松本奉文(広島東洋カープスカウト)第16回「ドラフトの隠れ逸材選手たち」

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 今年のドラフト会議は、5球団が競合した田中正義投手(創価大-福岡ソフトバンク)をはじめ、柳裕也投手(明治大-中日)、佐々木千隼投手(桜美林大-千葉ロッテ)など、即戦力ピッチャーが人気を集めました。そんな中、当コラムは視点を変え、菊池涼介選手などを発掘した広島東洋カープの関東・東海地区担当スカウトの松本奉文さんに、今年のドラフトで指名された選手の中から“隠れた逸材”を数人紹介していただきます。

 

 まず1人目は、埼玉西武に4位で指名された外野手の鈴木将平選手(静岡高)です。50メートル5秒8の俊足が魅力です。彼はどんなピッチャーでも1球目からスタートを切ることができます。昨年のドラフト1位で東北楽天に入団したオコエ瑠偉選手の足と比べると、オコエ選手は三塁までの到達タイムは速いですが、鈴木選手は打ってすぐにトップスピードに乗ることができます。“盗塁を意識した走り方”ができるので、盗塁の数を増やせる選手だと思います。トップバッターでちょこちょこ当てて塁に出たら、必ず盗塁する――。いずれは盗塁王5度の赤星憲広(元阪神)さんのような活躍を見せてくれることでしょう。

 

 2人目は、西武3位のショート・源田壮亮選手(トヨタ自動車)です。彼の守備力は“社会人ナンバーワン”と言われています。今回のドラフトでは、吉川尚輝選手(中京大-巨人)と京田陽太選手(日大-中日)が「大型ショート」と騒がれていましたが、守備力に関しては源田の方が彼らよりも上です。しかし、源田の総合的な評価が低かった理由はバッティングにあります。スカウトの間でも「守備はいいけど、打てないよね」という話がちょくちょく出ていました。

 

 しかし、バッティングさえ克服すれば、レギュラー奪取は間違いないでしょう。もし、1年目からレギュラーを掴めばゴールデングラブ賞を獲れるレベルです。フィールディングの柔らかさ、肩の強さはピカイチですので、ぜひ注目を!

 

 広島・加藤はリリーフ向き!?

 今年のドラフト会議は、例年と比べて難しかった。というのも、チームが優勝したことで選手を指名する順番が大きく変わったからです。広島の今年の補強ポイントは、投手でした。

 

 広島は2度の抽選に外れた末、加藤拓也投手(慶応大)を1位で獲得しました。150キロを投げる即戦力ピッチャーです。1イニングだけなら150キロ台を連発し、ストレートだけでバッターを抑える力を持っています。剛速球に加えて、大魔神・佐々木主浩さん(元横浜)のような落差のあるフォークも持っています。先発、中継ぎ、抑え、どこでも対応できるピッチャーですが、加藤投手のタイプからすると、7回の今村猛の前や、守護神・中崎翔太の前に1イニング限定で投げるリリーフの方が合っているかもしれません。

 

 3位の床田寛樹投手(中部学院大)は、他のチームの評価は、そう高くありませんでした。しかし、今年はサウスポーのいい選手が少なかったため、3位で指名しなければ25番目の次は48番目になります。4位指名の順番が回ってきた頃には、もうサウスポーは残っていないかもしれません。そういう判断で、床田投手を3位で獲りました。

 

 床田投手は野間峻祥の2学年後輩なので、1年の頃から見ています。神宮大会で彼のピッチングを見た時に、肩、ヒジの柔らかさと縦のカーブに惹かれました。肩、ヒジの柔らかさは、元中日の今中慎二さん並み。カーブは、現福岡ソフトバンク工藤公康監督のようにクッと曲がります。実は、最後まで東京ヤクルト4位の中尾輝投手(名古屋経済大)か床田投手かで迷いましたが、肩とヒジの柔らかさと、ズドーンと投げるタイプの中尾投手に対して、床田投手は伸びるようなストレートを投げていたので、床田投手に決めました。

 

 日本ハム・今井は将来のホームラン王!?

 最後にもうひとり紹介したい選手がいます。北海道日本ハム9位の内野手・今井順之助選手(中京高)です。高校通算68本塁打を記録した左の長距離砲。父親は元プロ野球選手、母親はプロゴルファーのサラブレッドです。今井選手のスイングは、社会人にいてもおかしくないほどの速さです。バッティングだけを切り取れば文句なしの選手ですが、身長177センチと小柄で守備走塁に難があったため、評価は低くなりました。

 

 広島は今井選手を5、6位指名で考えていましたが、4位で野手を獲得したため、今井選手の指名は見送ることになりました。プロのコーチに指導を受ければ、4、5年後はホームラン王を獲れる逸材だと思っています。狙っていただけに非常に気になる選手です。

 

松本奉文(まつもと・もとふみ)

1977年5月1日、広島県出身。亜細亜大を経て、00年ドラフト7位で広島に入団。04年にはウエスタン・リーグ打点王を獲得した。05年に自己キャリアハイとなる公式戦30試合に出場したものの、同年オフに自由契約となり、引退。翌年から広島のスカウトとして、出身校の亜細亜大をはじめ、関東・東海地区を担当している。

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