四国アイランドリーグPlusは後期シーズンの戦いがスタートしている。NPB入り、または復帰を目指してプレーする選手たちにとっては、野球人生を賭けた熱い夏がやってきた。前期、独走Vを達成した香川で西田真二監督が、優勝の立役者として評価したのがキャッチャーの星野雄大である。社会人の伯和ビクトリーズから入団して1年目、2年前の都市対抗野球では本塁打を打ったこともある強肩強打のキャッチャーは今オフのドラフト指名を目指す。弟の大地は昨年、一足先に福岡ソフトバンクに入団した。兄弟でNPBでの活躍を夢見る23歳にインタビューした。
(写真:二塁への送球は2秒0。正確さもアピールポイント)
――入団1年目で前期優勝。キャッチャーとしてやりがいがあったのでは?
星野: 最初は右も左も分からない状況から、試合に出るごとに感覚をつかんでいきました。自分自身も落ち着いてプレーできるようになり、チームが優勝したので本当にうれしかったです。

――西田監督も「扇の要として星野の成長が優勝につながった」と褒めていました。
星野: 監督からは「キャッチャーがしっかりしているチームは強い」と言われてきました。社会人時代も「キャッチャーがどっしりしないと勝てない」と教わってきたので、まずは自分が自信を持って試合に臨むことを心がけてきました。その部分はある程度、できたかなと感じています。

――昨年は福岡ソフトバンクから育成選手として指名する話もあがっていました(日本野球連盟が難色を示し、指名断念)。アイランドリーグに来たのは、当然、NPB入りを狙ったと?
星野: この1年で勝負をかけたいと思って、香川に来ました。(所属していた)伯和ビクトリーズにも僕の思いを理解していただき、快く送り出してもらいました。

――今オフ、ドラフトで指名を受けるためにアピールしたい点は?
星野: キャッチャーとしてのスローイングの正確さですね。内野手がランナーにタッチできる範囲には、ほぼ投げられる自信があります。もちろん盗塁はスローイングだけでは刺せない部分もありますが、ちょっとでもランナーのスタートが遅れればアウトにできると思っています。

――スローイングの正確性を高める上で、NPBで歴代最高の盗塁阻止率を誇る古田敦也さん(元東京ヤクルト)は、ボールを握った時の縫い目のかかり具合に応じて、狙う場所を変えるとコツを明かしています。たとえば、しっかりと縫い目に指がかからない時は送球が山なりになるので、やや目標より上を狙うといった工夫をするとか。
星野: それは僕も意識しています。縫い目にしっかりかかった時は投げやすそうに思えますが、その時こそ気をつけなくてはいけません。ビュンと腕をしっかり振って、なるべく前でボールを離す。中途半端に投げると、かえってコントロールがつかないんです。

――アイランドリーグでは勝利と育成の両方が求められます。キャッチャーは相手バッターに打たれないようにしながら、ピッチャーの長所も引き出さなくてはならない。リードもかなり頭を使うでしょう?
星野: 加えてアマチュアは一発勝負ですが、ここでは何度も同じチームと対戦しますから、その点も頭に入れなくてはいけません。社会人時代とはリードの発想が違うので最初は大変でした。基本的にはピッチャーのいいところを引き出しながら、バッターの様子をうかがって、タイミングが合わないように気をつけながらサインを出しています。

――マスクを被っている時はピッチャーや野手を鼓舞する姿よりも、冷静に指示を出してミットを構える姿が目につきます。
星野: 常に冷静にプレーできるよう、意識をしていますね。どんなにピンチの場面でもバッターや相手ベンチ、自分たちのベンチを見て、出方を見極め、どうするか判断する。もしピッチャーがソワソワしていたら、まずは落ち着かせて投げさせるようにする。周りがしっかり見える存在でありたいですね。

――近年のキャッチャーは守りだけでなく、バッティングも求められます。その点では現在の打撃成績(打率.262、2本塁打、22打点)は、もう少し上げていく必要があるのでは?
星野: バッティングは課題ですね。社会人で都市対抗に出た頃(2010年)は、いい感じで打てていたのですが、そこから少し崩れてしまいました……。

――西田監督からは、どんなアドバイスを?
星野: 打ちに行く時に先に頭が動いてブレるので、どうしても打ち損じが増えてしまう。その点を修正するように言われています。NPBのピッチャーは失投が少ないですから、1球で仕留めないと結果は出せない。たとえヒットは打てなくても最低限、進塁打とかチームバッティングができるように磨いていきたいと思っています。

――でも2年前の都市対抗で東京ドームのレフトスタンドに放ったホームランは見事でした。ツボにハマれば飛ばす力がある。これもひとつの魅力でしょう。
星野: ツボにハマれば、ですね。最近はそのツボにハマらない(苦笑)。

――その都市対抗では七條祐樹投手(東京ヤクルト)とバッテリーを組み、チームを同大会初勝利に導きました。
星野: 七條さんとは、その前の日産自動車九州時代から一緒のチームでした。何よりコントロールが素晴らしい。今まで組んだなかで一番いいピッチャーです。このリーグでは、タイプは違いますが、オリックスに行った(アレックス・)マエストリもスピードも制球力も兼ね備えていて、いいピッチャーでした。

――このリーグではNPBと交流試合があり、実際に自分のレベルを比較できます。対戦してみての感触は?
星野: やはりNPBには2軍や3軍でもいいピッチャーがたくさんいますね。ソフトバンクとの交流戦では藤岡(好明)さんと対戦しましたが、1軍で投げていただけあって、ボールにキレがある。少々、甘いコースに入ってきても、ピッと差し込まれるんです。だから、とらえたと思っても前に飛ばない……。

――ソフトバンク戦では弟の大地投手との兄弟対決も実現しました。
星野: スタンドがワーッと沸いたので、楽しかったですね。ただ、僕の希望を言わせてもらうと、ぜひバッテリーを組んでみたい。弟とは4つ違いで、ピッチャーを始めたのが高校2年の時だったので、2人でバッテリーを組んだことがないんです。NPBの舞台でピッチャー、キャッチャー星野という場面をつくれればうれしいですね。

――最後に理想とするキャッチャー像を。
星野: 打って守って走れるのが理想ですが、足は速くないので(苦笑)、バッティングと守備でチームの中心になることですね。ヤクルトの古田さんだったり、阪神の城島(健司)さんだったり、そういうチームを勝利に導けるキャッチャーになれればいいなと考えています。

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(聞き手:石田洋之)