21日(日本時間22日)、リオデジャネイロ五輪は全日程を終了して幕を閉じた。日本選手団が獲得したメダルは金12個、銀8個、銅21個。大会前に日本オリンピック委員会(JOC)が掲げた目標の「金メダル14個」には及ばなかったものの、総数41個は過去最多の数字となった。パラリンピックは9月7日に開幕する。

 

 日本選手団は見事に“ロンドン超え”を果たした。まずは序盤の競技で好スタートを切り、波に乗ることができたのが一因だろう。

 

 それはトビウオジャパン(競泳日本代表)の活躍に依るものが大きい。ロンドン五輪では11個のメダルを獲得し、日本を勢い付けたことは記憶に新しい。今回のリオ五輪でも競泳初日に萩野公介(東洋大)が400メートル個人メドレーで金メダルを手にし、スタートダッシュに一役買った。メダルの総数だけで言えば、7個と前回を下回るものだが、唯一ゼロだった金メダルは2個に増えた。中でも金メダル大本命と期待されながら、そのプレッシャーに打ち克った萩野の存在は大きい。新エースとしての実力を証明した。萩野は800メートルフリーリレーでも52年ぶりの銅メダル獲得に貢献。200メートル個人メドレーでも銀メダルを獲るなど、1人で金銀銅メダルを揃える活躍ぶりだった。

 

 トビウオジャパンと共にスタートダッシュに大きく寄与したのが、柔道である。男女合わせて全14階級中12階級で表彰台に上がり、メダルを量産した。ロンドン五輪では男子は金ゼロ、女子は1個と日本柔道凋落を印象付けられた。だが今回は大野将平(旭化成)、ベイカー茉秋(東海大)、田知本遥(ALSOK)が金メダルを手にするなど過去最多のメダルを獲得し、復活の狼煙を上げたと言えよう。復活というフレーズは、14年に復帰した井村雅代コーチの下で鍛え上げられたマーメイドジャパン(シンクロナイズドスイミング日本代表)にも当てはまる。ロンドンでは正式種目に採用された1984年ロサンゼルス五輪以来、初めてメダルなしに終わっていた。リオではデュエットとチームの両種目で表彰台に返り咲いた。

 

 柔道とシンクロの復活劇に加えて、印象深かったのが劇的な大逆転での金メダル獲得だ。男子体操ではアテネ五輪以来の悲願となる団体金メダルを獲得した内村航平(コナミスポーツクラブ)。連覇のかかった個人総合では最終種目の鉄棒で完璧に近い演技を披露し、着地の差で逆転優勝を果たした。全6階級中4階級で金メダルを獲得した女子レスリングも、そのうちの3個が終了間際の逆転劇だった。バドミントンの女子ダブルス高橋礼華&松友美佐紀組(日本ユニシス)も決勝のファイナルゲームで16-19と追い込まれてからの5連続得点で試合をひっくり返した。最後まで諦めない姿勢はもちろんのこと、愚直なまでに自らの型を貫いたことが勝因となった。

 

 表彰台には届かなかったものの、健闘が目立ったのは今大会から新種目として採用された7人制ラグビーの男子代表と、12年ぶりの出場となった女子バスケットボール代表である。昨年の15人制ラグビーのW杯で世界に衝撃を与えた日本は、セブンズでも初戦からジャイアント・キリングを演じてみせた。ラグビー大国として知られるニュージランドを撃破し、その勢いを駆って4位入賞を果たした。一方の女子バスケは世界ランキング16位。グループリーグでは格上となる海外勢相手に3勝を挙げ、同2位のオーストラリアをあわやというところまで追いつめた。最後は準々決勝でアメリカに完敗を喫したが、20年ぶりの決勝トーナメント進出と、平均年齢24.7歳の若いチームが確かな爪痕を残した。

 

 そのほかにも競泳の池江璃花子(ルネサス亀戸)、卓球の伊藤美誠(スターツSC)、体操の白井健三(日本体育大)、レスリングの樋口黎(日本体育大)ら10代、20代前半の選手の活躍も目立った。4年後の自国開催に向けて、大きな弾みとなったリオ五輪。今大会をステップに更なる飛躍を遂げる者もいれば、リベンジを狙う者もいるだろう。熾烈を極める国内の選考レースも待っている。4年に1度のカーニバルは終わった。それと同時に新たな戦いの幕が開けた。

 

(文/杉浦泰介)