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(写真:熟練のコンビネーションを見せた高橋<8>と松友<10>)

 3日、第70回全日本総合バドミントン選手権の各種目準決勝が東京・代々木第二体育館で行われた。女子ダブルスはBWF世界ランキング1位の高橋礼華&松友美佐紀組(日本ユニシス)が福島由紀&廣田彩花組(再春館製薬所)をファイナルゲームで破り、決勝に進出した。2年連続5度目の優勝を懸けて米元千春&田中志穂組(北都銀行)と戦う。女子シングルスは三谷美菜津(NTT東日本)に2-0で勝利した山口茜(再春館製薬所)が、昨年の準決勝で敗れた佐藤冴香(ヨネックス)と決勝で対戦することとなった。

 

 男子ダブルスは昨年優勝の園田啓悟&嘉村健士組(トナミ運輸)がストレート勝ち。コンビを組んだばかりの遠藤大由&渡辺勇大組(日本ユニシス)との決勝にコマを進めた。嘉村は米元と組んだ混合ダブルスでも決勝に残っており、米元と共に初の2冠の可能性を残す。男子シングルスは西本拳太(中央大学)が上田拓馬(日本ユニシス)をストレートで下し、初優勝まであと1勝とした。

 

 女王、進化の道程

 

 リオデジャネイロ五輪を制し、世界ランキング1位を保持する“タカマツ”ペアがファイナルゲームの末、連覇への挑戦権を得た。

 

 準決勝で対戦したのは同18位の福島&廣田ペア。第1ゲームから5連続得点でリードを奪う。その後、両ペアがポイントを取り合い、競った展開となった。それでも最後は18-16から3連続得点で21-16。第1ゲームを先取した“タカマツ”ペアだったが、第2ゲームはミスが目立ちリードを許す。終盤に得点を重ねて、追いすがったものの、17-21でゲームを落とした。

 

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(写真:松友<左>が後衛で強打を放つ得意のパターンとは逆の型も見せた)

 ファイナルゲームは一進一退の攻防。16-17まで競った展開となったが、そこから5連続ポイントで試合を締めた。最後までもつれたが、高橋と松友は「苦しい」と思う場面はなかったという。「焦ることなく経験の差が出たのかなと思う」と高橋。松友は「点を取られたのも攻めた中でのミス」とネガティブな感情は沸いてこなかった。

 

 今大会はタイトルに固執せず、試合内容にこだわっている。視線はあくまでも世界。再来週にUAEで行われるBWFスーパーシリーズファイナルズへの“調整”という位置付けに近い。高橋は「スーパーシリーズファイナルズの方が獲りたいタイトル。決勝は勝つことよりもスーパーシリーズファイナルズのためにやりたい」とコメント。松友も「やりたいことをひとつでも多くできたらいい」と続いた。

 

“タカマツ”ペアは目指してきたリオ五輪での金メダルを手にした今も、浸ることなく更なる高みに立とうとしている。飽くなき向上心に彼女たちの強さの源を見た気がした。

 

 2年ぶりVへ、変わらぬ強さ

 

 山口は三谷をストレートで下し、2年ぶりの優勝に王手をかけた。

 

 前日の準々決勝は逆転で何とか勝ち上がった山口。「昨日はスタートが良くなかったので、今日は大事にしようと試合に臨んだ」。第1ゲームから8-0と突き放す。序盤にエンジンを掛け過ぎたのが、中盤以降は「足が止まった」と三谷の追い上げにあった。それでも貯金を生かし、「点差でとれた」と21-17で先取した。

 

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(写真:強打だけではなく繊細なラケットワークで相手を圧倒した山口)

 第2ゲームはコートの隅々にシャトルを散らし、粘り強い三谷を翻弄した。緩急使い分けて、巧みな試合運びを見せた。特にスマッシュの威力は抜群。山口は「ラリーを取りに行く点数もあるが、向かってこられて押されてミスしてしまう。とにかく自分でスピードを上げて、ラリーをつくってイメージでした」とコート上を支配する。21-15で押し切り、2年ぶりの決勝へとコマを進めた。

 

 あまり感情を露わにするタイプではないが、リオデジャネイロ五輪準々決勝で奥原希望(日本ユニシス)に敗れた後には涙を見せた。その後の奥原との対戦は2連勝。スーパーシリーズでも3年ぶりの優勝を果たすなど、着実に進化を遂げている。

 

 悔しい敗戦が彼女の成長の肥やしになったのは間違いないが、再春館製薬所の今井彰宏監督も「皆さんによく聞かれますが、特に変わったことはないんですよ」と口にする。表情をほとんど変えず、淡々と相手コートにシャトルを打ち込む姿も変わらない。ただ、その威力や精度は格段に増している印象を受ける。

 

「優勝とか結果の前に自分のプレーをしたい。観ているお客さんたちが楽しんでもらえるプレーができたらいい」

 彼女の言う自分のプレー、楽しむプレーができれば、自ずと頂点に近付くはずだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)