半谷静香&小川直也(パラ柔道)第4回「柔道発展への思い」

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二宮: 小川さんは昨年から筑波大学の大学院に通われているそうですね。

小川: はい。子どもを扱う仕事ですので、きちんとスポーツ学を学んでおこうと思いまして。昨年は多いときには週に5回、茅ヶ崎から筑波まで通っていました。今年は修士論文をまとめるのに必死です。

 

二宮: 学習指導要領改訂により、今年度から中学校の保健体育に武道およびダンスが必修化されました。特に武道は日本の伝統文化を学ぶうえで非常に重要です。ただ、きちんとした指導が行なわれないと、大きな事故につながる危険性もあることが指摘されています。小川さんはどう思われていますか?

小川: 偏った報道が多いために、柔道は危険だというイメージが強くなってしまっていて、非常に残念ですね。実際は週に1度、1時間弱の授業でどこまで教えられるかというと、柔道の歴史や精神的な意味合いなどが中心になると思うんです。ところが、世間では部活動のような柔道をイメージしているために、事故への不安感を募らせている。メディアも事実に沿った報道をしてもらいたいなと思いますね。

 

二宮: なるほど。確かに週に1度の授業で高度な足技や投げ技などは教えられませんからね。

小川: もともと柔道は護身術なのですから、受け身を教えるだけで十分なんです。そして柔道の「精力善用」(自己の力を最大限にいかし、善い行いに努めること)「自他共栄」(互いに信頼し、助け合うことで共に栄えること)の精神を教えることが最も重要です。

 

二宮: 教員がそのことをきちんと理解していればいいのですが……。小川さんのような人が、教員に指導することも必要なのでは?

小川: 実は、全日本柔道連盟などが外部指導員として専門指導者を派遣して教員の指導を行なったり、授業の補助をしたりしているんです。

 

 ロンドンへの課題

 

二宮: ロンドンは半谷さんにとっては初めてのパラリンピックですが、メダルの可能性はどうでしょうか?

小川: 決して簡単ではないと思いますね。5分間の試合の中で、3分くらいまで耐えることができたら、半谷に分があると思います。ただ、健常者の柔道とは違って、視覚障害者柔道では、がっぷりと組んだ状態で試合を始めますから、それだけ力勝負になってくるんです。我々だったら、組み手を切ったりして、相手がバテるのを待って中盤から一気に勝負にいくというような戦略を練ることもできますが、視覚障害者柔道ではそうはいきませんからね。

 

二宮: 離れて間合いを取るということもできませんから、体力的にもきついでしょうね。

小川: そういう部分では、我々がやっている柔道よりも大変ですよ。ただ、逆に言えば、最初から組んでの柔道なので、それほど細かいテクニックは必要ないと思うんです。ですから、半谷にも十分にチャンスはあるのかなと思っています。

 

二宮: 半谷さん自身の目標は何ですか?

半谷: 金メダルを目標にはしていますが、今のままでは難しいと思います。とにかく、少しでもレベルアップできるよう、本番まで精一杯練習したいと思っています。

 

二宮: ロンドンまでに新しい技を習得する予定は?

小川: それよりもまずは倒れない強さが必要かなと。今は自分で技をかけにいっても倒れてしまいますので、倒れずに粘れるようになれば、勝機は見えてくるかなと思っています。

 

(おわり)

 

半谷静香(はんがい・しずか)プロフィール>

1988年7月23日、福島県生まれ。生まれつき弱視の障害がある。中学1年から柔道を始め、大学1年時に初めて出場した全国視覚障害者柔道選手権で優勝。昨年3月の東日本大震災で被災し、行き場を失ったところへ手を差しのべてくれた「小川道場」に入門した。小川直也氏に師事し、稽古に励んでいる。ロンドンパラリンピックでは女子52キロ級代表として、初めてのパラリンピックに挑む。

 

小川直也(おがわ・なおや)プロフィール>

1968年3月31日、東京都生まれ。高校1年から柔道を始め、明治大学1年時には全日本学生柔道選手権で優勝。史上2人目の1年生王者となる。2年時には史上最年少で柔道世界選手権無差別級を制覇。4年時には同大会で95キロ超級、無差別級の2階級制覇を達成した。卒業後、90年にJRA(日本中央競馬会)に入会。92年バルセロナ五輪95キロ超級で銀メダルを獲得した。96年アトランタ五輪では同級5位。翌年にはプロ格闘家に転向した。現在はプロレスラーとして活躍する傍ら、2006年に設立した「小川道場」で指導を行なっている。

小川道場 http://www.ogawadojo.com/

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