日本自転車競技連盟は4日、ロンドン五輪の男子マウンテンバイクの日本代表に山本幸平(スペシャライズドレーシングチーム)、女子ロードレースの代表に萩原麻由子(サイクルベースあさひレーシング)をそれぞれ選出したと発表した。山本は2大会連続の出場、萩原は初の大舞台となる。都内で会見に臨んだ山本は「レース時間の1時間30分〜45分の間、4年間のたまった思いをすべて出してゴールできれば」と意気込みを語った。
(写真:五輪での健闘を誓う(左から)萩原、中野浩一強化委員長、山本)
 マイヨ・アルカンシエル(虹色のジャージ=世界選手権覇者へ与えられる)へ布石を打つ五輪だ。
 マウンテンバイクの山本は国内では無敵の強さを誇る。3日に長野県で実施された全日本選手権では5連覇を達成。昨年の世界選手権では日本人過去最高の23位に入るなど、国際自転車競技連合のランキングでは26位につける。欧米勢がひしめく同種目では日本で唯一、世界と戦える選手だ。

 初出場の北京五輪では46位。トップから周回遅れとなり、完走扱いにならなかった。「ただ参加しただけのレースになって不完全燃焼だった。自分に悔しかった」と振り返る。それだけに、この4年間は世界といかに戦うかに集中してトレーニングを続けてきた。

 数年後に世界のトップを争うレーサーを目指している。今年からは拠点をスイスからフランスに移し、所属をスペシャライズドレーシングチームに変更した。同チームは世界チャンピオンも擁する強豪。世界のトップ選手と身近に接することで「世界チャンピオンはオンオフのメリハリのつくりかたがうまい。世界チャンピオンが一番レースに向けて追い込んでいる」と大いに刺激を受けた。
 
 ロンドンのコースは昨年のテストイベントで走った。欠場した選手もいたとはいえ、6位入賞を収めている。「ハイスピードのレースになる。登り区間が短く、一気に登り切るパワーが求められる」と、その印象を語る。
「トップ3はイメージできないが、1ケタ台の順位は思い描ける。本気で狙いたい」
 兄・和弘らの影響で小学生の頃から競技を始めた。日本選手権でもワンツーフィニッシュを飾った兄は、残念ながら五輪出場権を得られなかった。「2人で勝ちとった切符。兄の思いを持って走る」とロンドンをさらなるステップアップの場にするつもりだ。

 25歳の萩原は最後まで諦めない気持ちがロンドン行きへとつながった。2月のアジア選手権では自身も28位に沈み、日本は出場枠を確保できず。五輪出場へ厳しい立場に立たされた。しかし、周囲の助けもあり、4月にタイで開催された国際自転車競技連合公認のレースに参加。ここで総合2位に入ってランキングを上げ、滑り込みで出場権を獲得した。

 鹿屋体育大時代の06年、アジア選手権で優勝したものの、直後の練習で転倒し、左の骨盤を骨折。完治に半年かかり、北京五輪には出られなかった。全日本選手権では10年から3連覇を収めるなど国内では第一人者だが、世界ランキングは92位。世界の壁は厚く大きい。ロンドンのコースについても「スプリンター有利で、街中に入るとテクニックを要求される」と苦戦を覚悟している。

 だが、「ただ走るだけではなく、何か動きを起こして、世界でどこまでできるのかチャレンジしたい」と本人は意欲的だ。「五輪の結果で今後も変わってくる。五輪に出て、ようやく競技生活のスタートを切れる」。ロンドンをきっかけに、世界の舞台に打って出る大会にしたいと萩原は考えている。

 萩原が参加する女子ロードレースは7月29日、山本が出場する男子マウンテンバイククロスカントリーは8月12日に行われる。