15日、プロ野球セ・リーグのクライマックスシリーズファーストステージ第3戦が行われ、中日と東京ヤクルトが対戦した。ヤクルトが2回に相川亮二のタイムリーで先制に成功。その後は両チーム継投で、最少点差のまま終盤へと進む。チャンスを作るも得点が生まれなかった中日だが、8回にトニ・ブランコの満塁本塁打で引っくり返す。中日はそのまま逃げ切り、巨人が待ち受けるファイナルステージ進出を決めた。

◇ファーストステージ
 ブランコ、シリーズ初ヒットが逆転弾(中日2勝1敗、ナゴヤドーム)
東京ヤクルト   1 = 010000000
中日         4 = 00000004×
勝利投手 浅尾(1勝0敗)
敗戦投手 山本哲(0勝1敗)
本塁打  (中)ブランコ1号満塁
「まさに起死回生。8回の時点では敗戦の弁を考えていました」。そう高木守道監督が語るほど、劇的な逆転勝利で中日がCSのファイナルステージ進出を果たした。

 どちらも負けられない一戦、中日は47歳・山本昌、ヤクルトは24歳・村中恭平に先発のマウンドを託した。23歳差の左腕対決は 互いに硬さが見られる立ち上がりとなった。山本は先頭のラスティングス・ミレッジにストレートの四球で塁に出す。続く田中浩康に送られて、早々に得点圏にランナーを背負う展開。3番の畠山和洋をレフトフライに抑えたものの、ウラディミール・バレンティンも四球。2死一、二塁で川端慎吾を迎える。ここはライトフライに切ってとり、苦しみながらも初回をゼロに抑えた。

 一方の村中は、今シリーズ絶好調の大島洋平に三遊間を抜かれるヒットを許す。2番の荒木雅博は送りバント。村中はゴロを処理し、一塁へ転送。しかし、送球が逸れ、大島は三塁へ。自らのミスで無死一、三塁の危機を招いてしまう。村中はここから踏ん張る。井端弘和を浅いライトフライに打ち取って、まず1アウトをとる。さらには、この日4番に入った和田一浩を力のある真っすぐで注文通りの4−6−3のゲッツーに仕留めた。

 窮地を脱した若手左腕を救ったのは、41歳の宮本慎也だ。2回、センター前ヒットで出塁すると、続く福地寿樹のショートゴロの際にはスタートを切って二塁へ進塁。プロ入り18年目のベテランの真骨頂はここからだ。迎えた相川の打席、初球に意表を突く三盗を敢行。ノーマークの中日バッテリーをあざ笑うかのような狡猾なプレーを見せた。1死三塁となり、気が楽になった相川は山本の外角低めのスクリューをライト前へ運んだ。宮本の足と頭脳が生んだヤクルト待望の先制点だった。

 最少点ではあるが、大きな援護をもらった村中は2回以降、ランナーを許しながらもゼロに抑える奮投。2回、4回と得点圏の走者を背負いながらもなんとか凌ぐが、6回、1死一、二塁となったところで、小川淳司監督は村中を諦め押本健彦にスイッチ。一発のあるブランコにぶつける。押本は3−1から高めの直球をブランコに弾き返される。三塁線を襲った打球を、サード宮本が飛びつく。抜ければ同点の当たりはゴールデングラブ賞を9度獲得した名手のグラブの中に収まった。押本は続く平田をショートフライに切ってとり、追撃を許さなかった。その後も、ヤクルトは継投策で逃げ切りを図る。

 しかし、眠っていた恐竜打線の主砲が土壇場で目を覚ました。中日は8回、1死一、二塁のチャンスを迎える。ここでヤクルトは守護神トニー・バーネットを投入。連日の8回からの登板のせいか、バーネットは制球が定まらず和田に四球を与える。1死満塁、この絶好機にここまでシリーズノーヒットと打線のブレーキとなっていたブランコがバッターボックスに入る。バーネットは3つ立て続けにボールと、コントロールが安定しない。1ストライク後、ブランコは5球目、真ん中に入ってきたストレートを逃さなかった。ブランコはバットを振り抜いた直後、右手を突き上げて、ホームランを確信。「人生で一番素晴らしかった」と自賛した打球は、ライナーでレフトスタンドに突き刺さった。得点力不足に泣いていた打線のうっ憤を晴らすような強烈なグランドスラムは試合を決定づける一撃だった。中日は8回から登板の浅尾拓也が9回も3人で締め、4−1でヤクルトを振り切った。

 敗れたヤクルトは投手陣が踏ん張りながらも、打線がそれを救えなかった。この3試合、打線を組み替えながら試行錯誤を繰り返したが、奪った得点は1点ずつ。主砲のバレンティンは2本塁打と気を吐いたが、その前後を打つバッターが振るわなかった。CS版メークミルミルは叶わず。これまでCSに出場しながら、常に立ち塞がってきた中日の軍門に、今回も下ることとなった。