二宮: 前回の2016年大会の招致活動時から「東京オリンピック・パラリンピック招致委員会」という名称となり、オリンピックとパラリンピックの一体化が進みました。しかし、そのメンバーを見ますと、日本オリンピック委員会(JOC)からは竹田恆和会長をはじめ11名が入っている一方、パラリンピック関係者はというと日本障害者スポーツ協会の伍藤忠春副会長とパラリンピアンの成田真由美さんの2名のみ。もう少しパラリンピック関係者の割合を増やしてもいいのでは?

小倉: 私もそう思います。ただ、日本パラリンピック委員会(JPC)は少人数の職員で運営していますから、なかなか招致活動にも参加して欲しい、とは言えない事情もあるようです。

 

二宮: 選手を派遣することはできないのでしょうか?

小倉: やはり障害者スポーツを競技として扱うことに、まだまだ抵抗がある人もいて、簡単にはいかないことが多いのです。ですから、やはりパラリンピックの部分だけでも文部科学省に移したらどうかなという意見もあります。

 

伊藤: 国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)自体が連携を強化しており、オリンピックとパラリンピックの開催組織委員会は統合されています。こうした世界の動きに、日本の体制もフィットさせていく必要があります。

二宮: 一昨年に「スポーツ基本法」が施行されて以来、スポーツ庁の創設が叫ばれてきましたが、遅々として進まない。小倉さんのおっしゃる通り、先にパラリンピックの部分だけでも文科省に移すことを考えた方がいいかもしれませんね。

小倉: スポーツ庁を創設するとなると、法改正が必要になりますから、簡単にはいきません。ですから、できるところから進めていくべきだと思います。

 

 開催成功のカギはパラリンピック

 

伊藤: 障害者スポーツ関係者の中には、たとえ東京開催が決定しても、パラリンピックはロンドンのようには注目されないのではないかという懸念の声もあがっています。

小倉: 私も同じことを心配しています。このままですと招致には成功しても、東京オリンピック・パラリンピックはうまくいかない可能性があるからです。パラリンピックの存在価値が高まっている今、世界はパラリンピックも含めて成功か否かを判断します。いくらオリンピックで盛り上がっても、パラリンピックが不発に終われば、世界は「2020年大会は失敗に終わった」という見方をするでしょう。だからこそ、今からパラリンピックへの意識を高めていく活動を始めなければいけないのです。

 

二宮: もうひとつ重要なのはオリンピック・パラリンピック後です。本当の目的は招致することではなく、そこから先のスポーツ振興にあるわけですから。

小倉: その通りです。そこをはき違えたらいけません。大会開催はひとつの手段に過ぎない。その後のビジョンを含めた招致活動・大会運営をしなければならないのです。それを踏まえた理念をアピールすることができれば、IOC委員を納得させ、2020年のオリンピック・パラリンピックを東京で開催することができるはずです。

 

(おわり)

 

小倉和夫(おぐら・かずお)プロフィール>

1938年11月15日、東京都生まれ。東京大法学部、ケンブリッジ大経済学部卒業後、62年に外務省に入省。文化交流部長、経済局長、外務審議官などを歴任し、在ベトナム、在韓国、在フランスの各大使を務める。2003年、国際交流基金理事長に就任。11年12月より東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会評議会事務総長を務める。

東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会 http://tokyo2020.jp/


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