台湾プロ野球で大活躍をみせている日本人投手がいる。元東京ヤクルト、東北楽天の鎌田祐哉だ。昨オフ、戦力外通告を受けて海を渡り、統一セブンイレブン・ライオンズに入団すると、今季は開幕から連戦連勝。6月12日現在、リーグダントツトップの11勝0敗、防御率1.42という好成績で、チームの前期制覇に大きく貢献した。ここまで早くも月間MVPを2度(3月、5月)受賞している。日本では伸び悩んだ右腕は、台湾で何をつかんだのか。二宮清純が現地へ渡り、本人に訊いた。
二宮: 日本では11年間で14勝(17敗)でしたから、今季は1年でその勝ち星を上回りそうな活躍です。台湾に来て、何か変わった部分があるのでしょうか。
鎌田: ボールが速くなったり、変化球が良くなったりといったところでの変化はないと思います。実は昨季は1軍に上がれませんでしたけど、調子は悪くなかった。その流れで投げられているのが好調につながっているのかもしれません。何より、ここでずっとローテーションで投げさせてもらって、周りから信頼されていることが力になっていますね。自分がやらなきゃいけない立場にいるのは大きいと感じます。

二宮: 試合に出続けることがプラスになっていると?
鎌田: はい。ローテーションで投げることが当たり前になると、いろんな状況が見える余裕も出てくる。それがいい方向に回っているのでしょう。日本にいた時、大学の後輩の青木(宣親)が1年目にファームで首位打者を獲ったのに、1軍では結果を残せなかった。上だと最初はどうしても代打の1打席勝負になって、ダメだとすぐに落とされてしまう。あの青木でさえ、「鎌田さん、ツライっす」と弱音を吐いていましたからね。やはり、ずっと試合に出ることでの“慣れ”は大事だと思いますね。

二宮: 実際、台湾のプロ野球のレベルは日本と比べて、どうですか?
鎌田: 国際大会の結果を見れば分かるように、総合的には日本が上かもしれません。ただ、いいバッターはいますよ。どのチームにも2、3人は警戒しないといけないバッターがいますからね。甘いところに行くと長打の確率は高い。どんどんバットを振ってくるタイプも多いので油断するとやられますね。

二宮: 台湾で一番通用しているボールは何でしょう?
鎌田: 球種というよりコースですね。外に逃げるスライダーとか、外いっぱいのストレートは効いていると思います。

二宮: 日本にいた頃は肩やヒザの故障もありました。その影響はありませんか?
鎌田: 今年に関しては、おかげさまであまり痛みが出ていませんね。日本にいた時は毎年、どこかが調子が悪かったんですけど……。台湾は気候が温暖なせいもあるかもしれませんね。そもそも僕はここでは外国人ですから、あまり「痛い」と言っているとクビになってしまいますから。

二宮: 台湾では外国人枠は1チーム3名までと決められていますね。
鎌田: しかもルールで外国人はケガや不調で2軍落ちすると、もう1軍登録ができないんです。要するに2軍に落ちたらクビみたいなもの。だから故障が再発しないよう、しっかり調整もしていますし、緊張感を持てているのがいい結果に出ています。

二宮: 海外だと言葉の壁もありますが、その点は?
鎌田: まだ、そんなに話せないんですけど、自分なりに勉強してカタコトでコミュニケーションはとれるようになりました。台湾は日本人も多いので、日本語がまったく使えないわけでもない。その点は助かっています。

二宮: 監督が中島輝士さん、投手コーチが紀藤真琴さんといずれも日本人なのもやりやすいのでは?
鎌田: それは心強いですよ。特にピッチングの面では紀藤さんに思ったことを伝えられる。紀藤さんからもいろいろアドバイスを直接もらえるので、ありがたいです。

二宮: 残念ながら日本では一度、戦力外になってしまいましたが、当然、まだやれる自信はあると?
鎌田: それはありますけど、日本の球団から声がかからなかったのが現実ですから。今は「台湾で頑張ろう」という気持ちでは来ていますが、先が見えない不安は正直あります。「来年はどうするの?」って聞かれても、現時点では何とも言えない。とにかく今は、ここで結果を残すことで次の道が見えてくればいいなと思っています。

二宮: これだけの活躍を見せれば、日本の球団も放ってはおかないでしょう。
鎌田: そうなれば、うれしいですね。とりあえず、ここで1つ1つ勝っていくことが未来へつながる。まだシーズンも半分以上残っていますから、あまり大きなことは考えず、目の前の試合に集中して頑張ります。

※『週刊現代』に掲載された鎌田投手に関する特集記事の全文が、スポーツポータルサイト「Sportsプレミア」に掲載されています。こちらも合わせてご覧ください。下のバナーをクリック!