ロンドン五輪の日本代表選手団の本隊が14日、帰国し、都内のホテルで解団式を行った。選手団331名(選手188名)、招待客184名が集まった式ではメダリスト全員に日本オリンピック委員会(JOC)がオリンピック特別賞を授与。村上幸史主将(陸上男子やり投げ)の介添で、吉田沙保里旗手(レスリング女子)から団旗が返還された。旗手を務め、レスリング女子55キロ級で3連覇を達成した吉田は「旗手は金メダルを獲れないというジンクスは耳に入っていて緊張していたが、いつも通りの自分のレスリングを信じて戦えて良かった」とホッとした表情で五輪の戦いを振り返った。
(写真:「また次の目標に向けて頑張る」と4連覇にも意欲を示した吉田)
 金、銀、銅、たくさんのメダルがライトを浴びてまばゆい光を放つ。解団式と、その後の記者会見では、ほぼ全員のメダリストが出席。メダルを首から提げた選手たちが一斉に壇上に並んだ姿は壮観だった。

 今回のロンドン五輪で日本勢はJOCが目標に掲げていた金メダル15個には及ばなかったものの、メダル総数は38と過去最多を更新した。初のメダルとなった卓球、バドミントン、久々のメダルを手にしたボクシング、ウェイトリフティング、バレーボールなど日本が参加した24競技中、半数を超える13競技で表彰台に上がった。

 この好成績を上村春樹選手団団長は「チームジャパンで一体となって取り組んだ結果」と分析。JOCの竹田恆和会長は「本人の努力はもちろん、マルチサポートやNTC(ナショナルトレーニングセンター)など国の協力が得られたこと、国民の皆様の温かい声援に感謝したい」と国をあげての取り組みが実を結んだことを評価した。

 ベストを尽くし、大舞台を戦い抜いた選手たちは一様にリラックスした表情。ボクシング男子ミドル級で金メダルをもたらした村田諒太は「会場にも多くの日本人に足を運んでいただいたことが後押しとなった」と声援に感謝していた。それに対して、同じくボクシングでは日本勢44年ぶりのメダル獲得(銅)となったバンタム級の清水聡は「村田に金メダルを獲られたので、ちょっと心残り」と冗談を飛ばすなど和やかなムードだった。
(写真:激闘を物語る傷の残った顔ながら、晴れやかな様子の村田)

「ボールゲーム、チームスポーツがチームジャパンの先頭を切って、国民の皆さんに勇気と感動を与えた」と橋本聖子副団長が語ったように、会見でも場を盛り上げたのはサッカー女子のなでしこジャパンだ。チームを代表してキャプテンの宮間あやが「正直、金メダルを獲れずに皆さんの期待を裏切ってしまったのではないかと不安もあったが、成田空港に着いた時のたくさんの温かい言葉に自分たちが成し遂げてきたことの大きさを感じた。これからも男子サッカーだけでなく女子サッカーも応援してください」と挨拶すると、チームメイトが一斉に拍手を送る。続いて4度目の出場で悲願のメダルをつかんだ澤穂稀が「最高の仲間と最高の舞台で、最高の相手であるアメリカに、代表の19年間でやってきたことを1試合のなかですべて出せた」と話すと、再びなでしこの選手たちが大きな拍手。ピッチ上でもみせた強い一体感を象徴するような光景に会見場は笑顔に包まれた。

 また個人競技ながら、団結力で戦後最多となる11個(銀3、銅8)のメダルを量産したのが競泳だ。最終種目のメドレーリレーでは男女揃ってのメダルで締め、有終の美を飾った。競泳チームの主将を務めた松田丈志(男子バタフライ)は「素晴らしいチームメイトと戦うことができた。27人の個性が強いメンバーがひとりでは全員で戦う気持ちを共有できた」と充実感を漂わせた。 

 連日連夜のメダルに沸いた一方で、金メダル数では前回の北京(9個)を下回り、目指していた「金の個数で世界5位」は達成できなかった。上村団長は「選手が自分たちのベストを出せば(金15個は)クリアできると思ったが、世界は甘くなかった。世界の強化は進んでいる」と総括。塚原光男総監督はタレントの発掘、NTCのさらなる活用、競技支援体制の強化など「金メダルを獲れる環境づくり」を今後の課題にあげた。

 4年に1度の祭典は終わりを告げた。また4年後、大舞台はやってくる。競泳の背泳ぎ、メドレーリレーで3つのメダル(銀2、銅1)を手にした入江陵介は「目標としていた金メダルに届かなかった。4年後に向けて頑張る」とさらなる飛躍を誓った。2016年、リオデジャネイロでロンドン以上に輝く笑顔とメダルが見られるよう、新たなチャレンジがここからスタートする。

 その他、主なメダリストのコメントは以下の通り。

内村航平(体操・個人総合金メダルなど)
「皆さんの声援を十分に力には変えられなかったが、勇気と感動は届けられたと思う」
(写真:個人総合の金、団体と種目別床の銀と3つのメダルを獲得した内村)

小原日登美(レスリング女子48キロ級金メダル)
「長年の夢だった金メダルを獲ることができた。ひとりの力では獲ることができなかった。応援していただいた皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」

米満達弘(レスリング男子66キロ級金メダル)
「女子レスリングのほうが人気があるので、この金メダルで男子もちょっと人気が出ればうれしい」

三宅宏実(ウェイトリフティング女子48キロ級銀メダル)
「38個のメダルのなかのひとつに加われたことはうれしい。ここまで来られたのはサポートしてくださった皆さんのおかげ。感謝の気持ちを忘れず、これからも頑張る」

福原愛(卓球女子団体銀メダル)
「これからも人間として、選手として日々成長できるように頑張りたい」

古川高晴(アーチェリー男子個人銀メダル)
「今回の成績を機に、皆さんがもっとアーチェリーに興味を持っていただけたら、うれしい」

寺川綾(競泳女子100メートル背泳ぎ銅メダル)
「やっと五輪でメダルを獲ることができてうれしい。今回の選手団の一員になれたことを誇りに思う」

荒木絵里香(バレーボール女子銅メダル)
「メダルに向かって選手、スタッフ一丸となって頑張って、皆の思いがひとつになった結果。すごくうれしい」
(写真:勢ぞろいしたメダリスト73名(欠席者除く))