みなさん、こんにちは。広島、北海道日本ハムファンの皆さま、リーグ優勝おめでとうございます! 厳しいシーズンを勝ち抜き、栄冠を手にした両チームに大きな拍手を送るとともに、クライマックスシリーズでの素晴らしい戦いを楽しみにしています。

 

 さて、今回からセカンドキャリア問題を生み出すそもそもの原因について書かせてもらいます。原因はレベルの低い指導者がいる、ということです。勘違いして欲しくないのは、今いるすべての指導者の方々のことを言っているのではありません。多くのことを学び、選手のために真剣に指導とは何かを追求し、頑張られてる方もたくさんいます。私も実際に素晴らしい指導者の方々から学んだことも多々あります。しかし、そういう存在は一部でしかなく、多くの方は「指導者とは何か」を勘違いしている気がします。

 

 セカンドキャリアの問題として、以前から選手側の問題は「考えることができない」「考えることが苦手」、そう思い込んでいる選手が多いことだと指摘させてもらいました。では「考えることができない」「考えることが苦手」という選手を作り出しているのはどんな環境でしょうか? そしてその環境を作りだしているのは誰でしょうか? 答えは簡単ですね。指導とは何かを表面的にしか捉えていない指導者が、「考えることが苦手な子供たち」を作り出しているのが現状です。

 

 これまで人間は3つの悦びを感じたときに「内発的に動機づけられる」と書いてきました。その3つの悦びとは「自律性」「有能感」「関係性」です。これが感じられる環境作りは指導者の役目です。残念ながら日本の野球界はその大切な環境作りよりも、技術を優先し、そして一番やってはいけない指導者自身の欲を優先し、子供たちの指導をしています。簡単に言えば、指導者のために子供たちは駒となり動いているということです。
 指導者が自分の動かしたいように子供たちを動かす。動かない場合には怒鳴りちらす……果たしてそれが本当に指導と言えるのでしょうか?

 

 本来ならその逆であるべきです。子供たち自身が指し手となり、よく考え、自分が今何をするべきか、どう動くべきかを考えるクセをつけること。それが将来彼らが活躍する選手になるためにしなければいけないことではないでしょうか。駒にされてる子供たちは、言われるように動く、動かないと怒られる。それが長い間続くことで指示待ちの人間になってしまいます。

 指導者に意見も言えない、そして考える事が苦手な子供たちはいつの日か社会に出たとき、厳しい社会から歓迎されるでしょうか……。考えるだけで恐ろしくなります。

 

 サッカーには指導者のライセンス制度があります。野球界でも10数年前に「サッカー同様に指導者のレベル向上のためにライセンス制度を作ろう!」と声が上がりました。自分は当事者ではありませんが、発起人の方と仲良くさせてもらっていたので、その考えに賛同し、協力することになっていました。

 

 しかし、ライセンス制度導入を野球界に伝えたところ、各方面から「俺たちは免除だろ」「最初からS級だろ」と言われたらしく、そんな実績重視の考えではライセンス制度を作る意味がないと、計画は頓挫しました。それ以降もライセンス制度に関して声を上げる人も出ず、今日までズルズルときている状況だと聞いています。
 もし、そのままライセンス制度の計画が進んでいたら、結局指導者の資格とは何かではなく、実績がどれくらいあるのかが基本という、大変な制度ができていたことでしょう。

 

 最後にひと言だけ。「指導者は自身の感情をコントロールできなければならない。指導者は人の心を知り、人の心の痛みを知る人間でないとならない。そして指導者は選手達の未来を信じてあげられる人間でないといけない」。ほとんどの指導者の方たちはこう考えていると信じて、今回は締めたいと思います。
 次回はプロの指導者に関して書かせていただきます。

 

1600314taguchi田口竜二(たぐち・りゅうじ)
1967年1月8日、広島県廿日市市出身。
1984年に都城高校(宮崎)のエースとして春夏甲子園出場。春はベスト4、夏はベスト16。ドラフト会議で南海ホークスから1位指名され、1985年に入団し、2005年退団。現在、株式会社白寿生科学研究所人材開拓グループ長としてセカンドキャリア支援を行なっている。

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