第87回 世界を沸かせたジャパンラグビーに注目! ~ラグビー・トップリーグ~
ジャパンラグビーが今年も世界を驚かせた。
先日閉幕したリオデジャネイロ五輪。7人制ラグビー日本代表(セブンズ)が1次リーグ初戦でニュージーランド代表のオールブラックスセブンズを14-12で撃破したニュースは世界を駆け巡った。ニュージーランドに勝利するのは史上初めて。その勢いに乗って決勝トーナメントに進み、4位と健闘した。メダルにあと一歩届かなかったとはいえ、昨年のワールドカップに続いてジャパンラグビーが注目を集めた大会となった。
リオ五輪が終わり、トップリーグの新シーズンがいよいよ開幕を迎える。
8月26日にスタートし、来年1月14日までの日程で全16チームが総当たりで計15試合を戦う方式となる。1位チームが2016~2017年シーズンの覇者となる。
史上初の4連覇を目指すディフェンディングチャンピオンのパナソニック・ワイルドナイツが今季も優勝争いの中心となることは間違いない。
戦力は一層、厚くなった。
昨年のワールドカップでエディージャパンの大学生ウィングコンビとして注目された福岡堅樹、藤田慶和の次世代エースの2人が加入。エディー・ジョーンズも「世界レベルに成長するポテンシャルがある」と才能を高く評価していた。福岡はセブンズの一員としてリオ五輪の舞台を経験しており、注目度も上がっている。
世界ナンバーワンのFL/ナンバー8との呼び声高いオーストラリア代表のデービッド・ポーコックもトップリーグに参戦する。オーストラリア代表のヘッドコーチ(HC)を務めた恩師ロビー・ディーンズの存在が、日本行きを決意させたようだ。
ターンオーバーに、ポーコックあり。ボールの狩人である脂の乗り切った28歳は、他チームにとって脅威となるだろう。ただ合流自体は、今秋に予定するオーストラリア代表の欧州遠征後。来年は代表の活動を辞退して、パナソニックでのプレーに専念するという。
そしてトップリーグ史上初めて大学在学中に選手登録されたSO山沢拓也(筑波大4年)も注目を集めている。ディーンズHCも「彼は将来を背負う選手の一人。非常に謙虚で学ぶ能力があり、意欲がある」と期待を込める。
王者の対抗馬
パナソニックの牙城を崩す対抗馬の一番手は、やはり東芝ブレイブルーパスだろう。昨年のファイナルではパナソニックを相手に1点差まで迫った。粘り強さは東芝の真骨頂であり、新戦力のニュージーランド代表WTB/FBのコーリー・ジェーンも頼もしい。LO大野均、ナンバー8リーチ・マイケルらチームの大黒柱に対し、FL山本浩輝、PR知念雄ら成長著しい若手がどう絡んでいくかがカギを握る。
また前評判が高いのがサントリー・サンゴリアスである。エディージャパンでスキル強化を担った沢木敬介が監督に就任。2年目のSH流大(ながれ・ゆたか)をキャプテンに指名するなど、沢木流マネジメントがチームを活性化させている。
SOトゥシ・ピシが英ブリストルに移籍するなど大幅なメンバーの入れ替えがあったなかでFLジョージ・スミスのチーム復帰は朗報だ。スミスは2011年から3シーズンプレーし、トップリーグで2度MVPを獲得しているレジェンド。オーストラリア代表では111キャップを記録している。フランスのリヨン、プレミアシップのワスプスでも活躍し、35歳になった今も衰え知らずだ。
トゥシ・ピシが抜けた穴にはオーストラリア代表で16キャップのクリスチャン・リアリーファノも加入。積極的な外国人選手の補強が目を引いている。
1/15の以上の意味を持つ開幕戦
不気味な存在なのがヤマハ発動機ジュビロ。トゥーロンに移籍したFB五郎丸歩の抜けた穴は大きいが、FB/WTBゲラード・ファンデンヒーファーのキック力に対する評価は高い。26日の開幕戦で王者パナソニックに挑む清宮克幸監督は23日に都内で開催されたプレスカンファレンスでこう挑発している。
「君が代が流れる会場で最高の試合ができる準備は整っています。“パナソニックに勝つけど優勝できない”“パナソニックに負けて優勝する”そのどっちを選ぶかというと前者ですね。パナソニックに勝ちます。勝ちたいです」
つまり、優勝よりもパナソニックに勝つことを目標に置く大胆な発言で会場をざわつかせたのである。ヤマハにとって開幕戦は単に「15分の1」ではなく、開幕に照準を合わせて準備している。一方のパナソニックにはスロースターターの印象もあるため、ここでジュビロが勝つと「戦国トップリーグ」になる可能性も出てくる。
パナソニックのディーンズHCは「彼が本気で言っているんだったら、勝たせてあげるから我々を優勝させてほしいと思います」と軽く受け流したが、HO堀江翔太主将は、気を引き締める。
「キヤノンさんも『Beat Panasonic』と言っているし、どこもやっぱりパナソニックを引きずり落そうとしてくると思う。実際、僕が逆の立場でもそうすると思うので。そこは構えるんじゃなくて逆にチャレンジしていければいいかなと思うんですけどね」
パナソニック包囲網が張られるなかで、王者はどう突破していくのか。
ディーンズHCはまず開幕戦での勝利を誓うとともに、4連覇への自信を深めている。
「開幕戦は15分の1と言いたいところだが、非常に大事な試合だと思っています。ほかの試合も一緒とはいえ、最初の試合がどういったものになったかで次につながっていくという意味では大事です。
我々はグループとして進化を遂げてきていると思っています。若い選手がグッと育ってきてくれたので選手層に厚みが出てきて、練習の場でもチーム内の中での競争が起きている。長いシーズンを戦うにはそれだけ厚みがあるのは良いことだし、若い選手の台頭はうれしくもあります」
今季の主役はパナソニックか、それとも――。
なお、ジャパンラグビー トップリーグは、J SPORTSで生中継を中心に全120試合を放送。
【開幕戦放送予定】 開幕節は全戦放送! ※は生中継
第1節
8月26日(金)
19:20~ パナソニックvs.ヤマハ発動機(J SPORTS3)※
19:20~ サントリーvs.近鉄(J SPORTS4)※
8月27日(土)
16:20~ リコーvs.NEC(J SPORTS4)※
18:50~ 東芝vs.クボタ(J SPORTS4)※
22:00~ 神戸製鋼vs.NTTコミュニケーションズ(J SPORTS1)
24:00~ トヨタ自動車vs.豊田自動織機(J SPORTS1)
8月28日(日)
7:30~ ホンダvs.宗像サニックス(J SPORTS1)
13:30~ コカ・コーラvs.キヤノン(J SPORTS1)
※このコーナーではスカパー!の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。