意地と意地、プライドとプライド。

 米国選抜と欧州選抜がぶつかり合う2年に1度開催の「ライダーカップ」。全世界が注目する伝統の男子ゴルフ対抗戦は9月30日(現地時間)に開幕し、米ミネソタ州ヘーゼルティン・ナショナルGCが舞台となる。距離が長いことで知られる難コースだ。

 

imgfb509847ce743d532af86[1]
 

 

 ライダーカップは12対12の対抗戦で、3日間開催の全28マッチ。大会形式は1日目、2日目はダブルスでフォアサム(ティーショットでベストボールを選択して、2打目以降は交互に打つ方式)、フォアボール(成績の良いほうをスコアに採用する方式)が4マッチずつ行なわれ、最終日はシングルマッチとなる。各マッチの勝利チームに1ポイント、引き分けは0.5ポイントが振り分けられ、合計得点の多いほうが優勝チームとなる。

 

 イングランドの大富豪サムエル・ライダーが創設したことで彼の名前が冠についたこの大会は1927年に第1回が行なわれ、今年で第41回を迎える。通算成績は米国選抜が25勝2分け13敗と欧州選抜を大きくリードしているものの、近年は「欧州選抜の時代」が続いている。ここ10大会で7度の優勝。現在も3連覇中と勢いに乗る。

 

 勝負強い欧州選抜

 

 欧州選抜はここぞという場面で勝負強さを発揮してきた。

 2008年大会こそカップを米国選抜に譲ったが、ウェールズのケルティックマナーリゾートで開催された2010年大会は最終日の最終マッチまで同点という大激戦を制して奪還。米イリノイ州メダイナCCでの2012年大会は4ポイントのビハインドで最終日を迎え、シングルマッチで大逆転して2連覇を達成している。そして前回の2014年大会(スコットランド・グレンイーグルスGC)は5ポイント差をつけての圧勝劇。「欧州強し」を世界のゴルフファンに印象づけた。

 

 メンバーはライダーカップポイントランキングによる自動選出と、キャプテンピック(キャプテン推薦による選出)がある。

 

 欧州選抜は今年も多士済々のメンバーが顔をそろえている。

 キャプテンは過去5度出場し、10年、12年大会で副キャプテンを務めたダレン・クラークだ。クラークと言えば忘れられないのが2006年大会だろう。大会2カ月前に最愛の妻ヘザーさんを病気で亡くしながらキャプテンピックで大会に出場。最終日のシングルマッチでザック・ジョンソンを破るなど3つのマッチにすべて勝利する活躍ぶりで、欧州3連覇に貢献した。悲しみを抱えながらも、大会出場を望んでいたというヘザーさんの思いを胸に彼は戦った。最終パットを決めた後、目に涙を浮かべたクラークの姿に人々は惜しみない拍手を送っていた。

 

 そのクラーク率いるメンバーは4度のメジャー優勝経験者であるエースのローリー・マキロイを筆頭に、ヘンリク・ステンソン、ジャスティン・ローズ、セルヒオ・ガルシア、ダニー・ウィレット、クリス・ウッド、マシュー・フィッツパトリック、ラファエル・カブレラ・ベヨ、マーティン・カイマー、アンディ・サリバン、トーマス・ピータース、リー・ウエストウッドの計12人。

 

 マスターズを制したウィレット、全英オープンで優勝したステンソン、リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得したローズなど勢いに乗るプレーヤーが目立つ。特に14年大会で負けなしだったローズの存在は頼もしい限りだ。ガルシアは今回で8度目の出場となる。史上初の4連覇に向け、クラークがどう戦略を組み立てていくかが見ものである。

 

 リベンジに燃える米国選抜

 

 さて、雪辱を期す米国選抜である。

 主将はデービス・ラブⅢが務め、ジョーダン・スピース、ダスティン・ジョンソン、ザック・ジョンソン、フィル・ミケルソン、ブラント・スネデカー、パトリック・リード、ジミー・ウォーカー、ブルックス・ケプカ、リッキー・ファウラー、マット・クーチャー、J.B.ホームズ、そしてツアー選手権の終了まで保留していた最後の1人にライアン・ムーアが入った。

 

 ラブⅢはキャプテンピックとしてファウラー、クーチャー、ホームズの3人をまず指名。最近の好調ぶりとライダーカップの経験を買っての選出だった。

 

 誰と誰をペアリングさせていくか。ここに主将の腕が問われるわけだが、惨敗した14年大会はトム・ワトソンの采配に批判が集まった。個のタレントを束ね、力を引き出すキャプテンのリーダーシップこそが浮沈のカギを握ると言っていい。

 

 その意味で前々回の12年大会でもキャプテンを務めているラブⅢは適任だ。大逆転を許してカップを欧州選抜にさらわれてしまっただけに、彼自身、リベンジに対する思いは相当強い。キャプテンピックを3人から4人に増やすなど独自色を打ち出している。

 

 米国選抜はメジャー5勝を誇るミケルソンを中心としたタレント集団。全米オープンで逆転優勝を飾ったダスティン・ジョンソンの充実ぶりは頼もしいところだ。全米プロ選手権を制したウォーカーもメジャー初タイトルを獲得している。そして世界ランキング4位のスピースにも、大きな期待が懸かる。

 

 ライダーカップは賞金が出ない。オカネで買えない価値。黄金のカップこそが彼らの名誉となり、彼らのプライドを満たすものとなる。

 負けたらポイントを稼げないマッチプレーゆえの醍醐味があり、世界のゴルフファンが熱狂する大会。今年は一体、どんなドラマが私たちを待ち受けているのだろうか――。

 

%e3%82%b4%e3%83%ab%e3%83%95%ef%bc%93【放送スケジュール】(放送はすべてゴルフネットワーク)

 

<ライダーカップ>

1日目:9月30日(金)21:30~翌8:00(生中継)

2日目:10月1日(土)21:30~翌8:00(生中継)

最終目:10月2日(日)25:30~翌7:30(生中継)

最終日の最大延長は翌10:00まで

 

※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。


◎バックナンバーはこちらから