています。政府も力を入れていますが、足りないのはやはりホテルの数なんですね。宿泊料も高騰していると聞きます。これからオリンピック・パラリンピックまでの間は、東京都内も含めて日本全国でたくさんホテルが建てられていくでしょう。

 

二宮: 他にはどんな発展がみられるでしょうか?

塚本: ビジネス的に言えば、メディカル・健康・美容などの事業が伸びていくはずです。超高齢社会ですから介護施設もどんどん増えていくでしょう。我々としても次にくる産業を追いかけていく必要があると思います。

 

二宮: おっしゃるように日本は超高齢社会ですからね。2025年には団塊の世代が75歳以上になり、その数約2200万人とも言われています。

塚本: 3.11の東日本大震災から、環境関連のビジネスが注目されるようになりました。ソーラーシステムや節電システム、LED照明などです。これらがあっという間に大きなビジネスになってきましたよね。おそらく代替エネルギーを推進する動きも出てきますから、蓄電するという考えのもと、一般家庭の屋根にソーラーシステムをどんどん作っていくでしょう。そこに補助金も出していくようなビジネスが増えていくと思いますね。

 

二宮: エコ化が進んでいくと。自動車も電気で走るものが主流になるかもしれませんね。

塚本: そうですね。電気自動車になるとエンジン音がしません。そうすると、わざわざ車が近付いてきたことがわかるようなものが必要になってくるのではないでしょうか。例えば目の見えない人にとっては車が近付いてきていることが察知できないと危険ですからね。

 

 映像事業も目まぐるしく進化

 

二宮: オリンピック・パラリンピックは開催の度にいろいろなイノベーションが起こります。たとえば1964年の東京大会は、選手村の警備から今の警備会社の創業や発展につながりました。その他にも選手村や政府要人のために冷凍食品を活用し、それが食品産業でも広まっていったと。2020年はエレクトロニクスの業界的にどのような進歩をもたらすのでしょうか。

塚本: まずセキュリティ関連の事業は間違いなく伸びていくでしょうね。顔認識をするシステムなどが、ものすごく増えていくと思いますよ。いわゆるセキュリティ用のカメラモジュールです。自動車にもCMOS(シーモス)センサーを前後左右に7、8個付け始めていますからね。飲料の自動販売機にもカメラモジュールを組み込んで、セキュリティを強化することもできます。そういう新しいビジネスチャンスが、オリンピック・パラリンピックに向けて増えていく気がします。

 

1511kaga3二宮: 確かにテロ対策など、安全面での環境整備は必須でしょうね。

塚本: ええ。新しく作るものには当然組み込んでいく。既に設置されている機器に関しては外付けでカメラを設置することはできます。安全、安心に繋がるための商品は今度もどんどん開発されていくでしょう。

 

二宮: オリンピック・パラリンピックの準備段階で続々とスポンサーが決まっています。加賀電子の取引先の多くもスポンサーになっていますよね。

塚本: そうですね。そういう意味で我々は間接的にお手伝いをする機会が増えていくでしょうね。

 

二宮: やはりエレクトロニクスという媒介を通して様々な企業と繋がっていくと。

塚本: オリンピック・パラリンピックのオフィシャルスポンサーやオフィシャルパートナー以外でも、セキュリティ関連で携わっているものもあります。例えば、警察などの取り調べも可視化されるようになり、撮影されるようになりました。そうすると画像データを改ざんできないようなソフトの入ったカメラが必要になる。そのためのカメラや、半導体のモジュールを我々は扱っています。

 

二宮: 映像ビジネスということでしょうか。

塚本: そうです。他にもNHKさんとタイアップしてやっているのが、デジタルの編集機です。これまでだったら、撮る人と編集する人と、スタッフを何人も用意して行かなければいけなかった。それを1人で撮って1人で編集し、すぐ放送できるという時代になりましたから。

 

二宮: それはすごいですね。カメラマン、ディレクターと1人でできてしまうわけですね。前回の東京オリンピックではスローモーションが初めて採用されました。また2020年も映像上のイノベーションがあるのではないかとも言われています。

塚本: 今もテレビも4Kが市場に出回っていますが、8K放送も近付いてきていますよね。そうなると買い替え需要も当然出てくるだろうし、まだコストは高いですが、量を作れば安くできますからね。我々が直接テレビを売り出すわけではありませんが、その中身は担当しています。間接的には繋がっているので、ビジネスチャンスはあるでしょうね。

 

 世界の秋葉原に拠点を置く

 

二宮: ゴルフの事業も手掛けられていますが、今のドライバーはよくしなりますし、飛ぶ印象があります。カーボンやチタンを使ったりして、こちらもすごく技術革新をしていますよね。

塚本: そうですね。だから最近は、高年齢になっても打球を飛ばしたいという人が改めて高反発のグラブを買い直したりしますね。正式な競技大会に出るわけではない。プライベートでやる分には構わないので、実際に高反発が売れているんですよ。我々はゴルフの事業に携わっているからそれが分かるんですよ。

 

二宮: 技術革新という点では秋葉原はその中心にあるまちと言ってもいい。加賀電子はここに本社を置いています。

塚本: まぁそうですね。「世界の秋葉原」と言われているぐらいですからね。確かに情報は集まりやすいです。

 

DSC09240二宮:  昔はアメ横みたいなイメージがありました。

塚本: 秋葉原だけでもすごい勢いで変わりましたしね。我々も限りなく秋葉原に近いエリアでビジネスはしてきました。最終的に秋葉原に本社を作って、このまちに戻ってきたわけですが、隔世の感がありますよね。

 

二宮: 僕らが学生の頃はいろいろな部品が売ってあり、よく買いにきましたよ。

塚本: 露天商みたいなところから、独立して別の場所でやるようになった店もありますが、昔のままで1つのところに部品を並べて売っているラジオストアとかラジオデパートもいまだにあるんですよ。マニアの方だと“自分で組み立てたい”“パソコンを自分で作りたい”という思いがありますからね。そういうお客さんがいる限りはなくならないでしょうね。

 

二宮: オタクの聖地と言われていますからね。

塚本: そうですね。電子部品も真空管がトランジスタに変わって、トランジスタがICになって、ICが超LSIになった。その変化によってスマホひとつで、電話ができてテレビが見られる。ラジオも聞けて、カメラが撮れるし、コンピューターの機能もある。それほど技術変化が激しいわけですよね。

 

二宮: まさに日進月歩なわけですね。貴重なお話しありがとうございました。今度は会長のお好きな“19番ホール”で語り合いましょう。

塚本: わかりました。ぜひ18ホールをラウンドして、“四角いグリーン”で戦いましょう。