田口竜二(元プロ野球選手、(株)白寿生科学研究所人材開拓グループ長)第13回「いい関係性を築くには人を認める器量が必要」
みなさん、こんにちは! プロ野球シーズンもいよいよ終盤です。パ・リーグは北海道日本ハムファイターズの頑張りで最後まで目が離せない状況になっています。クライマックスシリーズ進出争いも白熱し、ファンのみなさんも目が離せない毎日ではないでしょうか。
さて残暑がまだまだ厳しい時期ですが、暑い日の太陽を見ると昔の野球部時代、地獄の練習を思い出します。当時は練習中に水を飲まないことが当たり前で、体もそれに慣れていたので、水を飲まないことで倒れたりする選手はいなかったのですが、今考えるとよく死ななかったなと感心するほどです。
ただ、まったく水を飲まなかったわけではありません。小中学校時代はトイレに行くふりをして水を飲み、見つかっては説教され、ぶん殴られ、しこたま走らされるの繰り返しだったのを覚えてます。高校1年の時は、隠れて水を飲んだりしたら全体責任でみんながやられてしまうので、じっと堪え、グランド整備時の水撒きや、ブルペンにバケツで水を撒くときに手についた水をすすり、2年になると木陰や部室に隠した先輩の水を分けてもらって飲み、乾きを凌いでいたのを思い出します。こんな話をすると自分と同世代の方はなつかしく思うのではないでしょうか。
さて今回はモチベーションが高まる環境の「関係性」について書かせてもらいます。関係性とはその言葉通り、人間関係のことです。たとえば人間関係が良好な職場と険悪な職場ではどちらがいい仕事ができるでしょうか? もちろん人間関係が良好な職場ですよね。上司や同僚、部下から信頼を得ていたり、何でも話せる、そして意見が言える職場は建設的で明るい環境だと思います。
一方、上司に嫌われてるし、自分も嫌い。職場の人たちとのコミュニケーションが上手くいかない。社員が会社の文句ばかり言ってる職場はどうでしょうか? 間違いなくいい仕事ができないし、クリエイティブな発想につながることもないと思います。
これは野球のグラウンドでも同じことが言えます。監督・コーチが心から信頼できる人物で、その監督・コーチからも選手として、また人として認めてもらっているとグランドでのパフォーマンスは向上します。一方で監督やコーチを信頼できない、尊敬できないと考えてると、グラウンドでのパフォーマンスは低下してしまいます。
「お前はダメだ」「アホか、お前は」「だからダメなんだ」などと平気で言っている指導者は間違いなく選手から尊敬されていないし、信頼関係などゼロだと思います。そんな環境で野球を上手くなりたいと思っても、ずば抜けた力を持った選手には関係ありませんが、普通の選手たちの力が向上することはまずないでしょう。それはなぜか? ここで何度も書いているように、「やれ」と言われてやる練習(外発的に動機づけられてる状態)はパフォーマンスが低下し、自分からやる練習(内発的動機づけられてる状態)はパフォーマンスが向上すると研究結果が出ているからです。
「関係性」を作るのは「教える側と教えられる側」と一見すると簡単そうに思えますが、実はそう単純なものではありません。人にはそれぞれ感性や考え方があり、関係性を作るためにはそれらをすべて認められる人間性が自分にも備わっていないといけないからです。
よく過去に実績を残した人に意見したら「お前は実績もないくせに」と上から目線で言われ、「あいつは生意気だ」と嫌われたという話を耳にします。自分も何度もそんな経験をしてきました。その度に「この人は信頼に値しない」と考えたものです。信頼関係を構築するのに過去の実績など関係ありません。
これから何を成し遂げようとしているのかが、人としての判断基準になるのに、過去の実績だけで物事を考え、判断し、生きてる人を見ると可哀想に思えることもしばしばでした。
そうではなく、その過去をもって今の自分がどうあるべきなのかと考え、人を認める器量を身につけるようとする人こそ、信頼でき、尊敬できる人物ではないでしょうか。「関係性」が良好な環境、とても大事なことですね。
さて次回からはいよいよセカンドキャリア問題を生み出す元凶そのものについて書かせてもらいます。