1に人気、2にレベル、3に経済力――。長年考え続けてきて、ようやく答えが定まってきた。プロ・チームのギャランティーを決定づける条件である。

 

 何年か前、FC琉球が月給30万円で契約していたマレーシア人選手が、年俸3000万円で母国のクラブチームに引き抜かれてしまったことがある。日本では単なる無名のマレーシア人選手でも、国に帰ればスーパースター。彼にだったらそれだけの額を払う価値があると考えた人間がマレーシアにはいて、日本にはいなかった。いわば、人気によってその選手のギャラは変動したのである。

 

 以前のわたしは、プロ選手、プロ球団の収入と報酬を決定づける最重要項目はレベルだと考えていたが、だとすると、マレーシアの例は説明がつかなくなってしまう。代表チームはW杯とはほど遠いレベルにあるにもかかわらず、目の玉が飛び出るようなギャラが用意されている中国のサッカー・チームについてもまたしかり。だが、人気を基準にして考えると、とりあえず納得はいく。

 

 ただ、ゆえに複雑な気分になることもある。

 

 なぜ、日本のスポーツのギャランティーはこんなにも低レベルなのか。

 

 今回、日本を倒したWBCの米国代表は、必ずしもスーパースター軍団ではなかったようだが、それでも、年俸が2ケタ億円の選手がゴロゴロしていた。

 

 日本のプロ野球は、人気がないだろうか。

 

 日本のプロ野球は、レベルが低いだろうか。

 

 日本という国の経済力は、米国とは問題にならないぐらい低いのだろうか。

 

 すべてにおいてイエスというのであれば、仕方ない。ラオスのプロサッカー選手が大したギャラをえられないのに理由があるように、南米のスター選手がことごとく欧州のクラブに引き抜かれるのに原因があるように、日本の選手の人気やレベル、国自体の経済力に問題があるというのであれば。

 

 確か、日本はいまだ世界3位の経済大国だった。一時は世界1位をも視野に入れたことがある2位だった。

 

 だが、わたしの知る限り、日本でプレーするスポーツ選手がその報酬で世界のトップクラスになったことは、経済界の成功例ほどには多くない。いや、白状してしまえば、わたしが知っているケースはほとんどない。

 

 日本のプロ野球には人気がある。WBCでの優勝は逃したとはいえ、そのレベルの高さはいよいよ世界の知るところになったと言っていい。なのになぜ、メジャーリーガーとの間には目もくらむほどの収入格差が存在しているのか。

 

 その格差を埋めようとする努力はなされているのか。

 

 されていてほしいし、埋まっていってほしい。というのも、高収入は時にレベルを逆転させることがある。かつて、ペレに白紙小切手を用意したスペインは、人気を背景にした資金力で、世界屈指の強豪国となったからである。そのためにも、プロ野球が変わらなければ、サッカーをはじめとする他のスポーツも変われないだろう。

 

<この原稿は17年3月23日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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