いよいよ優勝へのカウントダウンが始まったカープ。功労者のひとりがリリーフから先発に転じたブレイディン・へーゲンズだ。

 

 ここまで47試合に登板し、6勝3敗19ホールド、防御率2.77(8月31日現在)。“縁の下の力持ち”的な活躍が光る。

 

 メジャーリーグ経験は、ほとんどない。一昨年、ダイヤモンドバックスで2試合に登板しただけだ。

 

 カープでも最初は2軍スタートだった。エクトル・ルナの故障により4月22日、1軍に昇格した。主に7回を担当し、ジェイ・ジャクソンにバトンを渡す役割を担った。クローザーの中崎翔太と3人で“勝利の方程式”を確立した。

 

 戸田隆矢、岡田明丈が故障で先発をはずれると、先発に回った。8月21日の東京ヤクルト戦では6回を投げ、無失点に封じた。86球は日本での最多投球数だった。

 

 だが続く28日の中日戦では6回途中で降板した。5回までは1安打無失点と安定したピッチングを見せていたが、6回に入って、突然崩れた。「ボールが浮き始めた。疲労もあった」。結局カープは、この試合を5対7で落とした。

 

 カープOBの大野豊が広島アスリートマガジン携帯サイトで書いていた。

<へーゲンズなどは今季途中まで中継ぎとして調整を続けていました。そうした投手に対して、いきなり一流の先発投手並みの活躍を求めるのは酷です>

 

 そのとおりだと思う。普通の先発ピッチャーなら、最低でも6回はノルマだが、ローテーションの穴を埋めるため、急遽先発に回ったヘーゲンズに同じノルマを課すのは酷である。へーゲンズの場合は5回で1、2点なら御の字だ。

 

 CS、日本シリーズを見据えた時、へーゲンズは本職のリリーフで使いたい。短期決戦はブルペンの厚みがモノをいう。慣れない先発で功労者を故障でもさせてしまったら元の子もない。戦いは、まだ続くのだから……。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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