メジャーリーグのプレーオフ・ディビジョンシリーズは11日、アメリカンリーグでニューヨーク・ヤンキースがボルチモア・オリオールズに延長12回でサヨナラ勝ちし、2勝1敗でリーグチャンピオンシップ進出にあと1勝とした。ヤンキース先発の黒田博樹は2本のソロホームランを浴びたものの、9回1死まで投げて2失点の好投。それに応えるように1点ビハインドの9回裏、代打ラウル・イバネスが同点ソロを放つ。さらに延長12回、再びイバネスが2打席連続のサヨナラアーチ。劇的な幕切れでヤンキースが熱戦を制した。イチローは5打数0安打だった。
◇ア・リーグ
 J.ジョンソン、第1戦に続く痛恨被弾(ヤンキース2勝1敗、ヤンキー・スタジアム)
ボルチモア・オリオールズ   2 = 001010000 000
ニューヨーク・ヤンキース   3 = 001000001 001× (延長12回)
勝利投手 ロバートソン(1勝)
敗戦投手 マティス(1敗)
本塁打  (オ)フラハーティ1号ソロ、マチャド1号ソロ
       (ヤ)イバネス1号ソロ、2号ソロ

 リーグ優勝を決める一戦同様、シリーズの流れを左右する大一番を託されたのは背番号18の黒田だった。1勝1敗で迎えた第3戦。マウンドに上がった黒田はベンチやファンの期待を裏切らなかった。初回、2回と3人ずつで相手の攻撃を終わらせる立ち上がり。しかし3回、8番のライアン・フラハーティに甘く入ったスライダーをライトスタンドに運ばれ、先制を許す。

 直後に打線が追いついたものの、4回は四球とヒットで無死一、二塁のピンチ。だが、落ち着いて後続を打ち取ると、最後は2死満塁から前の打席で一発を浴びているフラハーティをピッチャーゴロに仕留め、勝ち越しを許さない。

 ところが、5回、9番のマニー・マチャドに、またもスライダーをレフトスタンドへ叩きこまれて2点目を失う。とはいえ、この日の黒田で失投と言えるのは、ホームランを打たれた2球のみだった。2発を打たれて、さらに集中度が増したのか6回以降は完璧な投球。1人の走者も出さない。ちょうど球数が100球に達した9回も志願してマウンドに上がり、先頭打者をファーストフライでアウトにする。ここで御役御免となったが、その力投にはスタンドから大きな拍手が送られた。

 一方、ヤンキース打線は8回までオリオールズ先発のミゲル・ゴンザレスらに5安打1得点に抑え込まれ、9回はクローザーのジム・ジョンソンが登板。オリオールズは今季、7回を終えてリードした場合は74勝無敗とリリーフ陣が安定しており、さすがのヤンキースも苦しいかと思われた。

 だが、指揮官の思い切った采配がドラマを生む。1死後、ジョー・ジラルディ監督は主砲のアレックス・ロドリゲスに代打を告げ、イバネスを送りこむ。激しい地区優勝争いを繰り広げていた3日のレッドソックス戦でも、9回に代打同点弾を放っているベテランは2球目をフルスイング。打球はヤンキースファンで埋まったライトスタンドに飛び込んだ。起死回生の同点ホームランで試合を振り出しに戻す。

 そして試合に決着をつけたのも、同じ左バッターだ。延長12回、イバネスが高めに浮いた初球の変化球を振り切ると、放物線はライトスタンドの2階席に届いた。文字通り一振りでチームを絶体絶命の窮地から救い、勝利を呼び込んだ。歓喜に沸く一塁側ベンチとは対象的に、オリオールズは今季初のサヨナラ負け。初めて8回以降のリードを守り切れず、“神話”が崩れた。


 ア・リーグのもう1カードはオークランド・アスレチックスがデトロイト・タイガースを4−3の逆転サヨナラで勝利し、対戦成績を2勝2敗のタイに持ち込んだ。8回までタイガースに1−3と2点のビハインドを背負ったアスレチックスだが、最終回に相手守護神のホセ・バルベルデを攻略。3連打で一気に同点に追いつくと、なおも2死2塁からココ・クリスプがライト前に運び、サヨナラのランナーを迎え入れた。アスレチックスがホームに戻って連勝で逆王手をかけたシリーズは12日に最終第5戦を迎える。

 S.スミス、貴重な同点打(アスレチックス2勝2敗、オードットコ・コロシアム)
デトロイト・タイガース     3 = 001100010
オークランド・アスレチックス 4 = 000001003×
勝利投手 クック(1勝0敗)
敗戦投手 バルベルデ(0勝1敗1S)
本塁打  (タ)フィルダー1号ソロ 
 
 ナショナルリーグではセントルイス・カージナルスがワシントン・ナショナルズに8−0で快勝し、2勝1敗でシリーズ突破に王手をかけた。カージナルスは初回にアレン・クレイグのタイムリーで先制すると、2回にはピート・コズマの3ランでリードを広げる。6回以降も小刻みに得点して試合を決めた。投げてはシーズン終盤に右腕の手術から復帰したクリス・カーペンターが6回途中まで無失点。ゲームをつくり、継投で完封リレーを完成させた。

◇ナ・リーグ
 ホリデー、ダメ押し打含む猛打賞(カージナルス2勝1敗、ナショナルズ・パーク)
セントルイス・カージナルス 8 = 130001120
ワシントン・ナショナルズ   0 = 000000000
勝利投手 C.カーペンター(1勝)
敗戦投手 E.ジャクソン(1敗)
本塁打  (カ)コズマ1号3ラン

 ナ・リーグのもう1カードはサンフランシスコ・ジャイアンツがシンシナティ・レッズに敵地で連勝し、対戦成績を2勝2敗と五分に戻した。初回に1点ずつを取り合った2回、ジャイアンツはグレゴー・ブランコの2ランで勝ち越し。5回にも2点を追加して試合を優位に進めた。また3回途中で先発のバリー・ジトを見切ると、4回の2死一、二塁のピンチではサイ・ヤング賞右腕のティム・リンスカムを投入。これで窮地を脱すると、そのままリンスカムが8回まで投げ、相手に主導権を渡さなかった。連勝、連敗で迎える最終第5戦は12日に引き続きレッズのホームで行われる。

 サンドバル、3安打3打点(ジャイアンツ2勝2敗、グレートアメリカン・ボールパーク)
サンフランシスコ・ジャイアンツ 8 = 120020300
シンシナティ・レッズ        3 = 101001000
勝利投手 リンスカム(1勝)
敗戦投手 リーク(1敗)
本塁打  (ジ)パガン1号ソロ、ブランコ1号2ラン、サンドバル1号2ラン
       (レ)ルドウィック2号ソロ