8月13、14日に行われた対福岡ソフトバンク戦は2連勝を飾ることができました。ソフトバンクとは今季の開幕戦で敗れて以来、対戦成績0勝3敗1分と、白星を挙げることができていませんでした。リーグの中で唯一、ソフトバンクに勝利できていなかったので、そういう意味でも非常に価値のある2勝でした。

 

 チームの起爆剤になったのは、サンホ・ラシィナです。彼は13日の試合で、4回に2死一、二塁のチャンスでタイムリーヒットを放ちました。4番のザック・コルビーが先制点を奪ったあとに貴重な追加点を挙げたことも素晴らしいですが、注目してもらいたいのは、打席の内容です。ラシィナは初球のストレートを迷いなく振り抜きました。

 

 彼の課題は変化球の攻略でした。変化球が苦手な選手は、意識しすぎて、­ストレートでさえも打ち損じて­しまうことがあります。打席に立った時に“次は変化球がくるかな、ストレートがくるかな”と考えながら打ってしまうからです。これでは当然打てません。打席に立つ前に、­“よし、ストレートだ”と心の中で決めて、割り切ったスイングをすることが大切です。

 

 僕はラシィナに対して、­「初球に予想とは違うボールがきて空振りしてもストライク1だよ。あと2回もチャンスはあるんだ」と、常々言っています。まさに­僕がアドバイスした通りの“割り切ったスイング”を見せて­くれました。13日は3-2と1点差でソフトバンクに勝ったので、ラシィナが奪った追加点は非常に大きかったと思います。

 

 後期に向けて、チームの課題は継投陣にあります。ウチのリリーフには防御率0点台の嘉数勇人と最多セーブを記録している平良成が揃っていますが、­1点ビハインドの負け試合で­投げるリリーフがいません。彼らに加えてもう1枚欲しいのが本音です。

 

 そこで期待したいのが、14日に2番手で登板した丸山雄太と本日入団が発表された岡部峻太の2人です。サイドスローの丸山は、ソフトバンク戦で2回3分の2を投げて無失点に抑えてくれました。20歳の岡部は、体の線はまだ細いですが、キレのあるストレートを投げます。彼らの活躍で投手陣の層が厚くなれば、これからの連戦に向けて心強いです。後期優勝は、継投陣の活躍にかかっているでしょう。

 

 大城は“隠れドラフト候補”

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 さて、いよいよ今秋のNPBドラフトが近づいてきました。NPB入りの可能性がある選手はリリーフで安定した成績を残している平良をはじめ、今季の打の中心に挙げている河田直人です。しかし、河田の場合、このままで満足していてはいけません。

 

 毎年、河田は注目されていながらNPB入りを逃しています。なぜ、今までNPBに入れなかったのかというと、­野球に対する考え方が甘いからです­。­­これは歴代の監督や指導者も感じていたことだと思います。本来は下位打線を打つような選手ではありませんが、前期は­8番を打たせたり、ス­­タメンを外すこともありました。彼の考え方を変えていくために、あえて多くの­試練を与えたのです。­

 

 ­まだまだ試練を与え­続けたかったのですが、ドラフトまで時間が­なくなってきたため、河田がNPBのスカウトたちにアピールしやすい方向に持っていくことに変えました。後期が始まる前に河田に対して「後期はチームのことを考えなくていい。自分がどれだけの数字を残せるか、自分に挑戦してみろ」と言い、1番に据えることを決めたのです。

 

 ­­本来はチームのことを最優先に考えなければいけませんが、­河田がまず­やるべきことは自分の実力を理解することです­。­­24歳の河田にとって、今年か来年がNPBに入るラスト­チャンスだと思います。後期は1番で何本ヒットを打てるか、何本ホームランを打てるか。できるだけ多くの打席に立って、とにかく頑張ってもらいたいです。

 

 NPBのスカウ­トたちにはマークされていませんが、“隠れドラフト候補”­­に推薦できる選手がいます。ショートの大城優太です。­前期と比べて打席の内容がガラリと変わりました。今まではチャンスの場面で簡単にフライを打ち上げていましたが、­最近はセーフティバントを­決めてみたり、ファールで­逃げてみたりと、非常に粘り強くなっています。前期終了から後期にかけて急成長を遂げているので、今後が楽しみな選手です。

 

駒田徳広(こまだ・のりひろ)プロフィール>:高知ファイティングドッグス監督
 1962年9月14日、奈良県出身。桜井商高から80年にドラフト2位で巨人に入団。3年目の83年にNPB初のプロ初打席での満塁ホームランを放つ衝撃デビューを果たす。この年のリーグ優勝に貢献。89年には一塁手のゴールデングラブ賞を獲得(以降、一塁手では最多の10度受賞)。恐怖の7番打者として日本シリーズMVPに輝く。94年にはFA宣言をして横浜へ移籍。98年にはマシンガン打線の中軸を任され、ベストナインを受賞。チームは38年ぶりの日本一を達成する。チャンスに強く、満塁ホームランは歴代5位タイの13本を記録。00年に2000本安打を達成し、同年限りで引退。05年には新規参入した東北楽天の打撃コーチに。09年は横浜の打撃コーチ、12年からは常磐大の臨時コーチを務めた。16年より、高知の監督に就任。現役時代の通算成績は2063試合、2006安打、打率.289、195本塁打、953打点。

 

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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