二宮: 3回目の出場にして、悲願だった金メダルを獲ったわけですが、帰国後は忙しかったでしょう?

秋山: そうですね。いろいろなところに挨拶に行ったり、取材の機会をいただいたりして、結構忙しい日々を送りました。アテネでも銀メダルを獲りましたが、注目度はやはり全く違うなと感じています。

 

二宮: まだ24歳ですから、十分に4年後のリオデジャネイロも狙えますね。

秋山: いやぁ、リオまで続けるかどうかは、全くの白紙状態ですね。たった1回の金メダルを獲るだけでも、本当に大変だったので......。「連覇」と言われても、正直、想像がつかないんです。

 

二宮: 年齢的にはまだまだ伸びる可能性は十分にあると思いますが......。

秋山: 河合純一さんみたいに37歳で自己ベストを出す選手もいますから、年齢を言い訳にはできませんが、世界では若手がどんどん出てきているので、そう簡単には勝てないかなと思いますね。

 

 認知度アップの必要性

 

二宮: 現在は明治大学大学院に通われていますが、今後はどんな予定ですか?

秋山: この1年は、水泳中心の生活を送ってきましたので、これからは来年3月の卒業に向けて修士論文も書かなければいけないですし、就職活動もしなければいけないと思っています。

 

二宮: 就職は、やはり水泳が続けられる環境のところがベストですよね。

秋山: もし、今後も競技を続けて、リオを目指すのであれば、アスリート雇用のように全面的にバックアップしてくれる企業を見つけないといけないと思っています。

 

二宮: 将来的には指導者への道をと?

秋山: いえいえ、多分無理です(笑)。私って、フォームがメチャクチャなんですよ。自分でも「よくこんなんで金メダルが獲れたなぁ」と思うんですけど......。他の選手と比べても、下手さでは群を抜いているんです。

 

二宮: 自分でそう思っているだけでは?

秋山: いろいろなコーチに「技術は本当にないね」って言われるんです。「世界の中で下手さだったら、トップクラスだ」と......(笑)。

 

二宮: では、秋山さんの武器とは?

秋山: パワーもないので、根性でしょうか......(笑)。いつも「気持ちで勝つしかない」と言われています。

 

二宮: 日本は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を目指しています。

秋山: 今回、ロンドンパラリンピックに出場して思ったのは、日本国内のパラリンピック人気を高めていかないといけないということです。今のままでは、たとえ2020年に東京オリンピック・パラリンピックを開催しても、ロンドンのようにはいかないと思います。オリンピックには観客は入るとは思いますが、パラリンピックには無料でチケットを配ったとしても、どれくらいの人が来てくれるのか......。メディアの露出度を高めることはもちろんですが、私たちパラリンピアンも、もっとパラリンピックの魅力をアピールしていかなければいけないと思っています。

 

(おわり)

 

秋山里奈(あきやま・りな)プロフィール>

1987年11月26日、神奈川県生まれ。先天性の全盲。3歳から水泳を始め、小学5年の時に読んだ本で知った河合純一選手(バルセロナ大会から6大会連続でパラリンピックに出場し、計21個のメダルを獲得している)に憧れてパラリンピックを目指す。高校2年時に初出場したアテネ大会では100メートル背泳ぎで銀メダル。08年北京大会では同種目が廃止されるも、50メートル自由形で8位入賞を果たす。ロンドン大会では100メートル背泳ぎで悲願の金メダルに輝いた。今年7月のジャパンパラでマークした自己ベスト1分18秒59は世界記録となっている。現在は明治大学大学院に通っている。


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