ロシアワールドカップを翌年に控える2017年。ハリルジャパンは激戦の最終予選を突破して、6大会連続出場を決めなければならない。

 

 ここまで半分の5試合を終了して6チーム中2位と自力突破できる位置につけているとはいえ、勝ち点1差に4チームがひしめく大混戦となっている(1位・サウジアラビア勝ち点10 得失点差+4 2位・日本10 +3 3位・オーストラリア9 +3 4位・UAE9 +1)。

 

 後半戦に入る今年はホーム2試合、アウェー3試合となり、アウェーはいずれも中東が舞台となる。一戦一戦が勝負であることに変わりないが、中東でしっかり勝ち点を積み上げなければワールドカップ出場権を勝ち取ることはできない。その意味で今年一発目となる3月23日のアウェーUAE戦は重要になる。ホームで負けている相手でもあり、ここで借りをきっちり返しておくことで勢いも出てくる。

 

 しかし中東でのアウェーマッチは簡単にはいかない。酷暑、独特の雰囲気、ピッチの違いなど、日本にとってはマイナス材料がズラリと並ぶ。

 

 忘れられないのが4年前、アンマンで行なわれたヨルダン戦である。勝利すればワールドカップ出場が決まる試合。地面が波打つようなデコボコのピッチや、相手の威圧的な応援にも負けず日本は数多くのチャンスをつくった。だがセットプレーとカウンターで2点を奪われ、敗れてしまった。

 

 キング・アブドゥラスタジアムの記者会見場ではアルベルト・ザッケローニ監督が厳しい表情を崩すことはなかった。彼は言った。

「日本が10回のチャンスをつくり、相手は3回のチャンスをつくる。そんな試合展開ならウチが勝たなければならないゲームだった。きょうのようにアウェーのチームが10回もチャンスをつくるのは稀だ。突くポイントをしっかりと持ってサイド、中央と(良くない)ピッチコンディションのなかでも、チームはいいコンビネーションを発揮してくれた。ただ自分たちのチャンスで決められなかったということだ」

 

 1点で終わるような試合でもなく、2点を奪われてしまう試合でもなかった。それなのに、ゲームを落としてしまった。ここからどんな教訓を得たのか。ヒリヒリとした現地の雰囲気のなかで、筆者が感じたのは執念の差だった。

 

 UAE戦は試合内容よりも、まずは結果が求められる。

 

 いくら10回のチャンスをつくろうが、相手に3回のチャンスしか与えまいが、勝てなければ意味がない。前回のヨルダン戦は独走状態だったため命取りになる敗北ではなかったが、今回は違う。もし星を落としてしまえば致命傷になりかねない。

 

 メンバーの人選において、勝ちグセのついている選手たちを呼ぶことも考えていいのではないだろうか。

 

 つまりは鹿島アントラーズの面々。チャンピオンシップを制し、クラブワールドカップであのレアル・マドリードを苦しめ、そして先日の天皇杯も制した彼らには、勝負強さ、時間の使い方のうまさがある。そして何より、勝利に対する執念がある。

 

 前線で体を張り続け、大事な場面でゴールを奪える金崎夢生。ボール奪取能力に長けた永木亮太。1対1に強く、守備で抜群の安定感を見せた昌子源。そしてレアルから2得点を奪った柴崎岳。特にこの4人は短期間でグンと経験値を伸ばし、さらにひと皮むけたようにも思う。

 

 バッチバチのファイトを厭わない鹿島のスタイルは間違いなくハリル好みだと言える。11月のサウジアラビア戦では永木しか呼ばれていないが、もっと数を増やしてくるに違いない。

 

 ハリルホジッチ監督にしてみれば、うれしい悩み。常勝鹿島の象徴である小笠原満男を呼ぶという手もあると思うが、いかがだろうか。


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